第七話
「おう、アラバか」
放課後、一人残った教室で携帯を掛けようとすると、教室に入ってきたレオナが誰もいないと思っていたのだろうか驚きながら聞いてきた。
「誰もいない教室で、夕暮れ時に一人、どこに電話を掛けようとしてたんだ?」
「茶化さないでくださいよ」
笑いながら友達独特の携帯ディスプレイを覗き込もうとする動作を一定ある程度していると、レオナは元々、見る気など無かったのだろう。
「まあ、早く帰れよ」
治安部員らしく、そう言ってさっさと出て行った。しかし、悪く言うつもりはないがおかげで自分の中の緊張が解けた。
そして、良い表現で解けたのではない、何かをしようとする時に、必要な緊張が解けてしまったのだ。
携帯を見つめ、今から緊張し直そうと、さっさと教室を出てグランドへと向かうと、そこへ一人すれ違った事もあり、改めて誰もいないのかを確認して携帯に連絡を入れた。
「もしもし、私です」
相手の返答を聞きながら、その声は濁っている。
「すいませんね、一応、用心深く着信拒否していましたからね」
自分の口をマスクのように、黒い…物質とは違う何か異質な『闇』が覆っているからだ。
「その通りですよ、私は貴方達を信用してません。
そもそも命令されるのは、好きではございませんのでね」
するとさっきすれ違ったレフィーユが、どこから持ち出したのか携帯用のイヤホンを取り出して自分が話している最中だというのに携帯に取り付けて聞いてくる。
それに気付かないのは聞き手と言うべきか…。
「それはコッチの台詞ですよ。
そもそも私は部外者で、スーパーペインとは何ら関係なんかあるワケがないのですから、協力する話も無かった事にしてもいいのですよ?」
レフィーユがふっと笑いながら、このスーパーペインの部下との会話を聞いていた。
「こっちは輸送の話は、まだ上がってないそうです。
そっちは…?」
その返答にレフィーユは、ため息をつく。
「無理でしょうね、レフィーユさんにしても、そこは読んでいるでしょう。
まあ、他の手を考えましょう。
では何かあったら、また、連絡しますね」
返答をまたずに、一方的に切ると壁に身体を預けて、感心するようにレフィーユは微笑んでいた。
「隣は何を聞く人ぞ…か…」
「あまり良い結果ではありませんがね」
「いや、仕方ない事だ。
学園行事など、今や、連絡を入れれば簡単に手に入る。
その状態で、こんな強行をしたんだ。バレるのも時間の問題だったのだろう。
いや、最悪はまだ続いていると言ったほうがいいか…」
すると視線を送るようにレフィーユは視線を送った。
すると明らかに怒り心頭しているPTA軍団がこちらにやって来て、その真ん中に立ったミチコが突然、言ってきた。
「これは一体どういう事ザマス!?」
日程表を振り回しているためなのか何に対して怒っているのか知っているのだろう。
レフィーユは保護者達の怒声を、まるでそよ風にも吹かれたかのように答えた
「ふっ、それは我々、治安部が考えて作り上げた日程のようだが?」
「どうして夜のパトロールが抜けているのザマス?」
「何を言うかと思えば、初等部の子供にそんな危険なマネをさせていいと思っているのか?」
「ロウファちゃんは、そのために訓練を積んだのザマス」
「そうよ、ウチのシンヤちゃんもよ」
「私のネムは、刀剣術3級よ」
各々が自分の子供自慢が始まり、辺りがうるさくなる中、ミチコは嫌味たっぷりに答えた。
「まあ、皆さん、年頃だから、そんな男に現を抜かすのはわかるザマスけど」
『おほほ』と上品ぶった保護者全員の笑うが、さすがに言い過ぎだと思い。
「では、貴女達はそんなに子供が大切ではないと言いたいのですか…」
自然と自分の声が出ていた。