第七十九話
私が運転する車は、とても静かだった。
思えば乗り込んだ頃から、始めから。
気が重いのだ。
私もアラバも…。
何とか言葉を探そうとして、言えた言葉がコレだった。
「ふっ、セルフィも来るとは思わなかったな…」
「正味、30分も車を運転してて、何を今さら言ってんのよ?」
結局、これが車の中での最後の会話になった。
私達が辿り着いた場所は墓地だった。
ミクモが眠る場所…。
「行くわよ」
セルフィの指示にアラバが頷くように、どこに彼の墓があるのかはわからなかった。
当然、ロウファがここにいるかどうかも。
だが不思議と確信だけはあった。
しばらく、三人で手分けをして探す事となり。
「いたの?」
そして、セルフィが私にそう聞いてくる頃に、アラバが先に見つけていた。
セルフィもそこに向かおうとしたが、私はそれを止めていたのは。
「実感、沸かないモノでしょう」
その彼の第一声は、あまりにも重みがあったからだ。
「私も両親を失って、墓を見る機会があるのですが。
どうも、ここに眠っているとは、思えないでしょう」
「……」
ロウファは黙ってアラバの言葉に頷く、さっきからロウファは立ち尽くしていたのだろう。
休校とは言え、外出は禁止だった。
そのため葬儀は身内で済まされ、学園内にいる私達は、その時、集められ校内放送での黙祷を執り行って終わらせていた。
ロウファはそれが終わった途端、体調不良を理由に自分の部屋に閉じ篭もるのを私は記憶していた。
そんなロウファが、アラバに言ってきた。
「連れ戻しに来たのですか?」
「まあ、探しているのは確かでしょうが…」
その時、彼はロウファにバレないように隠れていた私達をじっと見ていたが、私が出てくる気など無いのが解ったのか。
「私は治安部じゃ、ありませんのでね。
ただ外の空気が吸いたかったので、治安部のみなさんと貴方を探すのは二の次ですよ」
「サボって来るような場所じゃないですよ?」
冷たく言い放つロウファは、私と話す時より明らかに態度が違っていた。
それを知らなかったワケじゃなかったが、
「報告くらいしに来ても悪くは無いでしょう」
彼の冗談交じりの不機嫌な態度を見る限り、これが二人の距離感なのだろう。
「そうですね」
年上であるアラバは、気を悪くする事はなく。
いつもどおりの雰囲気に戻るのはこの男の凄さでもある。
おかげでロウファの方が一礼して、しばらくミクモの墓を眺めているアラバに聞いて来た。
「ペインは終身刑なんですね?」
「そこまで知っていたのですか…。
事件が終わって治安部の機密も緩くなったのでしょうか、
まったく、全てが終わると言うのはあっけないモノですね」
まったく、この男も『繰り返すな』と言いたくもなる。
「ボクは結局、何も出来ませんでした…」
「貴方は初等部の戦えない人達を守った、それで明日、表彰されると聞いてますよ?」
当の本人がそう言うが、ロウファは俯いていた。
「ボクは戦闘じゃ、あの魔法使いと戦って、何の役にも立ってなくて…。
それにボクは、お母さんは鉄槌を下せと言ったのに、ペインに手を上げれなくて…」
「貴方のお母さんが命令した事は、殺せと言っていたモノじゃないですか、貴方、ソレでよかったのですよ」
「でも、その後も、お母さんは変わる事はなかった」
そしてロウファは苦しそうに、こうも吐き捨てた。
「こんなボクが表彰されるなんて嫌です」
しばらくの沈黙が、私と一緒に隠れていたセルフィの呟きがよく聞こえていた。
「何をしていいのか解らないで出撃して、いざ、戦闘で役立つかと思えば、そうではなかったもの…
。
ふん、考えてみれば屈辱よね」
「ならば、お前なら、何と言ってやれる?」
妹にそう言うと、少し考えて出た言葉は治安部の答えだと言えた。
「『がんばれ』なんて、何も言えないのと一緒じゃない。
姉さんこそ、こういう時に出番じゃないの?」
そして、妹も無茶を言ってくれる。
「私は、お前が出ると思っているのだがな?」
とりあえず出て見ろと押し込んでみると、
「ふん、お断りね。
そもそもここは、私の管轄外じゃないの。
ねえ、リーダー?」
妹も負けじと、押しやろうとしていた。
「ああー、ですが、静かにしてませんと治安部が来ちゃいますかもしれませんね!!」
そして、アラバに怒られてしまう。
突然、声を強めたアラバに、ロウファは驚いていたが、アラバはため息を付きながら答えた。
「屈辱だと思っているのなら、その表彰は受けるべきですよ」




