20話 歪んで歪んだ愛
演奏会の後、俺と琴音はカフェに来ていた。
「ここのパフェ美味しいよね」
「だよな、ここマジで好き」
緊張から解放されて、嬉しい気持ちで遊んでいた。
「でも、本当にピアノ上手いね」
「まあ、琴音のために弾いたからな」
「なによそれ」
心の底から笑う琴音つられて笑う。
楽しい。
「今、ピアノ楽しいか?」
「もちろんよ、今度コンテストがあるから来てよ」
「ああ、絶対に行くよ」
「あなたのために弾くからね」
恥ずかしさもなく、言う彼女に俺が恥ずかしくなる。
まるでカップルじゃん。何故か俺が照れてしまった。
琴音は最初の時と違って、ありのままでいた。変わったな。
今の琴音は、可愛い。とにかく目の保養だった。
「ねえ、今度さ遊びに行こ」
仕草が可愛くて、何回もお願いしてくれと思ってしまう。
「うん、いつでも行こ」
俺たちの関係は、友達を超え、親友になっていた。気持ちをお互いにぶつけた。それがあったからこそ、今こうして琴音と楽しく過ごせている。
てか、本当に可愛い。可愛いしか言葉が出てこない。
「どこか行きたいの?」
「うーと、二人で遊園地」
はい、犯罪です。犯罪。前にピアノ以外の長所が無いって言ってたの絶対に嘘だよ。
この可愛さは物を破壊できるレベルだよ。
ふと横を見る。
志保が外から俺たちのことを眺めていた。志保には金曜日に話そうって言ったのに。
俺は、志保を見なかったことにして琴音に顔を向ける。
「遊園地か、観覧車乗りたいな」
「だよね」
目をキラキラさせながら言う琴音。やばい、俺の邪悪な力が無くなってくる。う、うああ。
「観覧車って告白のスポットイメージあるよね」
「まあ、確かに。アニメとかでみるな」
「私、拓哉ならいいよ」
「え?」
「だから、拓哉ならいいよ」
「そ、その」
「だから、一緒に観覧車乗ってもいいよって」
そっちかよ。そっちね。なんか俺が勝手に妄想してたみたいじゃん。恥ずかしい。
「そっちか」
「そっちってなに?」
純粋の目で見てくる。やめろ、分かってるくせに。この小悪魔が。人の気持ちを弄ぶ悪魔が。
「可愛い」
ブーメランですよ。6倍くらいでかいブーメラン刺さってますよ。
てか、そんな素直に言わないで、少し濁して言ってよ。
「じゃあ、私ピアノ教室あるから、帰るね」
「おう、頑張れ」
「明日ね」
その笑顔は俺にはもったいないレベルだった。
琴音が店を出て5分後、俺もパフェを食べ終え店を出た。
店を出ると、数十分前に居たはずの志保がいなかった。
俺は数分ほど歩き、反対サイドに渡るため、橋を渡っている時だった。
俺の目の前に志保がいる。
「もう、金曜日まで待てないよ、ずっと胸が高鳴ってるんだよ。どうしても落ち着かない。君の絶望の顔が、私の心臓が求めてるの。本当にね、1週間きつかった。だから、今日は許してね」
俺は、冷静だった。理由は、全てを知っていたから。
志保は橋の防護柵に上る。今にでも落ちそうだった。
志保は語り始める。
「特に残念なのは、私のことに気づいた時にビックリしなかったことが残念かな」
「後、あの琴音だっけ?あいつにせっかくチャンスあげたのに、それなのに拓哉〜って馬鹿な人だよ」
今、起きてることは真実だ。目を背けるな。
「残念だったな、これで2回目の失敗だな」
「え?えええええええ。そこも気づいてくれたの?もー言ってよ」
「私が相馬を利用してることバレてるんだ。じゃあ、クイズ相馬はどんなクズだったでしょう?制限時間は教えない」
「お前に酷いことをした」
「はい、ハズレ」
志保は防護柵を下りて俺の方に来る。手にはナイフを持っていた。
