61 離れて分かる事
「ギルドで材料を売ってたらポーションを作ってギルドに納品というか売れるけど……わたし初級ポーションしか作り方知らないよ?」
そう、わたしは錬金術の初級の本しか読んだ事が無いから初級ポーションしか作れなかったりするし、ポーションの材料だって言う月光草とかも何に使うのかさっぱり分からなかったりする。
「本を読んで作れるならレインに適正があったんだろう……私は魔法に憧れていたが適正があまり無くてね、どうしても冒険者がしたくて剣士の真似事をしているよ。正直魔法を使えるサラが羨ましいよ」
「う~ん、わたしに剣士の適正は無さそうかな……」
なんたって紙装甲だもん。魔物と戦うとして、ウィルとシオンが守ってくれてるから安心して魔法を使える。
「確かに剣は持てなそうだ」
「せっかくだし初級以外のポーションも作れるようになりたいかな」
「だったら王都の大きい店で本を買うか、王立アカデミーの錬金術クラスに入るか、錬金術士に弟子入りして教えを乞うかだね……王立アカデミーの図書館が一番充実しているみたいだけど、王立アカデミーは入るのも出るのも大変らしい」
「へぇ~、王都、アカデミーか」
午後からギルドや露天を回ってポーションの材料を買いながらジョーさんとそんな話をしていた。ジョーさんは王都の出身らしく錬金術にも詳しかった。
一度きちんと勉強してみたいなと思うものの、王立アカデミーとか普通に入れるものなのかな?
「材料はこれで揃ったのか?サラの薬は買わなくて良いのか?」
「ああ、それは手持ちのを使うから大丈夫。なんか売ってた薬草煎じた薬は色も凄いし臭いもその、あと苦そうだったし……」
あんなに臭くて苦そうじゃなければ買っていたけど、流石にあれはわたしも遠慮したいからサラちゃんに買って帰るのは可哀想。熱があるものの普通の鼻風邪だからわたしの荷物の中にある常備薬、いわゆる市販の解熱作用がある置き薬とポーションで十分だからそれを使う事にした。医師が処方する薬には抗生物質が入っているけど市販薬には入っていないから、この世界で使っても大丈夫だろうとわたしは勝手に思っている。
だいたい鼻かぜはほとんどがウイルス性だからまず抗生剤は処方しないし、たとえ熱が高くてもかぜ症状のみで全身状態が良ければ風邪薬と解熱剤で大丈夫。むやみに抗生物質を処方する医師が多いけど、わたしはそれが嫌いだから風邪には市販薬で十分だと考えている。
そもそも外科医のわたしは畑違いと言われそうだけど研究者として、元いた世界に現在風邪に有効な治療法なんて存在していないと断言できる。感冒薬は今ある症状を緩和するに過ぎないから。あと出来るのは栄養のあるものを食べてよく休む事で、解熱はそれに繋がるから必要。
だからと言うわけでは無いけど、解熱作用がある喉や鼻によく効くという症状ごとに色が別れたCMお馴染みの風邪薬は手持ちが少ないので創造しておこう。
この世界では傷はポーションで治せる。それに酔いや毒、麻痺といった状態異常と分類されているものもポーションで治せる。
ただ風邪とか病に分類されるものは薬師が作る煎じた薬草を飲むとかそんな治療法なんだよね……なんだか不思議。万能薬の上級だか特級なら風邪も治せるみたいだけど、家が買えるような値段がするポーションを買ってまで風邪は治さない。当たり前だけど。
ちなみに毒消しポーションとか一種類しか治せないポーションより万能薬のポーションは高い。わたしも作って持ってるけど初級だから風邪は治せない。この世界は便利なのか不便なのか……でも傷が綺麗に消えるのは正直有り難い。
「宿に戻ったらサラちゃんに薬出すね」
「サラのやつ今頃熱があるのを良い事にメルに甘えてるだろうよ」
「たまは良いんじゃないかな?サラちゃんまだ十三歳だし」
