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死んで転生したら自作最強メイドNPC達と共に異世界攻略やろうとしたらゲームと全く違う世界線でした。  作者: 山田孝彦/ダーヤマ・タカヒコ
第二章 今のあなたに必要な事は仕事をする事でもショタの貞操を守る事でもありません。目の前の仲間を信じなさい。
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第三十二話 貴方の好きなガンスミスは?キャッツかデイヴか……。

 ファミリアの屋敷の隣には森が存在する、そこには洞穴型のアジトが存在しゴブリンが生息していたのだが、山崎春馬が一掃したために、もぬけの殻と化している。ただ今宵は人が大人数と滞在してるようだ。

「全くどうなってるのよ、せっかく例の屋敷を見つけたのに……。今ここで攻めないでいつ攻めるの?」

「あのねぇ婦人。無闇矢鱈に攻めれば良いってもんじゃないです。なんと言っても情報によればここは危険地帯、ガルバルド傭兵団が行方不明になった土地でもあります。そんなど真ん中にデカイ屋敷が存在し生きているのであれば……強敵という概念的見方ができるでしょ?」

 ニュネイの母親によって雇った兵士が申し立てる。

「ここまで来てるの!時間は無限じゃないのよ!」

「何を焦ってるんです?待つのも戦いですよ?」

「私をあまりイライラさせないで!」

「こっちは貴方の言う通り護衛と戦いに勝つ事です。」

「何よ……これだから男は嫌なの。」

「騒がしいぞ。」

 レイガーが瞑想をしていたようで、水を刺された事にご立腹だ。

「大体!あなたがあの時、奴らを倒していればこうはならなかった!嫌よ!こんな薄気味悪い所でずっと……気が狂いそうになるわ!」

「元から気が狂ってるだろ。」

 兵士の一人が間違いない事を話す。

「悪いが相手は強敵だろう。あの男……我を目で追っていた……隣に居た女も只者とは思えん……本当に己の娘を手に入れたいなら周りの言うことを聞け。」

「ムキィイイイイイイイイイイ!!」

 歯を食いしばり頭に血が昇るだけのようだ。

「もう知らないわ!!私一人で行っちゃうもんね!!」

「は?」

 出口まで早歩きで出て行こうとする。

「ちょ、ちょっと待てぇええええええええ!!」

 流石に依頼人が死んでしまっては報酬が手に入らないので全員が後について来た。


 ——その様子を屋敷の監視室でフォスノーラと共に見ていた。

「マジであんな怒り方する人いるんだな……」

「これが、更年期って奴ですか。」

「どうなんだろう……。」

「ともかく、我々も準備を急がせましょう。」

「ああ。」


 屋敷の庭に出ると今回のメンツが揃っている……ノクターンズにヴァリアンズ、そしてヘイムス・ヴィティズの三寮。僕の背後にセンシアがその様子を見ていた。

「敵は現在こちらに向かっている。数は数十名と多い。中にレベルが78と高い奴がいる。量と一体の強敵は厄介になる。そこで、ノクターンズは中央で交戦してる間に両サイドからヴァリアンズとヘイムス・ヴィティズが挟み撃ちをかける事にした。質問はあるか?」

「はいはーい!」

 バーバリティが手を挙げて主張してくる。

「あの、敵は殺しますか?それとも、戦闘不能状態に持っていきますか?」

「さすが、インテリ犬だ。以前と同様、忠告を聞かなければ殺しても良い。もし仮にアッチから逃げるのであれば追う必要はない……。」

 もし逃げて行くなら追う必要はない……その言葉にヘイムス・ヴィティズの面々が気まずそうにする。

「そういう事だ。汚名を返上して見せろ。」

 ヘイムス・ヴィティズの方を見て主張する……以前のような事は決して起こしてはならない。

「はっ……仰せのままに。」

 シックス・アイズが素晴らしい忠誠を見せる……信用してるからな……。

「質問は以上か?」

 周りを見渡し主張をしてくる者はいなかった。

「同時にだが、ソワレ。」

「はい。」

「勝てるのか?」

「……もちろんです。」

 現在、ソワレはダブダブのポンチョコートを来ており顔も隠れて且つ全体像が全く見えない……そして横には細長いアタッシュケースが置いてある。

「今は『対人用刀剣式フォームVer.3』だと思うが、油断するな。必要なら仲間の力を思う存分に頼れ。今回はお前の意思を尊重し危険な目に遭わせる、そのため俺はノクターンズと共に行動する……なので、万が一ヤバくなったら俺が間に入るから……それは許せよ。」

