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第七十二話

 ほぼ不意打ちに近いタイミングだったイワト達の攻勢に対し、その魔法使いの放つ闇は二階にいたペインにも見えたので、頭を掻きながら答えた。


 「アイツ、逃げ切れなかったのか?


 追っかけて捕まえた方がよかったんじゃないのか?」


 「ぐっ!!」


 ペインは彼女の目を覚まさせるように机を蹴飛ばし、ぐったりとしたレフィーユを気付かせる。


 「忠告どおりに仲間を呼んどけば、こんな事にもならなかっただろうに…。


 確かに確実に命を奪う相手に一人で立ち向かい、犠牲を最小限に抑えるアンタの考えは立派だ。


 まあ、そんだけ周囲はアンタを英雄視するのは当たり前の構図だな。


 アンタの治安部としてのあり方は立派だろうよ。


 だが、そんな考えがロウファみたいなガキを生み出し、オレのような、犯罪者を生み出した構図でもある」


 もともとレフィーユには意識はあったのだろう。


 「くっ…」


 しかし身体に力が入らなかったらしく、ようやく手に力を込められるようになって机をどかせてたが、机に身体を預けるような体勢でいるとペインが攻撃を仕掛けてきた。


 「柔軟性に優れた能力、それ故に何も知らない親は自分の子供は、選ばれた人間だと勘違いして英才教育を施し、指名手配犯を作る!!」


 サーベルで多節鞭を受け止めたので、身体が痛みが走ると勘違いしたのだろうか…。


 「!?」 


 彼女の意思とは関係なく身体が硬直する。


 しかし、激痛は走らない。


 ペインは単純に攻撃を仕掛けただけだった。


 だが、完全に反応が遅れているのでペインの攻撃を許してしまう。


 それも三回ほど、自身も能力ミラーを駆使して避けるが、その中の一つの攻撃を受け止めた時に彼女は確信した。


 「今に至っては、誰しもが能力次第でレフィーユ(アンタ)になれる勘違いが起きている。


 あのガキのようにな…」


 自分の身体が硬直するのをわかっていて、攻撃を繰り出しているのだとペインが笑っていたのだから。


 しかし、『激痛が走るかもしれない』という考えは、意思とは無関係につばぜり合いをペインの優位な方向にも持っていかれてしまう。

 

 「…ロウファも、お前と同じ運命を辿るというのか?」


 「期待、希望、英才教育、落胆、絶望。


 英才教育の次に栄光を掴むのは一握り。


 多くは自分より上の実力者を見つけ、落胆。これ以上の進歩も望めず、絶望を味わう。


 俺たちの生まれる前からあったサイクル!!」


 そしてペインの経験上、彼女の身体から痛みが退いたのがわかったのだろう。


 「まさかお前はそんなサイクルから、あんなガキを助けられると夢でも見てんじゃないだろうな?」


 ペインの攻撃をかわし、最小限の動きで反撃を繰り出すが、タイミングを見計らわれ簡単にガードされてしまった。


 「ぐああ!!」


 その動作にペインの『痛み』を上乗せして。


 「レフィーユ、オレを見てみろ」


 レフィーユの全身に激痛が襲っている中、ペインを見る事しか出来なくなっていた。


 「誰も守ってくれなかった…。


 恩師、親友、家族、母さんですら…。


 オレが自分の能力に気付けば気付くほど、人が遠退いて行く。


 オレは闇の中に入って行くしかないだろう。


 でも、そこにもオレの居場所なんて無かった!!」


 「ぐあ!!」


 八つ当たりのようにペインに蹴飛ばされてしまい。


 「あのガキもきっとこうなるぜ?」


 ペインの足元にサーベルが転がり、蹲っているレフィーユに笑みが浮かぶ。


 「……」


 彼女は起き上がって来ない。


 「んっ?」


 だが、ペインには『痛み』を扱っている分、違和感があった。


 「期待、希望、英才教育、落胆、絶望か。


 …随分と語るモノだな。


 道を外れたくらいで、全員が犯罪者になると言いたいのか?」


 「そうだな、レフィーユ、アンタは『栄光』を掴んだ人間だからな。わかんねえか?」


 「ふっ、あいにく私は、お前と同じだ」


 「意味がわかんねえよ?」


 ゆっくりとレフィーユは近づいてくるので、ペインは身構えた。


 しかし、サーベルを拾い上げただけだった。


 そして、そのまま距離を取った。


 一連の動作が静寂を生んだ。


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