「入学初日に告白されたの、嫌ですって言ったら怒ったの、小さい男だよね相馬って。それでね、私は動画を撮ってたの、そして彼を脅した、地獄に行きたい?って聞いたら泣き寝入りしてきて、面白かった。それでね、何日かして、拓哉のことを相談したんだ、そしたら、相馬は拓哉のことが嫌いだったのよ。嫌いな理由聞いたら、好きな子と仲良くしてたからって、思わず本人の前で大爆笑しちゃった。それで、私が提案したの一緒に拓哉を地獄に落とさないかって、けど、私は天使ではないから、彼を利用できるだけ利用した」
「正解は、相馬もクズだけど私の方がクズ、でした〜」
つまり、あの日に起きたことは彼女が全部仕組んでいた。もちろん知ってる。俺も馬鹿じゃない。
「だから、あの時に起こったことは私が全部仕組んだことです」
ニッコと笑う
「どう、絶望した?するよね。まさか助けた相手がこんな人間なんて失望するよね。さ、絶望の顔見せて」
「けど、失敗したんだな」
「もう、いいから、それは」
「いや、よくないだろ。2回も失敗するとか」
「うるさいよ。確かに失敗しました。だって、早百合が馬鹿すぎるもん、あの写真を相馬から見せてもらって、まだ拓哉信じるとか、馬鹿しかありえないよ」
「見事に失敗したな、俺から小百合と琴音を引き剥がそうとしたけど無駄だったな」
「きっも」
「もー噂もしかっりと流したのにな」
「でもさ、私すごくない?だって拓哉私のこと2年生だと思ってたんでしょ?私の演技凄すぎ、褒めて、褒めてよ!!」
「確かに、騙されたな。俺はあの話を聞いて二年生だって勝手に思ってた。見事だったよ」
「ちょっと褒めたってナイフしかないよ」
「後は、あの美男子の男いるじゃん、そいつも私が仕組んだの」
「全部が明らかになってどんな気持ち?悔しい?悲しい?教えてよ、お願い心臓が痛いの。お願いだから」
「そんなことどうでもいいだろ」
「よくないって、教えてよ今すぐに」
「なあ、俺と付き合わないか?」
「は?頭おかしくなった?」
俺は志保に近づく。ゆっくりと。
「俺と付き合ってくれ」
俺は志保に抱き付く。
「うん」
「なんていうと思った?愛なんかで私は変わりません。てか抱き付くのやめて」
「そうか」
にやりと笑いながら言う。そして、俺は抱き付くのをやめる。
「なに、笑ってるのよ。本当に頭おかしくなった?」
階段を上がる足音が聞こえてくる。
「動画撮れたぞ」
成瀬が言う。
「動画?なにそれ、いつから?」
「拓哉が告白したところから」
「ありがと成瀬、やっぱ持つべきは友達だな」
「笑わすな、じゃ」
「おう、月曜日な」
志保は困惑していた。
「どうした?」
「あなたってバカ?その動画意味ないじゃん。みんな揃って馬鹿しかいないんだ」
「それは、どうかな」
俺は動画を志保に見せる。
俺が志保に抱き付いて告白している様子と志保はうんと返事をしている様子が映っていた。そこで動画は終わる。
「これ、みんなに広めようかな?」
「広めたら自分の首絞めるだけだよ」
「ああ、それでもいいよ」
「なにそれ」
「じゃあ、選べ。この動画を広めて一緒に地獄に行くか。俺の隣で幸せになるか」
「は?選ぶわけないでしょ。てか、選ぶ権利私にないでしょ」
「選べ」
「無理」
「選べ、藤波志保」
「無、理」
笑いながら泣く志保。
「選ぶ権利なんかないよ」
「じゃあ、俺の隣で幸せになるしかないな」
「そんなの、無理だよ私には」
手に持っているナイフは志保の手にはあまりにも大きすぎる。志保のしたことは許されることではない。世界の誰もが許さないだろう。けど、世界の誰もが許さないなら俺が許せばいい。
「俺の隣にいてくれ」
「幸せにできなかったら殺すからね」
泣きながら言う彼女。泣いて言うセリフじゃないよ。
「3回目は失敗しないよ」
と俺は言う
これが、歪んで歪んだ愛をもつ美少女、本当の藤波志保との出会いだった。
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