62 追加効果は人それぞれ
そう自覚したら途端に恥ずかしくて、でもどうしたら良いのかも分からない。多分好き……だけど、やっぱり今すぐ結婚なんてどうやっても考えられないから困る。
だって、まだ会ったばかりだし……シオンの家族の事とかもまったく知らない。まぁ、暗殺とかされそうになったり壮絶な跡目争いしてるから話づらいのも分かるけど……あと貴族らしいしどこの馬の骨ともしれないわたしとか反対されない?わたしはこの世界の決まりとか全然知らないし、やっぱり無理だよ……。
ある程度お付き合いはしたとしてもやっぱりシオンと結婚は出来ないと思う。……色んな意味で心臓が持たないもん。でも離れたくなんて無いから矛盾してる。
「レインちゃん?顔が面白いことなってるよ」
「あっ、サラちゃんごめん、これ飲んで。それにお水はマイムいるかな?」
『私を呼んだ?』
考えても考えてもキリがないから頭を切り替えるように風邪薬の白い錠剤を二粒サラちゃんに渡してマイムを呼んでみる。
コバルトの街から離れてしまっているからマイムに声が届くのか分からなかったけど、呼んだらすぐに来てくれた。妖精さんって不思議。
「お薬飲むからここに美味しいお水くれる?」
『良いわよ。美味しいお水をコップ一杯ね』
「……スゴイ、妖精呼んでる」
マイムを呼ぶとサラちゃんが目をまん丸にして驚いている。妖精ってあんまり呼ばないものなのかな?
『私はレインに名前をもらったからお友達なのよ』
「マイム、この後ポーション作るから手伝ってくれる?」
『ええ、もちろん。レインと一緒は楽しいから呼んでくれて嬉しいわ』
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中和剤 品質:SS
極上の魔力が込められた中和剤
妖精の祝福により効果が高まる
妖精の信愛からなる純水:魔力(5:5)
追加効果:キラキラでとても美味しい
製作者:レイン
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「マイム、ありがとう。キラキラの美味しい中和剤ができたよ」
『また呼んでくれる?レイン、私が出せるのは別に飲み水だけじゃないのよ?』
「うん、何か必要になったらまたマイムを呼ぶね」
『分かったわ。でも必要じゃなくても……何でもないわ。またね、レイン』
お水を出してくれたマイムにお礼を言ってまた呼ぶ約束をするとゆらりと消えてしまう。
あれ、この中和剤って鍋……じゃなくて錬金釜で作った時と違う。あの時は森羅万象とかものすごいことが書いてあったよね?
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初級HPポーション 品質:SS
極上の魔力と妖精の祝福が込められた中和剤で
製作されたHPポーション
飲むか傷口に掛ける事により回復する、
美容液にもオススメ
回復量は中級ポーションと同等の最上級品
シエル草:中和剤(1:9)
追加効果:キラキラでとても美味しい
製作者:レイン
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初級MPポーション 品質:SS
極上の魔力と妖精の祝福が込められた中和剤で
製作されたMPポーション
飲むことで魔力が回復する
回復量は中級ポーションと同等の最上級品
ルーン草:中和剤(1:9)
追加効果:キラキラでとても美味しい
製作者:レイン
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HPポーションとMPポーションを各三十本作るとギルドや露天で買ったシエル草とルーン草が無くなった。
中和剤はまだ余っているけど仕方無いかな、と思いながらふと追加で毒消しと増血剤のポーションを作っておこうと思い直す。確かエルベリーとロビの葉はアイテムボックスに入っていたはず……わたしはごそごそと探すとエルベリーとロビの葉を取り出した。
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初級毒消ポーション 品質:SS
極上の魔力と妖精の祝福が込められた中和剤で
製作された毒消ポーション
飲むか毒で傷つけられた部位に掛ける事により
回復する
Aランク指定までの毒物を中和する最上級品
但しSランク指定、猛毒、には効果がない
エルベリー:中和剤(1:9)
追加効果:キラキラでとても美味しい
製作者:レイン
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初級増血ポーション 品質:SS
極上の魔力と妖精の祝福が込められた中和剤で
製作された増血ポーション
飲んだり直接身体に取り入れる事で失った血液を
回復する
ロビの葉は魔力と相性が悪く作る事が難しい
回復量は中級ポーションと同等の最上級品
ロビの葉:中和剤(1:9)
追加効果:キラキラでとても美味しい
製作者:レイン
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こっちはそこまで需要はなさそうだから各十本。
「ジョーさん、HPポーションとMPポーションできたからギルドに納品行きますけど」
「じゃ、行こうか?」
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「HPポーションが銀貨一枚小銀貨二枚×三十本、MPポーションが銀貨一枚小銀貨四枚×三十本、毒消薬が銀貨一枚小銀貨八枚×十本、増血ポーションが銀貨六枚×七本で、合計小金貨十三枚銀貨八枚の買取だけど、良いかしら?」
「はい、お願いします」
「じゃあギルドカード出してくれる」
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レイン 15歳
Lv:2
冒険者:D
職 人:D
商 人:F
攻撃魔法(火・風) 回復魔法ヒール
アルケミニア王国:コバルト
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どうやら今回のポーションの納品で職人のランクが上がったみたい。冒険者のランクはオークの討伐であがっているし、商人のランクはどうしたら上がるんだろ?