「……そういえばレインは十五歳なんだよね」
あっ、今ジョーさんが遠い目をした。
「立派に成人してますからね、わたし」
「あっ、そういえばレインの銀髪は綺麗だね。手入れは何でしてるの?」
誤魔化した、今盛大に誤魔化した。
「わたしの髪の毛本当は黒なんだけど、なんかエルが悪戯したみたいで……」
そう言いながら腕にぴったりと嵌まっている腕輪を無意識に触る。
この町に飛ばされた時は気づかなかったけど、宿屋で鏡を見て凄くびっくりした。わたしの髪の毛はキラキラの銀色になっていたし瞳の色も違かったから、これ誰?状態。色合いが変わるだけでこんなにも違うものなんだと正直ビックリした。
だからエレオノーラ様に髪の毛を何色にするか聞かれた時、黒にして本当に良かったと本気で思っている。その時地球に黒い瞳が無いって言われて、瞳の色は黒に近い色でお願いしたら紫色になってたんだけど、光の加減では黒っぽく見えるしそこまで違和感は無い。
「偽装の腕輪だね。しかも外れないのか」
「なんか術がかかってるみたいで、外せなくて」
「本物のレインも見てみたい所だけど、こればっかりは仕方無いね」
腕輪をしたままじゃコバルトの街に戻ってもわたしだって気づかないかもしれないし、そもそもここがどこかも分かってないのに、もしコバルトの街から凄く遠くなら三週間以内には帰れない。
ウィルとシオンにもう会えなくなるかもしれない……そう考えると何故か背筋に冷たいものが走る。
「ジョーさん、早くサラちゃんに薬あげてポーション作りましょう!ポーションを作ったら納品にギルドにも行かなきゃ行けませんしっ!」
何かしていないと、考えたく無い事ばかり考えてしまう。だってエルはいつ迎えに来てくれるのか分からない。
「レインが納品したら即買うよ」
「別に買わなくてもポーションくらい作るのに……」
「ただで作って貰うわけにはいかないからね」
「みんなそう言いうね……わたしの仲間もこのワンピースの代金受け取ってくれなくて、結局渡してたポーションと交換って話になったし」
絶対ワンピースの方が高いと思うんだけど、あの微笑みで"じゃあ、交換"って言われたら途端に何も言えなくなるから困る。あの顔は反則だ。
「それさ、気になってたんだけどスパイダーシルク?」
「確かそんな名前だったと思うけど、なんか防御力が心配だからって」
「その人さ、レインの事好きだろ」
「へっ、な、なんで」
「普通そんな高いもん贈らないからね」
「そ、それは」
「あーっ、もう告白された?」
「……されたのは求婚、なの」
「それで困ってるとか?」
ジョーさんの揶揄い混じりの顔は次第に真剣になる。
「お試しで付き合うって話になって、エルがこれからどうしたいか一人でよく考えろって……」
「エル?」
「この町にわたしを連れてきた妖精がエルなんだけど」
「ああ、妖精か。ずいぶん過保護な妖精だな」
きっとシオンだっていつまでもわたしを好きだって言ってくれるわけじゃない……きっといつかは……でもそんなの……イヤだ。
ああ、そうか……わたし……、……好き、なの?
違う、顔が好みなんだよね?
でも……シオンがわたし以外の子と一緒にいるのはイヤかも。
それに……あの声で違う子の名前を呼ぶのも聞きたく無い。
あと……あのキスもわたしだけにして欲しい。
どうしよう…………、
「レイン?」
「どうしよう」
今更だけど、わたしシオンが好き、かも……。
前話にて50,000PV↑となりました。ご覧いただきましてありがとうございます♪
50,000PV御礼は普通の番外編予定です。現在、家庭の事情(冠婚葬祭)が重なっているのと仕事が滅茶苦茶忙しいのでお待ち下さいすみません(´◦ω◦`):
詳細決まりましたら活動報告にてお知らせ致します(〃艸〃)




