第十七話
「んんん、んん~~っ!!」
その姉妹の接吻は、異様に長い時間に感じられた。
レフィーユとて、今、現在進行形で暴れている。
妹の顔を引き剥がそうとして両手を使って顔を押しのけようとしていたのも見た。
セルフィと合わさっていた顔をどかせようと首も捻り。
そして、タップしていた。
「んんん~!!」
一向に離れないセルフィにレフィーユはとうとう自分に向けて手を伸ばしていた。
おそらく先ほど『アラバ』と言ったのだろう。
助けを求め手を伸ばしたが、時すでに遅く。
ぐったりと…。
レフィーユは崩れ落ちた。
「ぷはぁ!!」
行為が終わり、セルフィはあいも変わらず上機嫌なままであったが、レフィーユは虫の息で聞いて来た。
「…アラバ、どうして助けてくれなかった?」
「あんなの無理ですよ。どう助ければいいのですか?」
そんな自分の解答にレフィーユは、右手で頭を抱えながら答えた。
「『厄介』なのは、これからだというのに…」
一瞬、何の事だと思いもしたが、先ほどの妹が暴挙がこの姉が言った事を思い出させ、そんな中を構わずレフィーユは息を絶やせながら答えた。
「家族間、姉妹、故にこうなる事を知っている分、本来なら…逃げるべきだったのだが…。
このセルフィの能力は、今の…私にとって利用すべき『点』だったのが失敗だった…な…」
「利用すべき点、酔っ払ったセルフィさんが?」
一瞬、酔っ払っているセルフィを見るが、すぐに手を重ねられたのでレフィーユは言った。
「ふっ、気にするな…。
これは私が利用できると思って、どうしても足を止めてしまった私のミスだ、今になっては…どうにもならん事だ…。
お前にとっては…」
酒気が漂ってくる中、レフィーユは『くくくっ』と喉で笑って言った。
「悪夢の始まり…だ…」
そう言って彼女は事切れ、手が『だらり』とフローリングに落ちた。
すると後ろから殺気に似た、気配が背後からした。
「さぁて残るのは、アンタだけね」
優しくレフィーユを横たわらせると、自然と聞いてみたくなる。
「そうですか、私にとって解らない事だらけなんですが?」
『正解は、逃げるべき』という、彼女の遺言は胸の中にしまいながら、出入り口である玄関を確認していると彼女は言った。
「そぅよね、アンタ知らないモンね。
アタシね、酔っ払うと、とぅても『厄介』なのよ…。
だからパーティとかで、毎回、色んな方法で確認しながらシャンパンとか飲んでんの。
そんな私でぇも、やっぱり家で間違って飲んじゃった事が…。
あれ…」
目を瞑ったまま説明を始めたのを見逃さなかった。
そのまま玄関まで、まるで弾かれたようなスピードで逃げる。セルフィが気付いた時には靴を、指先に掛けようとしていた。
その時、『ゴン』という鉄が床を叩くような音がした。
「いっ!!」
…一瞬、何が起こったかわからなかった。
自分の肩の辺りを何か押し付けられた感覚が襲ったと思えば、駆け込んできた性質上、身体が前転しながら宙に舞う。
一回転したんだと思うが、さらに不測の事態に身体が自然と緊張したが中に浮いた身体はまるでクモの糸に絡み取られたかのように身動きが取れなっていた。
「まったく油断も隙もありゃしないわね」
セルフィの近くまでクレーンされ、手にしていたハルバートを『ゴン』と床を叩くと、自分の身体に絡まった『足場』が解け、腰から床に落ちた。
「なるほど…厄介ですね…」
少し悶絶して腰を擦っていると、後ろから誰かの声が聞こえた。
「それでお前は、何をしようとしていたのだ?」
見るとレフィーユが身体を起こし、寝転がっている自分の視線を追っていた。
「レフィーユさん、気が付いたのですか…?」
「気が付いたとは…何だ…?」
嫌な予感がした。
鋭さすらある細い目が、据わっていたのもある。
ただ、この『予感』に気付くのには、少しばかり時間が掛かった。
何故なら彼女の『それ』は見た事がないというのもある。そして、今、『飲んでいない』のが大きな理由だった。
「なあ、アラバ、お前は何をしようとしていたのだ…んん?」
嫌な予感というのは、口にしないといけないのが苦痛である。
「レフィーユさん、もしかして…?」
すると無言のまま、玄関の方に近づいて行く。
そのままノブに手を掛ける。
部屋を出るのかと思いもしたが…。
ベキィ!!
レフィーユは、ドアノブを握り取って持って言った。
「これが…欲しかったのか?」
「レ、レフィーユさん?」
「お前の欲しいものなら何でもくれてやる…。
さあ、次は何が欲しい?」
『厄介』な事になっていた…。




