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コーヒーの香りが辺りに広がって、白い湯気も空気に広がって溶けていく。冷蔵庫から白い四角い箱を取り出す。中身は色とりどりの宝石のようなフルーツがてんこ盛りにされたタルト。
「私、いちごねー。」
「あーもう、はいはい。」
春花のリクエストを聞きながら冷蔵庫を閉める。隣りから美雪のくすくす笑いが聞こえる。
「いいね、本当に。」
「何が?」
なんとなく分かったけれど、聞き返してみる。美雪はふふっと笑った。私もふふっと笑う。
「ただいま。」
玄関から寒い空気ごと彼が帰ってくる。
「おかえり。」
「「おじゃましてます。」」
「いやいや、むしろこっちがお邪魔ですみません。」
そう言いながら、彼は私に白くて四角い箱を差し出す。中身は、ぱりぱりの皮にとろとろカスタードクリームのシュークリーム。
「ありがと。」
私と美雪が取り出し中のフルーツタルトを見て「しまった」という顔をする彼にこたつから出て私の入れたコーヒーを運ぼうとしていた春花が言う。
「浩樹くんグッジョブ!」
「春花、二ついくってこと?」
甘すぎるのが得意ではない美雪が困った顔をする。遠慮を覚えろということかもしれないが。
「もち。食べよーよ!」
「え、食べれんの?葉月も??」
困惑する彼に困り顔の美雪、何がダメなのって平然とした顔の春花。私はくつくつ笑う。笑う。
「もちろん。大丈夫、浩樹と美雪の分は私達がぺろっと食べちゃうから。」
「え、それはちょっと惜しい気がする。」
美雪の発言に彼は目を剥く。
「ああ女の人ってわからない。」
そしてとぼとぼと奥の部屋に行ってしまう。恐らく家用のジャージを着るのだろう。その背中を三人で見てけらけら笑った。
私達はいっぱい笑った。私は未だにこの年末の彼の動向は知らないし、春花と彼は何でもない顔をしているのがどうしてなのかも分までのことは消しようがない。それでも一緒にケーキやシュークリームを食べて笑っている。
怖い怖い「恋」はよくわからないまま続いている。それでもいいかと今は思える。結婚の約束もおそらく婚姻届もゴールではないし、きっとずっと続いていくのだと私は思う。
何度だって恋をし続ける、大好きな人に。少しずつ変わっていく彼を受け入れて、私も少しずつ変わっていく。変わらないものも変わるものも全部受け入れて、抱きしめて私は私なりの人生を歩く。
「恋」はもう怖くない。
溺れることも振り回されることも恐れることはない。私が私でいること、私を見つけること。恋はその中のたった一つに過ぎない。
それならば、楽しもうではないか。「恋」を私だけの私の人生を。




