日記・9月11日(月)
私、高木愛未。ゆーちゃんこと、佐藤夕里子。
ゆーちゃんの彼氏、生田一輝。一輝の友達、武林亮。
この4人で、学校の屋上に来ている。
本当は入っちゃいけないけど、この高校は全体的に緩いので
一回ぐらいなら入っても大丈夫。バレないのだ。
屋上に来たのは、ちゃんと意味がある。
私が集めたから。
「いきなり、集まってもらってありがとう」
「愛未ちゃん、今日はどうしたの??」
「えっと、さっそく本題に入るけど……
ねぇ、一輝、武林、胸が苦しいとかない??」
「え。あ、でも、最近体の調子が……」
「俺も、俺そんなに顔色悪かった?」
ふふっ。動揺してる。面白い。
「うん。大丈夫??無理だったら言ってね」
私がそう言った瞬間、マジックのように一輝が口から血を吐いた。
「きゃあっ」
ゆーちゃんが可愛い悲鳴を上げた。
私は口元が緩んだ。
「一輝!大丈夫か!?」
武林が一輝に駆け寄る。
しかし、武林もこれまたマジックのように倒れ、頭を押さえる。
「痛い」と小さい声で叫ぶように連呼している。
「ねぇ、大丈夫??ふふっ、大丈夫なわけないよね。だって、
今、生死を彷徨ってるんだもん。ねぇ、ゆーちゃんを誑かして
面白かった?楽しいゲームだった?ねぇ、ねぇ、なんか言って?」
微かに一輝の口が動いた。
「え?聞こえなーいっ。あはははははっ……。
そうだ、武林からネタ晴らししてあげようか。
武林にあげたクッキー、食べてくれたんだね!
あの蜂蜜クッキーの蜂蜜はね、イヌサフランっていう
毒を持つ花の密だったんだ。美味しかったでしょ?
ゆーちゃんを誑かすゲームの主催者さん。
他にもやってるんでしょ?こないだ言ってくれたじゃない!」
武林が頭を片手で押えて、もう片手で私の足首を掴もうとするが、
腕が伸びないので掴めない。
「一輝。一輝も同じ。私からのキス嬉しかった?
次のゲームの餌食だもんね。それがまさか自分からくるなんて。
あはははははっっ、あり得ない!!!そこまで馬鹿じゃないわ。
あのキスの感触まだ覚えてる?あれね、私の指よ。
しかも、イヌサフランの密が付いた。
甘ーい、キスだったわね!
しかも、武林と同じく
女の子を誑かすゲームをやってたらしいじゃない!
一輝が実行で、武林が裏方。面白いね。
でも、ゆーちゃんを選んだのは悪かったわね」
一輝は倒れ込んだ。
イヌサフランは、死ぬまで意識のある悪魔の毒。
倒れても、血を吐いても、頭が痛くても
声は聞こえるし、周りは見える。
「あ、解毒薬が一つあったわ。
どちらにあげようかしら、かーみーさーま―の……」
最低な男子二人は必死に足搔く。
「なーんてね。このまま天に召されなさい」
そう言って、解毒薬をゴミ箱へ捨てた。
そして、後ろにいるゆーちゃんの手を引いて
男子二人よりも離れたところ、
地下にのフェンスに移動した。
学校の校庭が見えた。意外と広い。
フェンスは低くて、こんなに低くていいのか。と思った。
ゆーちゃんは……きっと驚いていると思う。
もしかしたら、今の話にショックを受けて泣いてるかも。
「ゆーちゃん、いきなりでごめんね。もう、大丈夫だから」
手で顔を覆ってるゆーちゃん。
「怖かった……。怖かった……」
恐怖と驚きに染まっているゆーちゃん。
「なんてね」
え。ゆーちゃん……?
覆っていた顔の下はキラキラ光る笑顔だった。
「今までありがとう、愛未ちゃん。
貴方は私を立てる脇役として、数十年も頑張った。
でも、人はいつか失敗を犯す愚かな生き物。
私は、悲劇のお姫様でよかったのに。
余計なことをして。残念だわ」
何を言ってるの??
「ど、どう言うこと?」
私は頭が真っ白になった。
「だから、自分の人生だから、
自分がお姫様がいいの。自分が脇役なんて
嫌だわ。でもね、お姫様になるには、
メイドや脇役、王子様に悪い人が必要なの。
やっとそろったのに……。
悲劇のお姫様でも、皆に愛される。
貴方には、わからないと思うけど」
ゆーちゃんは、相変わらずのキラキラした笑顔で
淡々と話した。
そして、一旦私に背を向け、
また私と向き合い、私にキスをしてを私をフェンスから落とした。
グシャ。
私の最後の記憶は、私を屋上から見下ろしている
可愛い幼馴染のキラキラした笑顔だった。