「は。」

 何度言ってもレイガーと戦いたいと聞かなかった……一対一の真剣勝負とか……危なすぎる、なのでノクターンズとして戦ってくれと頼んだ。なんか、変なとこで筋を通したいみたいなんだよな。

 振り返りセンシアの方を見る。

「じゃあ、行ってくる。ニュネイを頼んだぞ。」

「はい、行ってらっしゃいませ。そして、無事を祈ってます。」

「ああ……さぁ、行こう……レベリングの時間だ。」


 ——ニュネイの母親は森の中をうろうろしていた……目的地がどこなのか……サッパリのようで……。

「迷ったわ……。」

「貴方が勝手に迷ってどうするんです?!」

「こういう時は来た道を戻るのよ。」

 振り返ると森が鬱蒼としておりずっと同じ既視感が迫る。

「……もう、分からないわ……。果たして振り返った先が正しいのか……それとも今歩いていた道が本当は戻っていた道なのかどうなのか……」

「めんどくさすぎるだろ!」

「女はめんどくさい生き物なのよ!!」

「シッ!!静かに……。」

 レイガーが何かを感じ取る……周りの兵士に危険だと知らせる。

「敵だ……。」

 出て来たのは僕とノクターンズの面々でありレイガーは何よりソワレに目が行っていた。

「なるほど……お前らは異種族の集まりだったか……通りでただならぬ気配を感じていた訳だ。」

 改めてレイガーのステータスを確認する……今更だが、この能力はある意味チートかもしれない……相手の素性が丸分かりだからね。

 レイガーはヴァリアンズにいるマリブルとステータスが似ているが、速度の分だけ能力が上がるスキルは身につけてないようだ、ただ、索敵能力が異常に高くスキルに『見切り』がある。これは、可能索敵範囲内に敵がいる場合反応の項目が一時的に上がる……FOOは相手の攻撃時にパリィとカウンターが出来るのだが、このスキルはそれらの反撃系の会心率が上がる。そもそもの素体として可能索敵範囲が元から高いキャラクターなのだろう。他にもスキルは沢山あり、このレベルにのし上がるには十分な証拠と言える。

「ソワレ……相手のカウンター系に気をつけろ。」

「任せといて。」


「おバカねぇー!自ら死ににくるなんて……でも、好都合だわ!」

「うわ……なんて、テンプレな……。」

 ニュネイの母親が出てくると、早速フラグを立ち上げた……。

「前に出ないで!ご婦人は早く離れて下さい!」

 私兵は身を固めてきた……だが、ニュネイの母親は逃げようとしない……むしろ観戦するつもりだろうか。

「貴方たちを血祭りにあげるのが楽しみでなりませんわ!」

 無駄だと思うけど忠告しておこう。

「悪いが、血祭りになるのはお前らだ。死にたくないなら、ここから今すぐに立ち去るんだ。」

「見栄なんて張らなくて良いのよ?童貞クソ陰キャなんだから……四つん這いになって私の靴でも舐めなさい!!」

 懐から銃を取り出し上空へ撃つ……中は狼煙になっており、作戦開始の合図だ。

「派手にやれ。」

 ノクターンズに命令する……ソワレ以外が敵に襲い掛かる。

 取巻きどものレベルは30から50とかなり高い……自分の索敵範囲内には見えない所にも潜んでるようだ……そこら辺はヴァリアンズとヘイムス・ヴェティズに任せよう。

 

 ——上空に狼煙を確認する雇われた兵士達……上がった場所は雇い主の所で間違いない……今すぐに駆けつけ守らなければ報酬は無くなる。

「不穏だな……俺達も行こうか。」

「ああ。」

 各々がその方向に歩き出そうとした時だった。

「ちょっと待ちな。」

 出て来たのは異種族のメイド達……武装しており明らかな敵と判断する。

「なんだお前らは?」

 ここは王国……ただ、首都から離れている。居てもおかしくないが侍女として雇う人間が少し変わった奴だと思った。恐らく先頭に立って喋っているオーガが部隊のリーダだというのだけ伝わる。

