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第七十八話

 「そんな事より、ロウファがいなくなったのよ」


 「なんだと…?」


 妹の言う事にレフィーユは顔を顰める。


 だが、態度は変わる事はなかった。


 「ふっ、情報が漏れたな。


 内部の機密漏洩を引き起こすとは、事の終わりというのは、ホントにあっけないものだな…」


 「前と同じ事を言わないでくださいよ」


 自分もそうは言うが『情報が漏れた』と言うので、


 「ですが、居ても立ってもいられませんでしたか…」


 自分が、そう言った途端だった。


 「何、のん気な事を言っているザマスか!!」


 この怒声に吹き飛ばされた。


 「な、何ですか突然?」


 ミチコは鼻息荒いまま、自分を無視してレフィーユに怒鳴る。


 「アンタ、今度はロウファちゃんをどこにやったザマスか!?


 これ以上、私達をかき回さないで頂戴!!」


 鉄格子越しだったのが、幸いだった。


 ミチコは動物のように鉄格子を揺らし、気分はサファリパークである。


 だが、レフィーユは臆する事は無い。


 「ふっ、すまんが、このトコロ、ここに閉じ込められていてな。


 ロウファがどこかに行ったなど、今知ったばかりなんだ。


 何か心あたりは無いのか?」

 

 「あるわけないでしょう!!


 アンタ、治安部なんだから、何とかするザマス!!」


 「だがな。


 これは勝手な事をした罰でもある。


 そういう事は代理に向かって言うのだな?」


 ミチコはぶるぶると震え、みるみると顔が赤くなり『代理!?』とセルフィに首を曲げる。


 勢いに押されたのかセルフィは、慌てて首を振るだけ。


 それを見たミチコは苛立ちが頂点に達したのだろうか、踵を返そうとした時、レフィーユが呼び止めた。


 「もう一度、聞くようで悪いが、ホントに心当たりは無いのか?」


 ついセルフィと自分の目が合い、ミチコを見ていた。


 それだけロウファの居場所など、簡単に想像出来る事だった。


 自分も知っていた。


 この、あと一人はどうしても気付いて欲しかった。


 「何を言ってるザマスか、アンタが知らない事なんて、私が知りようもないじゃない!!」


 だが一瞬、キョトンとしたので、ホントに知らない事だけが態度でわかった。


 「何よ、あれ?


 全然変わってないじゃない…」


 ミチコが去った後に、セルフィは苛立ちを隠せなくなっていた。


 「こんなのロウファがかわいそうよ…」


 自分もさすがにコレには、目を瞑ってため息を付く。


 「現実は厳しいな…」


 レフィーユも落胆が隠せない。


 「アイツが変わったトコロで、親がそれを認めなければずっと…子供か…」


 大人の思考はそう簡単に、変わる事はないのは知っていた。


 その証拠に自分の悪評も変わってないのだから。


 「ふっ、それにしても大人と言うのは、どうも治安部の活動と言うのを間違えたがる」


 だが、レフィーユは立ち上がる。


 「しかたないと思いますよ」


 ただ自分も背伸びしながら立ち上がるので、何をしようとしているのかが、妹にもわかったのだろうか。


 「…言っておくけど、これは姉さん達の罰なのよ?


 アンタ達は、なんでここに閉じ込められたのかわかっているでしょう。


 ここで私が見逃したら、他にも示しがつかないと思うけど?」


 呆れながら、そう断っていた。


 「ふっ、お前は私達二人(治安部と犯罪者)に対して、良くそんな毅然とした態度とれるものだな?」


 「いくら年上でも、やって良い事と悪い事は、はっきりしておくべきとは思わない?」


 少し違う勘違いしているのは、自分にしかわからないが、


 「この人が同席してる時点で、示しも何もないでしょう?」 


 そう言って、茶化すと。


 「私だって、そうしたわよ」


 姉を睨む妹だが、その姉はどこ吹く風か、


 「このままだったら、破壊するしかないか…」


 サーベルを作り出して、バットを振るように素振りし始める。


 「おっと、これはいけませんね。


 暴君が(きょ)に及びますよ…」


 『誰が暴君だ』と彼女は言うが、自分でもその暴挙を止める気など起きはしなかった。


 セルフィも姉の性格をよく知っていた。


 「ふん、とにかくそんな事をしたら騒ぎになるから、アンタも姉さんをよく見ておきなさいよ」


 そう言ってのまま立ち去って行く時、彼女は鍵を落としていった。


 明らかにワザとだった。


 「それでも納得出来ない、セルフィさんですか?」


 その鍵をサーベルで引っ掛けて、レフィーユは言った。


 「ふっ、大人は見習うべきだな」


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