第三十七章 その一
須弥壇の中で、黒々とした霧の塊りがうごめくように登り立ち、それがすーっと引いて行ったあとに、黒いフードの大男があゆみ達を見下ろすように立っていた。
「待っていたわよ」
あゆみは剣を抜き構えた。
「馬鹿な! 私がくるのが分かっておったと言うのか」
「私を誰だと思っているの! 私は天仁法師様の末裔。あなた達から、この島を守るために天仁法師様が一三〇〇年前からずっと光を絶やさず待っていたのよ」
「天仁法師か……。奴さえ邪魔しなければ、この世界は我々が支配できていたものを!」
「あなたは何もわかってはいない。天仁法師様や太陽神の力を。もうそろそろ、呪文の効き目が出るころよ!」
「何!? 呪文だと? あ、体がだんだん動かなくな……」
フードの大男は、しばらく、もがいていたが遂に体が動かなくなり、言葉も出なくなった。
「そう。さっきから私が唱えていたのは、お経ではなく、あなたを縛る呪文だったのよ」
そう言うと、あゆみは剣の柄にある赤いボタンを押した。
剣からはまぶしいほどの白い光が発せられ動かすたびに、まるで生きているかのように剣の周りを走った。
「やー」
大声で叫びながら、あゆみは大男めがけて剣の先をくねらせ、光のロープで縛るようにぐるぐると巻きつけた。
「ううう……。うううふっはっはっはっはっは……」
大男ははじめ苦しそうに呻き声をあげたかのようだったが、それはいつしか大きな笑い声に変わっていた。
「なに! 呪文は効いてなかったの!?」
あゆみは驚いた顔で大男を睨んだ。
「そんな子どもだましのような術が私に通用すると思っているのか」
黒いフードの大男は、フードを脱ぐとあゆみ達の方にむかって脱ぎ捨てた。
大きなフードは、一瞬、あゆみ達の視界をさえぎった。
あゆみは咄嗟に目を閉じ意識を王冠に集中するのだが、王冠は輝きもせず何も起こらない。
「ふぁはっはっはっはっは……」
不気味な笑い声が遠くから響いて来る。慌てて目を開けたあゆみは驚いた。