「私達はヤマザキファミリアがヴァリアンず。戦闘メイド部隊だ。」

「戦闘メイド?面白い事を言う。」

「直ちにここを去らなければ、お前達を断罪する。その覚悟は出来てるのか?」

「……悪いが、オーガぐらい俺達はモノともしない。身体能力が少し高い獣人にエルフ……ハーフもいるのか?赤子の手を捻るに等しい。去るのはお前らの方だ。」

 ここで引く気などない、数では敵が優っている。

「……じゃあ、楽しませてくれるって訳か。」

「お互いにか?だったら良いな?」

 敵が先手を取る……各々が得意な武器を抜きメイド達に襲い掛かる。

「新編成されたヴァリアンズの力を見せつけてやれ!」

 メイド達も武器を用意し戦う体制に入る……。

 先人を切る兵士をまずは戦闘不能にしなければならない……先に手を出したのはマリブルであり、刀で数人スッパリ斬るが何人か斬り漏らしが発生した。

「え?」

 普段であれば上手くいくのに予想外の出来事で驚いた、通り過ぎる敵を振り返る。

 斬り漏らしの原因は体力を削りきれなかったか、反応値が高く運がそこそこいい奴に限る。

「マリブルよそ見しないで!」

 プロファンダーレが警告を出す、マリブルは現在前の敵を疎かにしていた。

「ザ・プロテクトシールド!」

 マリブルの周りに物理攻撃を無効化する魔法を張る、張った頃には矢が複数本魔法陣に阻まれていた。

「ありがとう……プロファンダーレ……。」

 普段無表情のマリブルからは想像出来ないほど落胆していた、己の弱さと思っているようだが、今回に至っては相性が良くなかった……相手がマルクレイブの私兵よりも優れているのが大きな原因であり、何より早さの分だけ他パラメーターが上っても結局は速さに全振りにしてるに変わらない、特に力はレベル30から50の敵相手に何度も斬りつける必要があったのだ。会心率もある程度あるので複数人倒せたのは単に相手の体力が低かったか防御力に優れなかったなど相性の問題がついて回る。

「行け!バーバリティ、ポンテ・モーレ!初仕事だ!」

 カストディーアの指示で二人が素早く前へ……各個撃破を狙う。

「食らえ!衝撃破拳!隼落とし!百烈裂傷!」

 バーバリティは衝撃破拳というもので拳を大きく振ると各個撃破どころか巻き込みながら吹き飛ばす、近づいた敵は隼落としという踵落としに似た奴で挫くと、インテリ犬のインテリ部分が役に立ち、明らかに体力の大きい敵は百烈裂傷という大ダメージかつ数回ダメージの技で圧倒する、明らかに己の精神力やスタミナ、MPを垣間見て攻撃しており賢い立ち回りをしていた。

 

 一方でポンテ・モーレは周りに罠魔法を発動すると、敵は魔法陣に足を吸い込まれその場から身動きが出来なかった。

「暗殺術レベル4……アサシンキル。」

 一人ずつ身動きの取れない敵を刺して回る。

 遠くから矢が飛んできて当たると消える……。

「消えた?!」

 その背後に立つと敵は知らない間に喉を掻っ切られる。

 ポンテ・モーレは盗賊であり、アサシンであるオロチや上忍であるロンガと少し毛色が似てはいるため素早さやに秀でており同時に器用さやも高く会心率が高い傾向にある。ただし違いを設けるなら覚えられる技が多い事が強みだ。上忍は魔法ではなく忍術を覚えるが、似てる技こそあれど忍術に限られてしまう。アサシンは魔法こそ覚えられるがアサシン専用の魔法に限られると同時に技も同様だ。だが、盗賊は先ほどのように暗殺術を覚えたりとバリエーションが広い。もちろん、盗賊にもそれ専用の技も存在するが、他の職と違いそれ以上強力な魔法や技が覚えられないのが弱みでもある。いわゆる器用貧乏枠になるが、この職業を愛するFOOプレイヤーも存在する。


