第五十三話
「5…」
基本を守ってロウファは、慈悲もない様子でカウントダウンはファミリー達を戸惑わせていた。
「4…3…」
しかし、ミクモにとって良くない展開だった。
「2…」
明らかに冷静さを失ったロウファを止めるにはどうすれば良いのか、そう考えた時…。
「そんな事はない!!
ボクがキミに勝てるように戦い方を教わったのはレフィーユさんだから!!」
ミクモはとうとう言うしかなくなっていた。
「どういう事だよ…?」
「ご、ごめん、で、でも危険な目に会ってからじゃ遅いから…。
ボクはロウファに勝つためのアドバイスをアラバさんやレフィーユさんに教わってたんだ。
だから勝負に勝てたのは、ボクの実力なんかじゃないってわかってる。
で、でもレフィーユさんも、ボクも君の事を心配だから…」
ペインも腕を組んだまま、状況を見守っていた。
そして、ロウファは…。
「裏切ったな…?」
ミクモの胸倉を掴んで叫ぶ。
「お前はボクを裏切ったんだな!?」
ファミリー達もロウファの様子を見ているだけとなっている。
「いい加減にしろよ、お前…」
それを制したのはペインだった。
「ようするにお前だけが、現実を見てねえバカだって事だろうが?
勝って結果を残す?
勝つ事に治安部のあり方なんて元々ねえのが、いい加減に理解しろよ」
「うるさい、誰がバカだ!!
犯罪者は倒さなければいけないのは、治安部として当たり前の事だ!!
逆に倒せなければ、治安が悪くなっていくんだ。
どんな事でも勝たないと意味がない!!
お前だって元治安部のリーダーだったんならわかるはずだ!!」
ロウファは激昂して叫ぶ、だが、ペインはため息ついて聞いて来た。
「なあ、お前、何の為に治安部になろうとしてるんだ?」
その言葉にロウファは、明らかに止まった。
そのため現場が、静まりかえっていた事にミクモは気が付いた。
今、この場には子供二人と、ペインもファミリー達もいる。
言ってみれば、犯罪者のグループと、それ以外、一般人と呼ばれる枠で括られている状況だった。
今、飛び掛りもすれば簡単に確保できただろう。しかし、それだけロウファの行動が異常だった、みんながロウファの言葉を待っていた。
「…ボクは」
「ん?」
しばらく考え込んだのかロウファは、手を握り締めて十手を形成する。
「ボクは、お母さんの期待に応えるために治安部になるんだ」
もう少しすれば彼は飛び掛かって来るだろうと『誰もが』簡単に読み取れた。
「ロウファ、やめて…」
ミクモは諦めず、ロウファを下げようとするが、もう彼の言葉はセルフィの静止のように聞こえていたのか届く事なく払いのけられる。
「将来のため…。
勝って結果を残さないと…っ!!」
予想通り姿勢を低くして、ロウファはペインを倒そうと組み付いた。
ペインは完全に冷静さを失ってもなお、手柄を挙げようとする子供に叫ばずにいられなかった。
「このバカ野郎が!!」
その叫びはかつて自分が治安を守って来た人間だからか、ちょうど駆け込んだレフィーユの耳に届いていた。
そこで彼女は、ペインの攻撃を受けた相手の名前を叫んだ。
「ミクモ!!」
ミクモはロウファを突き飛ばし、その代わりにペインの攻撃を受けたのだった。
武器同士が接触したまま、そこからミクモが倒れるまで不思議とゆっくりと時間が流れたかのように思えた。