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ロボ娘のち少女、ときどきゾンビ  作者: 京衛武百十
新世界の章
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認めるしか

「いや、実に興味深い結果だよ。同じ処置を施したイニティウムの<メイトギア人間>らと比べても格段に顕著な違いが現れている。私は今、とても爽快な気分だ!」


博士と面会する前、もしかしたらがっかりさせてしまうんじゃないかと不安になっていたのが嘘のように、博士ははしゃいでいた。


そういう人なのは分かっていたし、がっかりさせなかったのはいいけれど、さすがに苦笑いが浮かんでしまう。見れば、リリア・ツヴァイもそうだった。彼女が苦笑いを浮かべずにいられない状態だったから、私もそうなったんだろうな。


ただ、それでも、博士が喜んでくれたことについては、素直に嬉しかった。


そう、『嬉しい』んだ。ロボットには本来ない筈の感覚。


事ここに至って、私はもう認めるしかなかった。自分の中に、<心>とは言えないかもしれないけれど、極めてそれに近い何かが生じていることは。


私の場合は、リリア・ツヴァイの存在があってこそのものだから、単純に『AIを搭載したロボットに<心>が生じた』とは言えないと思う。だけど、『感情を表現しうる肉体を有すれば、人工知能にも<心>が生じうる可能性がある』ことは示されたんじゃないだろうか。


博士は言う。


「全身義体が人間の心理に少なくない影響を与えることが確認されたことで、かねてからその可能性は指摘されていたのだ。感情を増幅させる肉体の有無こそが、<心>というものには必須なのではないかということが。


今回の事例だけで断定することはできないが、他のメイトギア人間らにもそれを窺わせる兆候は見られている。私に反発する者も出始めているからな。


私はこれを予測して、肉体の反応までをも再現する為に、私自身を移し替える人工知能の性能に拘った。故にあれほどの大型になってしまったが、肉体の反応の再現を効率的に行うことによって小型化の目処が得られるだろう。これも君達のおかげだよ! 感謝する!」


この人は、本当に相変わらずだな。自分の研究したいことに対してはどこまでも貪欲で正直だ。


確かに、自らをCLS感染の実験台に使ってCLSに感染させて死亡して、人工頭脳が本体となってからは、その<狂気>の度合いが僅かに薄まって、それが私に『アリスマリア・ハーガン・メルシュ博士は死んだ』と認識させる原因の一つにはなったけど、それでもそういう部分の変化は本当に微々たるものだった。人間だって、経験を積むことによって僅かずつではあっても変化していく。


今にして思えば、その程度の変化だったのかもしれないな。



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