「グルージャ……いよいよ、大詰めだ。全ステータスアップを私とマリブル、バーバリティにかけてくれ。」

「はい。」

「プロファンダーレとポンテ・モーレはグルージャの護衛に回れ!私達で攻撃する!」

 敵の数は少なくなり、畳み掛けを行う。彼女達は怪我をする事なく、そのまま奥へ行きノクターンズと合流を図った。

 

 ——次にヘイムス・ヴィティズだが、既に敵と対峙していた。

 圧倒的戦力を有してるためにヘイムス・ヴェティズから攻撃はしなかった。それに、以前の件もある……あっちから攻撃しない限り手は出さないようにする。

「雑魚ばっか……お話にならないわね。」

 シックス・アイズは周りを見渡して敵の数を数える。

「このバケモンが……。」

「それは、嬉しいわ。私達はご主人に意図的にバケモノとして作られてるから……それ以上の褒め言葉はないわね……ただ、最近冷たいし……。」

 急に感傷に浸り始める……敵から見れば感情がコロコロ変わるヤバいやつにも見える。

「はぁ……もう、疲れたわ。やる気が出ない……。」

「食らえ!バケモンが!」

 敵は槍を投擲すると俯いたままでも手で槍をキャッチする。

「そうだ……大戦果を挙げれば……褒めてもらえるのでは?」

 急に何を思ったのか平常に戻った。相手が攻撃したので戦闘を……そこから何かに直結したようだ。

「皆んな!私が一人で敵を片付けるわ!」

「え?!」

 メンバーがシックス・アイズを見る。

「なんだって急に……どうしたのだ?」

 メラニアが隣で質問を投げる、急な発言に理解が出来ていなかった。

「ふふん……私が活躍すれば、きっと前みたいに大好きになってくれるわ……。だから、手柄を譲りなさい。」

「えぇ……まぁ、それは構わんが。」

 大好きだったかは置いといて、今のシックス・アイズはメンタルが少し低い……ならばやりたいようにさせるのが得策だとメラニアは考えた。

 

「戦闘形体へ変態する。」

 シックス・アイズは奇蟲人であり、その種族のスキルもとい仕様がある。それが『戦闘変態』だ。キャラクリ時点で通常時と戦闘時で分ける事ができ、戦闘時はパラメータが飛躍的に向上する。ただ、これにも欠点が存在し時間経過で精神力とスタミナが減少していく、これらがゼロになった瞬間元の姿になると同時に精神力とスタミナもゼロのままだ、おまけに全ステータスが一時的に減少し状態異常に疲労が追加される。もしも、敵陣の真ん中で変身が解けた場合は絶体絶命のピンチになってしまう。そもそも、シックス・アイズ自体が素の状態でかなり強いため本人はあまり使わない。

「ハァ……ハァ……今すぐに手柄を……ぐへへ……いっぱい褒めてもらえたら……あんなことやこんなことを……。」

 背面から突起のような物が出てきて服を突き破る……羽が飛び出し、鎌形の腕が2本飛び出すと普通の外骨格の人間の腕と合わせて計4本になる。下顎は縦に割れ舌が垂れる……ヨダレが下に垂れると地面から酸煙が発生する。女性の乳房が露出してるがそんなのは目に入らない……なぜなら肋が飛び出し計16本の鋭利な武器が若干動いているのだ。

