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第十六話

 「…アラバ、一つ聞いてもいいか?」


 「何でしょうか?」


 「どうして、学生身分のお前の部屋に酒が置いてある?」


 「食用酒ですよ。


 あの人、私が料理をするのを知ってまして、あの後、ヨウさんからもらいました」


 「だからと言え、学生のお前が酒を持ち込む理由にはならんだろう?」


 レフィーユは、いつまでも酔っ払って上機嫌になっている妹を見てられないのか『ふるさとの味 ブドウ100%』とラベルの貼ってあるビンを眺めているので一応、説明しておいた。


 「それは結局、お酒を持ち込む事ですので私も断りましたよ。


 ですけど『どうしても』と言いますから、断りづらくて…。


 バレないようにしてくれ…と言ったら」


 「あのビンにラベルを張り替え、差し出して来た…というワケか…」


 するといい加減にコソコソしていたのが、酔っ払ったセルフィにも伝わってきたらしく…。


 「ふぅん、なぁに、イチャついてんのよぉ!!


 そもそもいい歳こいた女が、こぉんな深夜に男の部屋にやぁて来て…。


 座れ、このアポレ」


 一瞬『誰?』と疑問符が浮かんだが、自分を見て言っているので自分の事だろうと思い指示の通り『正座』と言われて座ると、セルフィはベッドの上に腰を掛け服を脱ぎ始めた。


 「ちょ、ちょっとセルフィさん!?」


 「あによ、ちょっと暑いのよ、この部屋…」


 「セルフィ、エアコンがあるだろう?」


 レフィーユもさすがに妹を止めようとしたのだが…


 「いいの、姉ぇさんは調べる事があって…忙しいの。


 こんなヤツの相手は、私に任せて、あそこにPCあるから頑張って…」


 何を頑張ればいいのかわからないが、どうやら服を脱ぐのをやめたらしく口約どおり、自分に説教をし始めた。


 「…あの、レフィーユさん。


 セルフィさんって、お酒弱いのですか?」


 「弱いというワケではないが…。


 セルフィは酒を意識して飲めば酔っ払わないのだが、知らずに飲んでしまえばこんな風になってしまう癖があってな」


 再度、ブドウ100%とラベルの貼られたビンと、未だ氷の入ったコップを見つめて答えた。


 「つまりカモフラージュが裏目に出て、ロックで味わったからこうなったと?」


 「そのようだ、そして、姉という意見として言わせてもらうが、こうなったセルフィは…相当、厄介だ」


 「厄介って何よぅ。


 大体、飲酒ってさぁ、お祭りの時に大人が薦めたりする地域だってあるじゃない。


 飲酒はいけませんって言うけど、子供の私たちゃ、そんな好意やノリで薦めた人たちの酒なんか断れないってのよ。


 アンタ、私りぁ、そんな人達を逮捕しろってのぉ?」


 何故か自分が怒られて、酔っ払いの妹を姉と二人して冷ややかに視線を送っていたが、酔っ払いセルフィの話題は先ほどの留置所の話になっていく。


 「アンタさぁ、犯罪者と話すのはいいけどさ。意見を求めるってどういう頭してんのよ」


 『説明しなさい』とハルバートで『ゴン』と床を叩く酔っ払いは、目を座らせたまま刃先を自分に突きつけてくるので、警戒と共に説明を始めたのは言うまでもない。


 「『元』とはいえ、もう一人のリーダーがいるのですから、今回の事態に、その意見も取り入れてみようと思ってやってみたのですが…不味かったですかね?」


 下手(したて)に…。


 あくまでセルフィを刺激しないよう、下手に出て細心の注意を払って説明をする。


 明らかに酔いが冷めたら、忘れているっていうタイプなのが先ほどの床にハルバートを叩く様で見て取れたのだ。


 この妹は絶対、弁償しない。


 床が打撲独特の凹みを見せる中、セルフィはさらに斧槍で床を叩く。


 「何で私に相談しないのよ!!


 毎度、毎度、困った時は姉さんか他の誰かじゃない、何のためのIQ230だと思ってんのよ。


 答ぬぁなさいよ!!」


 「セ、セルフィさん、飲みすぎですよ…」


 とりあえず年上の采配として、お酒を取り上げようと注意をするが、クダをまく理由になってしまった。


 「大体ぃ、アンタは女の扱い方がなってないのよ!!」


 「は、はぁ、扱い方ですか?」


 「『女』の扱い方!!


 私かりゃしてみれば、その座り方だって悪いのよ」


 そう言って、最初の指摘は自分の部屋で正座をさせられた体勢であったらしい。


 「どうして自分の部屋なのに正座してるのよ。


 それも俯き気味、人と話をする時は目を見て話しなさいって言われなかった?


 目までは行かなくても、せぇめて顔を見るくらいしなさい」


 確かにごもっともな意見だが…。


 「……」


 こちらとしては顔を上げれなかった。


 「ふっ、今日は上下おそろいの白か…」


 レフィーユも思わず笑みをこぼしてしまう。


 片足を上げた、セルフィは『白』を完全に見せた形でそんな事を言っているのだ。


 するとそんな事もわからなくなるほどのこの酔っ払いは何を勘違いしたのか…。


 「駄目よ、そんなんじゃ!!」


 再度、ハルバートで床を叩いて立ち上がったセルフィは、こちらに擦り寄ってきた。


 「ふん、まず、その上がり具合から直すべきね」


 そう言って、自分の顔を鷲づかんできた。


 「セ、セルフィさん!?」


 「あによ、私がアンタの上がり症を治してあげようってのよ。


 アンタ、女を見るだけで、顔を上げられないんでしょ?


 だったら、それ以上の刺激を与えれば、アンタは慣れるってワケよ」


 『解る?』と言いながらセルフィは、自分の顔を掴んだまま目を据わらせて顔を近づけてくるので、さすがにレフィーユも止めに入る。


 「セルフィ、やっていい事と悪い事があるぞ!?」


 腕を引き剥がそうとするが、妹も普段鍛えているため中々、離そうとせずこう答えた。


 「あによ、これは姉さんためでもあんのよぅ。


 それとも…」


 その時、据わった目が『にんまり』と笑顔になった。


 「!?」


 その性だろうかレフィーユは自分を見た。


 「姉さん、見本を見せてあげましょ…」


 セルフィの握力が緩んでいくのが、明らかにわかるのが…。


 これからの始まりだった…。


 「やめろ、セルフィ」


 姉に抱きつく妹、レフィーユが明らかに『怯え』を見せた。


 「いぃじゃない、女同士よ」


 「やめろ、やめんか…んぅぅぅ!?」


 妹と姉の唇が合わさっていた。 

 

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