第十八話
お酒は二十歳になってから…。
「…というより、これ、まだ続くのですか?」
「だぁから、お前は何の事を言っている…?」
酔っ払ってレフィーユの視線がさらに鋭くなっていたが、少し状況を整理しようと思った。
どうやら酔っ払ったセルフィは、自分の『酔い』を相手がどんなに酒が強かろうと、泥酔に至らしめる事が出来るらしい。
その方法はとりあえず言うまでもないだろうが、今、とても危険な状態なのは変わりはない。
治安部のパトロールでは、酔っ払いがいたら、すぐに連絡を入れろと言われるくらい危険なのだから。
「ふっ、犯罪ではないが、魔法が使える今では、酔っ払いに武器を持たせてしまう事ほど、危ない事はないからな」
そう言いながらレフィーユはサーベルを作り出すというのは、いかがなモノだろうかと、悪い視線を送っているとセルフィが姉のサーベルをじっくり見ていた。
「いいなぁ、私の武器って長いからさ。
狭いところでの立ち回りを考えないといけないのよねぇ。
前々から姉さんの武器って、良いなと思ってたのよ」
「セルフィ〜、お前は全然、自分の武器がわかってない」
「どぅしてよ?」
「今は『揺れ』の時代なんだ、お前がブンブン…槍を振り回すたびに、どれだけ私が焦燥感を感じたと思っている?」
「姉ぇさん、それは今だけよ。
男は結局、バランスを求めるの。
姉さんは『貧』ってワケじゃないのだから、放っておいても人気くらい出るわよ。
ね、アンタもそう思うでしょ?」
どんどん会話が怪しい方向になって来たので、白々しく聞いてみた。
「そ、そんな事より、明日、目星はつけるとは言ってどうやってやるのですか?」
「…ああ、その事か、直接募集してみて面接だな。
合格させる気は、こちらには無いがな」
「どういう事でしょうか?」
するとレフィーユは酔っ払っているとはいえ、真面目に話を始めた。
「私がどうしても避けたかったのは、噂によって外部に情報が漏れるという事だ。
いくら私でも、私がペインの搬送日を決めた途端に、学園内は騒然とする事は避けられないだろう。
その際に初等部の子供に、ペインの搬送日が漏れる可能性が生まれる。
…それを踏まえれば、あのモンスターどもは自分の子供に、ペインの所在すら普通に話すような。
…まさにモンスターだ。
…だから、…このイベントを盾にして、その隙に私達がペインのファミリーを確保する手はずを整えるのが狙いなんだ…」
よほど酔っているのだろうか、レフィーユはまともには説明していたがだんだんと頭を揺れていた。
「大丈夫ですか?」
「ふふふ…」
そして、急に笑い出すレフィーユに少しばかり危なさを感じていた。
「…お前は優しいな」
「突然、何を言うのですか?」
「わかってる。
いつもお前は自分より、人の心配をするような男だ。
そんな男に私は酌をしたい…」
すると段々、目が据わらせ『ぐいっ』と一升瓶をあおり始めるレフィーユを見て思わず…。
自然に後ろに後ずさりするが、尻餅をついてしまう。
「の、飲みすぎですよ?」
「んん?」
口に酒を含んで、顔を近づけてくるレフィーユから逃げ出すため後ろに走り出したが、その時『ゴクリ』という何やら、飲み干すような音がはっきりと聞こえた。
「ど~こに逃げようというのかな?」
自ら取り外したよほど誇らしそうに、ドアノブを見つめる、レフィーユの目は…。
赤く光っていた…という…。
「レフィーユさん、気を確かに!?」
そう言いながら、自分はドア目掛けて体当たりするが一向に開かない。
「ふふふ…」
尚もレフィーユはゆっくりと酒を煽る。
その姿に異様な恐怖を感じ…。
さらに体当たりを繰り返し、開いたドアノブの穴に指を突っ込んだりしていた。
その姿には、主人公の姿はなかった…。
ただ言うなれば…。
「ふふふふ…」
脱出不可能な自分の部屋から逃げ出そうとする哀れな犠牲者だろうが、詳細はあえて言うまい。
「ぎゃ~~~!!」
ただ最後に彼が再度、思った事があった。
酒は二十歳になってから…。