 そして、羽で飛び上がると月の光に照らされその全貌が顕になる。

「「うわああああああああああああ!!」」

 それは、本物の化け物を見たかのように敵は全速力で逃げ出したのだ。


「エッ?」

 敵が逃げたと確認しすぐに降りた。

「すごいですわ〜!!流石、私達の寮長!!戦わずにして勝つなんて、ご主人様も大喜びですわ!!」

 ドロシーが賞賛の声を贈るのだが、本人は戦う気しか無かったので、思ってたの違く肩透かしを喰らったようだ。

「アア……アリガトウ……。(人の口で無い為上手く喋れない。)」

「スゴイ、シックス・アイズがリョウチョウでヨカッタ……。」

 同じくリン・インナットも褒めてくれた。

「アア……ウン……。」

「へぇー相手が逃げるだけでも経験値が貯まる……FOOとは違うのね。」

 オロチが素晴らしい発見をするが、そんなのはどうでも良い。

「ソ……ソウナンダ……。」

「だが、その姿……いつになったら元に戻るんだ?」

 メラニアが問題を提示する、ずっとこのままという訳にはいかない。

「時間経過デス……。」

「……とりあえず、合流するか……。」


 ——両サイドの敵が壊滅した頃、ノクターンズも丁度敵を殲滅していた。例の男以外は……。

「ど、どうなってるの……。」

 有り得ない出来事にニュネイの母親は驚きと自分の身に迫る危険を感じるしか出来なかった。

「挟んで落とすまでも無かったか……。」

 ノクターンズは意外と戦える……警備専門だが、その戦闘能力は折り紙付きだ。

「今すぐ、そこから離れろ。我が相手する。」

 レイガーが振り向いた時には既に逃げていた。

「……素早さだけは一人前か……。」

 恐らく、ニュネイの母親は隠密に長けている……レイガーの索敵能力は強いはずだが、感じ取れなかった。これはニュネイ本人のスキルと同じだ。恐らく親から子へスキルを引き継ぐのだろう。

「見失うと厄介だ……追いかける。ここは任せたぞ。くれぐれも怪我は……」

「心配しすぎ……私達を信じてよ。」

「……だな、任せたぞ。」

 ハルマは逃げた方向へ足を走らせた。

「さて、死あうか。せっかくだ、皆まとめてかかってくるが良い。所詮は勝負でありイチゼロ概念でしかない。勝つか負けるか、生きるか死ぬかの概念……。欲を言えば私は負けを求めている、折角会えた強者への喜び……今、ここで味合わせずして何になる……。」

「後悔しても知らぬぞ?」

 ソワレは意味深に忠告する……ノクターンズ対レイガーの戦いになるからだ。勝負は見えていると言っている。

「ほう……後悔という言葉を使うか……今の高揚にそのセリフは失礼だぞ……。」

「ならば、体験するが良い。」

 ソワレはブカブカのポンチョを脱いで投げ捨てると、この世界の人間には理解し難い姿をしていた……。

「……それは、一体?だが、面白い。」

『メインシステム作動……ターゲットインストール……ロックオン、敵1……距離表示……戦闘を開始して下さい。』

 電子音が鳴ると、ソワレの周りに電磁波がビリビリと漂い始める。ソワレの四肢はサイボーグというべきか某どこぞの強化外骨格というべきか近未来すぎるものだ。全体的に黒く腕は擬似的な筋繊維であるカーボン繊維が使われており、人間の筋繊維よりも細く幾度と絡ませ強度を上げてある、それを包むのはハニカム構造を採用した外部装甲であり、アダマンタイトが使われている。足も同様だが、踵部分がヒールのようになっており、そこだけ異質にも思える。左太ももに申し訳程度のガンホルスター、腰にはテールビームソードが装備されていて尻尾がぶら下がっていた。本体である体は薄型のパワードスーツ……ぴちぴちのボンテージにも見え引き締まった体のラインが強調されるが筋肉の収縮が可能になっており四肢の行き過ぎたパワーについていける役目になっている。最後に頭部分で一見すれば近未来なヘッドギアだが、おでこ部分にVRゴーグルのような物がついている。頭頂部から後部は露出しており、重さを軽減している。

 アタッシュケースを持つと中から磁気を帯びた近未来な刀が飛び出す、右手に持ちアタッシュケースを捨てると構え始める。

 VRゴーグルが下がると、『ピピ』と音が鳴る……ゴーグルの細い線のカメラ部分が赤く光るとソワレの目の前にはレイガーがロックオンされており、自分からの距離が表示される、左上にはバッテリーの表示に右上は正面から見た人の図面が出ていた。左下はレーダーであり近くの敵を表示する。

「待たせたな。」

「ああ。」

 レイガーが両腰から刀を抜き二刀流の構えをとる、左手に持った刀は肩の上に置き右手の刀は相手へ向ける。足は少し開き、踏み込みと踏ん張りを両立させてるようだ。

「気合いは良し……まとめてかかってこい!!」

 その瞬間、ソワレは飛び出すように出ていく……高く飛び上がり振りかぶる刀はレイガーの頭上に降りる。

「甘いわ!!」

 右刀で振り払い、左手でカウンターを繰り出すとソワレは空中の状態のため身動きは取れないが腰につけたビームテールを起動し前方に回転するとレイガーは斬るのをやめて後退りを開始する……避ける事に成功すると続いてソワレは地面へ——ヤモリのように着地すると足の部分が膨張し凄まじい瞬発力でレイガーの懐へ入る……。

