表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/5

おまけ.if~ぼっちOLだったら~

タイトル通り、ぼっちOL視点で書いたものです。

内容としては特に佐藤君verと変わりませんが、元々ぼっちOL視点で書こうとしていたものだったのでメモ書き程度に残しておこうと思い、投稿しました。

 いや~、まさかそんな展開が待ち受けているとは、あの時はこれっぽっちも思っていなかったよ。自分の空気の読めなさ加減がヤバすぎてもう……ね?





  =====





 話は衝撃的な事実を知る数日前に(さかのぼ)る。


 間もなくお昼の休憩時間が終わる頃になり、私は食べ終えて空になったお弁当箱を自分のロッカーへしまいに更衣室へ向かった。

 はぁ、仕事したくないなぁ。早く家に帰って……も何もやることないけど、仕事でミスして怒られる恐怖から早く解放されたい……。

 そんなマイナス思考で更衣室へ入ると、今年の4月から高卒で入ってきた後輩の鈴木さんと、誰にでもすぐに打ち解けて話しやすい面倒見の良いベテランの高橋さんが小声で何か話をしているところだった。

 2人は少し驚いた様子でチラリとこちらを見たけど、すぐに真面目な表情に戻った。……って鈴木さんが泣いてる !?

 私は鈴木さんの目が赤く涙で濡れていることに驚き、思わずチラッと二度見してしまった。

 鈴木さんが泣いてるなんて一体どうしたんだろう? 仕事で何かミスでもしちゃったのかな?

 そんな疑問を抱いていると、更衣室へ新たに人が入ってきた。入ってきたのは仕事が何でもできる上司の田中さんだった。


「あ、田中さん。鈴木さんなんだけどちょっと体調が悪いから今日は早退するって」

「そう。それじゃ、お大事にね」


 田中さんはそう返し、ロッカーに荷物をしまうとすぐに更衣室を出ていった。

 高橋さんも「それじゃあ、気をつけて。お大事にね」と言って更衣室を出ていき、更衣室は鈴木さんと私の2人きりになった。

 そういえば鈴木さん、最近体調が悪くてよく早退するなぁ。……あ、もしかして泣いていたのって「最近、早退してばかりで職場の人に迷惑をかけてしまって申し訳ない」という気持ちから涙が出てしまったのかな? 確かに今は繁忙期だから人が1人いなくなると大変だけど、体調が悪いなら仕方ないよね。仕事でミスをしまくる私だけど一応、先輩なんだから安心させる言葉を掛けないと。

 ……って、なんて言えばいいんだろう? 必要最低限なコミュニケーションしかしてないからこういう時、なんて言葉を掛けたらいいのか分かんないよ……。うわ~、どうしよう。……と、とりあえずこれだけは言っておこう。


「まぁ、あんまり深く考え過ぎなくてもね、いいから……」


 的外れな言葉掛けになってしまっていないかの不安と緊張で声が震えてしまったけど、なんとかそう言った。


「はい、ありがとうございます」


 鈴木さんは微笑しながらそう返してきた。よ、よし、反応は悪くないから的外れな言葉掛けにはなってないよね? あぁ、でもやっぱりあれで良かったか不安だぁ……。


「それじゃあ、気をつけて帰ってね。お大事に」


 私はお弁当箱をロッカーへしまうと、逃げるように更衣室を出た。





  =====





 あれから数日後の朝。更衣室を出て自分のデスクへ向かおうとしたその時、上司の田中さんに声を掛けられた。ひぇ~、私、昨日の仕事でさらにヤバいミスでもしちゃってた?

 内心ビクビクしながら田中さんの後について給湯室へ入る。


「最近、鈴木さんが体調悪いのは知ってるよね?」

「は、はい」


 どうやら仕事のミスではなく鈴木さんのことらしい。はぁ~、良かった。


「鈴木さんなんだけど、今、妊娠しているみたいなの」


 ホッとしていたのも束の間。田中さんは衝撃的な事実を告げた。えっ、うそ……鈴木さんが妊…娠……? えぇ――――――――っ !?!?!?!?


「そういうことだから鈴木さんのこと、気にかけてあげてね」


 田中さんはそう言うと給湯室を出ていった。

 えぇっ、鈴木さんが妊娠 !? ちょっ、なんでなんで? まだ19歳だよね? 早くない?

 朝から衝撃的な事実を聞かされた私は頭の中が大混乱に(おちい)ってしまった。

 あぁ、鈴木さんが妊娠……。ここ最近の体調不良の理由ってつわりだったんだ。

 ……はっ、そういえば私、数日前に「あんまり深く考え過ぎなくてもいいから」とか言っちゃったよね? もしもあの日、鈴木さんが話しやすい高橋さんに妊娠したことを相談していたのだとしたら……うわ~、私、何てタイミングであんなことを言っちゃったんだろう。妊娠なんて軽く考えちゃダメなことじゃない。

 しかもあの後、「気をつけて帰ってね」って言ったよね。もしかしたら鈴木さんに「まさか盗み聞きしてた?」なんて思われたかも。うひゃ~、鈴木さんに会いにくいよ。あぁ……。

 複雑な心境のまま、私はデスクへ向かった。





  =====





 鈴木さんが妊娠中と知らされた数日後、私はまた田中さんに給湯室へ呼び出された。


「鈴木さんなんだけど、社長を含めた重役の人達で話し合った結果、『鈴木さんを責めたりせず、元気な赤ちゃんを産んでもらおう。仕事を続けるかどうかは本人の判断に任せる』という方針でいくみたいだからよろしくね」


 田中さんはそう言うと給湯室を出ていった。

 上の人達がそういう方針でいくなら私はただ従うまでだけど……ちょっと甘すぎじゃない? あ、でもミスばかりする私をクビにしないで雇ってくれているような職場だからことその対応なのかもしれない。

 いつもはミスして怒られてばかりでイヤだなぁと思っていた職場だけど、初めて私はいい職場に就けれて良かったなぁと思えた。

最後まで読んで下さりありがとうございます!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