表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
14/91

14話 天才になるには努力の天才になるしかない

俺は、今ピアノ教室にいる、何でピアノ教室にいるかって?人を救うためだ。

 あの時聴いたピアノの音はどこか悲しい音色だった。

「では、今日はこちらの悲劇を弾いてみましょう」

 先生が優しく教えてくれる。

 この曲は聞き覚えがあった。あの日聴いた曲だった。

「先生、この曲はどんな曲なんですか?」

「この曲は、ピアノが弾けなくなった人が作曲した曲よ」

 ピアノが弾けなくなった人が作曲した。

 それは、どれほど辛いことなんだろう。

 自分の好きなことができなくなってしまう。

 いつも、当たり前のようにやっていることがある日を境にできなくなる。

 想像しただけで悲しくなる。

 あの日会った彼女はこの曲を弾いていた。もしかしたら、嫌な考えを浮かぶが頭を横に振りピアノに集中する。

「す、すごい」

「え?」

「あなた、才能あるよ」

 どうやら、俺はピアノの才能があるみたいだ。

 小さい頃やっていたが、飽きたのでやめた。

 というか、プレッシャーが凄かった。期待がいつしかしストレスになっていた。

「また、来てね」

 そう言われて、ピアノ教室を出た。

 時刻は20時になっていた。

 20時か、もしかしたらと思い学校に向かった。

 あの時にいた保険の先生の車はなく完全に誰も居ない状況だった。

 けど、窓が開いていた。その窓から侵入し音楽室に向かう。

 音が聴こえてきた。あの曲だ。

 この曲を作曲した人を調べた。

 中世時代に音楽家と活動していたが、ある日を境に自分のピアノの音が聴こえなくなったらしい、普通の音は聞こえるのにピアノの音だけが聴こえない。

 そしてその人は音楽を辞めたと言われている。

 音楽室の前で立ち止まる。

 俺は、彼女になんて言えばいいんだ。

 俺の言葉は無責任すぎる。知りもしないのに勝手に言われるのは苦痛でしかない。

 けど、彼女は今葛藤している。もしかしたらピアノなんか辞めたいのかもしれない。

 俺は、ドアを開ける。

 そこには、悲しそうに弾く彼女がいた。

 もう弾きたくないよ、と思っているような。

「よ」

 驚いていた。

「また来たの?」

 どこか嫌味が含まれていた。

「その曲って悲しい曲だよな、ピアノが弾けなくなった人が作曲した曲」

「私はそう思わないな」

「それは、どうして」

「悲しいより、美しいと思う」

「美しい?」

「あなたには理解できないよ」

「そうか」

「ピアノって楽しいか?」

「分からない」

「でも、やらなきゃ私の長所が無くなるの、無個性になる」

それほど、ピアノが大切なのか?それだけが長所なわけない、分かっているはずだろ。

「なあ、ピアノ辞めたいか?」

悲劇を弾いていた。だから、ピアノを辞めたいのかと思っていた。

「は?なにその質問、私がピアノを弾けなくなったと思ってるの?」

「そうじゃない、君は、そのピアノが嫌いになってる」

彼女は、ピアノを弾くことでしか自分を保てていない。それは、苦しい。

「何その無責任の発言」

「じゃあ、なんであの時弾いていた?今日も、俺が来なくても来ても弾いていたはずだ。誰かに助けを求めている」

「助けなんかいらない、誰も理解できない、だって、私は天才ピアニスト」

「違う、嘘をつくな、本当はピアノなんかやめたいと思っている」

「私は、天才だからピアノをやってる、あなたと違って才能がある」

「天才だからなんだよ、才能があるから嫌でもピアノをやるのかよ」

「そうよ、才能があって、天才だからピアノを弾くの。天才じゃなかったら誰も私を見てくれない。天才ピアニストじゃなきゃ誰も私に興味が無い」

「俺は、違う、才能があるから、天才だからって忖度をしない、俺に相談をしろ。

絶対に助ける。今はピアノが楽しくないかもしれない、けど、いつか、心からピアノを楽しめるようにする」

 俺の所に楽譜が飛んでくる。

 彼女は音楽室を出た。

 どこか悲しそうな顔で。

なんで2回しか話したことないのに、相談しろとか、キモイこと言えるだよ俺。

 何してるんだよ。本当に馬鹿だ。彼女の気持ちも分からないのに無責任のことを言った。

 最低だ。自分が嫌いになる。

 けど、確かに助けを求めていた。

 音楽は人を救う効果がある。ただ、作曲家たちはストレスもある。楽しいだけじゃない。

 ピアノもそうだ。天才ピアニスト。生まれながらの天才になっているけど、実際は違う、天才は努力ができてから天才になる。

 しかし、その努力は口で語ることができない。

 周りからの期待。賞賛の嵐。失敗すると批判の嵐。

 あの子最近ダメね。などの聞いてもいないのに勝手に言う人。

 勝手に評価をする。お願いもしてないのに。

 俺はそれが嫌だった。俺は誰のためにピアノをやってるんだろう。

 親のため?友達のため?好きな人のため?

 答えが見つからなかった。

 きっと彼女もそうだ、天才ピアニストという名誉はあまりにも重すぎる。

 100%のパフォーマンスをしなくちゃいけない。

 パフォーマンスがでなきゃ、批判をされる。

 そんなのって、理不尽じゃないか。

 天才だって、人間だ。

 俺は考えていた。彼女の計り知れないストレスを。

 その時足音がした。

 彼女だった。

「やっぱり、助けて」

ブックマークや評価お願いします。モチベに繋がります。お願いします

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