「なんと?!」

 懐に入った瞬間、ソワレは刀を逆手持ちに切り替えるとレイガーの脇腹に切れ込みを入れた。

「面白いぞ!!」

 ダメージに喜ぶレイガー……その様子だとまともなダメージではないようで、血も出てない。

 この状態は危険であり、相手はよろけていないという事だ。

 レイガーの攻撃が来た瞬間、左太ももにあるガンホルスターに手を伸ばす取り出したのはCZ-75が出てくる……近距離で発射されるとレイガーはさらに後退、弾を両手に持った刀で弾き、牽制した事ができれば当然ソワレは距離を置いた。


 そして、お互いの緊張と状況がリセットされる……。

「いいぞ……素晴らしい……この高揚感……久しぶりだ……。」

「だったら、もっと楽しませてやるって。」

 その瞬間、レイガーの前にソワレがたくさん出てくる……分身したような奇妙な感覚……。

「幻影か……そういえば淫魔がいたな……。」

 この状況でも冷静でいられる……サマニアの仕業だと分かれば対処のしようがいくらでもあるという事だ。

 ソワレに夢中になっている間ノクターンズの面々は姿を消していたがレイガーは気配だけ感じ取れている。

 レイガーの背後にサマニアが現れる。鎌を持っており首のあたりに差し掛かる……。

「来たな……。」

 予感が的中したようで首を屠られる前に素早く後ろを振り向き刀を回し斬る。

 斬れると思ったが、サマニアに刀が触れた瞬間煙となって消えた。つまり幻影であり騙された。サマニアはマスターテンプテーションズ……魅了系の色仕掛けなど得意としてるが、相手の精神力が異常に高いため無難に幻影系を選んだ。精神力が一定の値になれば効きはするかもしれないが、もし心そそるものが女性以外であれば効果は望めないかもしれない。

「……どこだ?」

 消えたサマニアを警戒すると突然、背後から即死魔法を喰らう……だが、効かなかった。

「は?」

 ヤミコは驚き声が出る……普通なら効くはずだからだ。

「なんだ、貴様は?」

 ヤミコは急いで地面へ溶け込むとヌッと顔を出した、レイガーはその存在に気づくと影系のモンスターであると認知する、つまり物理は効かない。考える前に手が動いた。

「照らしてやる。」

 レイガーが上空に手をやると炎が出る……恐らくそれを周囲に撒きヤミコを倒し他に紛れている敵を炙り出そうとしているが。その手めがけてクナイが飛んできた……二つ刺さると少しだけダメージが蓄積される。

「東洋の武器か……それも私が気づかないほどの隠密能力を有しているとは……」

 突然のダメージ驚いていると両側からソワレとロンガが飛び出す……ソワレの攻撃を刀で凌ぎを削り一方のロンガの腹に刀を突き刺した……ロンガの隠密能力だけ警戒していた為に倒す事に成功するがその正体は死んだ味方でありロンガは変わり身の術を使ったに過ぎなかった。

「一本……こちらが取られるとは……。」

 そして凌ぎを削っていたソワレの刀を振り払うと、ソワレは振り払われた勢いで上手く地面へ倒れると思いきや間髪入れずに蹴りを披露した。左頬を狙っていたようで左腕でガードする。思ったよりも衝撃が強くよろけてしまう。そうしてる内にソワレの刀はいつの間に上空へ投げており降ってくる頃にはブレイクダンスのフリーズの状態になっていた。刀を右足でキャッチ……足底が曲がるようになっておりヒールの部分で固定する。そこから、ウィンドスピンとバックスピンを決めると刀とテールビームソードが円を描き攻撃する、レイガーはよろけた状態だったためにそれらを刀である程度は防げてもダメージを受ける……。

 最後にブレイクダンス状態から両腕に力をためて膨張させると高く飛びレイガーの真上へ……。足に持っていた刀をレイガーに向け刺突の状態へ……そしてあたかもライダーキックのようなポーズを……。

