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基本のお料理、お菓子編というような本を開いている。週末。混ぜて混ぜて焼いてしまうだけの簡単なチーズケーキを焼いてみようかと思う。

私はネット上に溢れるレシピはちょっと苦手だ。本を見ながらチャレンジする方が好きだし、なんとなく楽しい。いちいちタブレットの画面を見たり動かしたりといった手間ともいえないような手間が苦手だからだ。それに一般の人がネットにあげているものに比べてプロが出版しているものなので確実性も高い。そのため、自分でひょひょいと作る食事以外のお菓子などについては本を見ながら作る。

「ふふふーふふふーん。」

今年空前の大ヒットを飛ばした某アニメ映画の主題歌を鼻歌でてきとうに歌いながら計量をして、オーブンの予熱を設定して、ハンドミキサーでクリームチーズをまるで液体であるかのようになるまで混ぜて、混ぜる。


ピーピーピー


 オーブンからのお呼び出しだ。もう予熱が済んだらしい。粉々に砕いたビスケットを型の底に敷き詰めて空焼きする。その間に砂糖や卵、薄力粉をほんのちょっと、牛乳大さじ一を加えてさらにとろとろに混ぜる混ぜる。フィリングが完成する。


 数分、空焼きしたところにフィリングを入れてオーブンで四〇分ほど焼く。ボウルの側面にわずかに残ったフィリングを舐めると甘くて濃厚なチーズケーキの味がする。

「美味し。」

思わず笑みがこぼれる。部屋の中はチーズケーキの匂いに包まれてもっとご機嫌になる。幸せ。私の人生は本当に薔薇色だわ、と思うくらい。


 チーズケーキが焼けるのを待つ間、洗い物をさくさくっと済ませてしまう。今度は何を作ろうか、どうしようか。チーズケーキは紅茶と一緒に食べようかと考えながら。


ピンポーン


 玄関のチャイムが鳴る。洗い物が丁度終わったので手を拭きながら応じる。

「はい。」

インターフォンの先の誰かへ硬質な声で。

「葉月、私。」

「え・・・。ちょっと待ってて。」



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