「メロディ、今この娘が納品したHPポーションとMPポーション各十本と、毒消しポーション三本欲しいんだけど」
「あらジョー、この子から直接買えば良かったのに」
「他のポーションと混ざると嫌なんだよ。その点鑑定した紙が貼ってあれば一目で分かる」
「そう、ね。このポーション美味しくて効果高いみたいだし。HPポーションが銀貨一枚小銀貨四枚×十本、MPポーションが銀貨一枚小銀貨六枚×十本、毒消薬が銀貨二枚×三本、合計小金貨三枚銀貨六枚よ」
「支払いはパーティー費から」
ジョーさんはそう言ってギルドカードを受け付けのお姉さんに渡す。
「買う時は小銀貨二枚高いだけなんだね」
「ギルドを通せば鑑定の紙もついてくるからどんな味か覚悟を決めて飲めるし、案外良心的だろ」
「覚悟って……」
「ここのポーション見てみれば分かる。不味いんだっ!」
ジョーさんが味を思い出したのか遠い目をする。棚の方を見て紙は小さくて見えないから鑑定してみると、言っている意味がようやく分かった。
「不味いとか苦いとかはまだ良いとして……臭いって……」
「だろ……」
普通に作ると無味無臭のポーションで追加効果は人それぞれみたいだけど、どうやらこの町のギルドに納品している錬金術士の人はポーション作りが下手らしい。
その分値段も格安だけど飲みたくないな……。
「そうだ、ジョーさんっ!怪我をして血を流しすぎた時はHPポーションの後にこれを使って。御守りがわりに三人に持っていて欲しいの」
「これ銀貨六枚のやつだろ、それを三つも受け取れないよ」
「じゃあ、かわりに明日のお昼ご飯ご馳走して下さい。シズクさんの宿、朝晩はご飯が出るけどお昼はどこかで食べなきゃだから美味しい所に案内してくれると嬉しいかな」
「レイン……」
すぐこうやって手を握るのってジョーさんの癖なの?でもドキドキは少ないから大丈夫。
「あんた達、カウンターでイチャイチャしないでくれる?」
「メロディ、これは女の友情ってヤツだ」
「どうやってもジョーが幼女を誑かしている様にしか見えないから」
「わたしは十五歳ですっ!」
「知ってるわ。アナタさっきギルドカード出したでしょ」
メロディさんって、メロディさんって、食えない女ってヤツだ~!
「……確かに見た目だけだとサラより年下に見えるからな」
「ジョーさんっ!」
確かにサラちゃんは見た目で年上かと思ったけど、それはあの立派な膨らみがあるからだよ絶対!わたしだって少しはあるんだから!これは着痩せなんだからっ!!!
心の中で必死に抗議というか自分に言い聞かせているのは……なんか虚しい。
「まぁ、良いわ。二人とも見目麗しいから見てて苦にはならないもの」
ああ、このギルド……売ってるポーションの味もさることながら受付のお姉さんも一筋縄ではいかない癖がある。
わたしこの町で上手くやっていけるのかな?エルが早く迎えに来てくれるように祈るしかない……。