「食らえ!!イナズマー……」

「これ、ご主人だったらどうツッコムんだろう?」

「さぁ?」

 そんなあたかもなポーズを見ながらロンガとヤミコは話してた。


「そう来たか……。」

 上空にいるソワレを確認し刀を十字の状態に持っていく……明らかに受け止める気だった。

 文字通りイナズマなキックは磁気を帯びてレイガーへ降っていく……すると、フォスノーラが用意していたのかレイガーの足元に大きな魔法陣が……。

「トラップか……。」

 レイガーは物理的な気配は感じ取れるが、魔法は感じ取れない……そこが唯一の弱点と言える。

 ソワレが着弾した瞬間大爆発が起きた、レイガーの居た地点は大きなクレータが形成されていた。

 

「タアアアアアアアア!!」

 爆炎の中からソワレが上空に飛んで出てきた……彼女は球体に覆われており魔法の類で爆発から守られていた。

「あ、あぶねー。」

 ヤミコが冷や汗をかいた。

「ごめんて……。」

 謝るフォスノーラ。

 思いの外威力が高く、ヤミコが自分とメンバーに防御魔法を放った。

「とう!!」

 ソワレが華麗に着地する。

 

 これだけやればどんな強敵といえど倒せるはず……と思ったが。

「はぁ……はぁ……ここまでやるか……バケモノだな。」

「いや、お前だろ。」

 ヤミコが思わず口にだす、そもそもこの世界において規格外なメイドを相手してるのにHPが四割ほどしか削れていないのはおかしい。

 だが、一つ分かったことがあり、黒装束が燃えて中の装備が顕になる……それは虫の外骨格のような赤い鎧だった。弱点対策としてその装備は魔法に対する耐性があったと同時に刃物系はダメージが通りにくかったと考えられる。それらを踏まえればやる事はただ一つ。


「フォスノーラ、私にバフをかけて。力を重視したバフをお願い。」

 ソワレは刀を捨てる。

「ええ、任せて。」

 力がみなぎる……そして、装備もとい対人用に換装した四肢はゴリゴリに膨れ上がる。

「オラああああああああああ!!」

 ソワレは走り出す……精一杯をぶつける為に。

「さぁ……来い!これが最後の……」

 レイガーも走り出そうとした瞬間足元に違和感があった。

「何?!」

 走り出せない……というのも。

「悪いけど、サンドバックになってくんね?お前強すぎるんよ。」

 足にヤミコが絡みついて動けない……疲労もあり完全に動けなかった。

「ちょっとまっ……うヴぉおアアアアアアアアアーああ!!」

 巨大な拳が襲いかかる……それは拳というにはあまりにも大きすぎた……大きく……ぶ厚く……重く……そして大雑把すぎた。

「私はオタクだぁアアアアアアアアア!!そこらのメイドとは鍛え方が違ああああああうぅ!!緒にされちゃ困るなぁ?!私がその気になれば『オカダト○オ』だってぶっ飛ばせる!!SFオタク女子を舐めんじゃねぇええええええ!!」

「お前が敵側に回るのか……(困惑)」

 フォスノーラが困惑した……そもそも、言ってる事が支離滅裂なのでメンバー全員が困惑している。

「何が愛国心だ!!何が聖王国の誇りだ!!」

「いや、別に……ゴバああああああ!!」

 間髪入れずに殴りまくる……彼の言葉を代弁するなら別に愛国心は無いと言いたいらしい。

「そんなものは豚に食わせろおおおおおおおお!!」

 そして最後の一髪を顔面にめり込ませると遠くへ吹っ飛んでいった……。どれぐらい飛んだだろう……生きてるとして国境は間違いなく超えている。

「覚悟完了……。」

「いや……それ戦う前……。」

 ハルマの代わりにフォスノーラがツッコミを入れる。監視してるだけあって何を言うのか把握してるらしい。

 

 結局の所、ソワレにレベルの概念は通用しない。彼女の換装次第で毛色も強さも変わるし彼女自身がアクトレスとして役に入る事でパラメーターは劇的に上がる。性格のオタクも合わせれば……その強さはシステムなんて概念など意味を為さない。まぁ……オタクというかネットに汚染されてるというか、だとしても明るいオタクはいつだって強い。

 

 第三十三話へ続く……。

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