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ロボ娘のち少女、ときどきゾンビ  作者: 京衛武百十
新世界の章
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辛辣

博士は狂人だ。


真っ当な精神を持った人間なら、いくら<動く死体>になってるとはいえ、その頭蓋内には既に人間の脳はないとはいえ、CLS患者の頭蓋を切開し、そこにあった器官を取り出し、代わりに人工脳を埋め込むなんてことができるはずがない。


なのに、博士はとても優しかった。たとえそれが、単に自分の実験の結果が出たことに喜んでるだけだとしても、優しかった。


「いやはや、ここまでとは、私も予測はしていなかったよ。特にリリアテレサ。君は私のカスタマイズを完全に離脱してしまっているね」


ソファーに座り、その左右に私とリリア・ツヴァイを座らせて、博士は嬉しそうに言った。


「君ももちろん、自らの変化を自覚しているね?」


私への問い掛けだった。


「はい。特に意識はしていませんでしたが、かなり早い段階からそのようになっていたと思います」


正直に応えた。博士が行った、『主人に対しても辛辣に振る舞う』というカスタマイズは、そのように振る舞うべき主人を失ったという認識の為か、早々になりを潜めてしまってた。


だけど、『主人を亡くした』だけなら、ここまで急激に変化はしない。変わってしまうことはロボットにとっては好ましいことじゃないから。でも、私の場合は、リリア・ツヴァイの存在が原因として挙げられると思う。


彼女の肉体の反応が私にも分かるから、相手に対して辛辣に振る舞うことが好ましいことかどうか、私の態度に対する彼女の肉体の反応から察せられてしまったし。


リリア・ツヴァイはそれほど気にしていなかった筈だけど、私が辛辣な態度をとる度に僅かに委縮するような反応があったから、しかもそれが私自身の体の反応のように感じられてしまうから、それが好ましいことじゃないと分かってしまって、次第にそういう振る舞いを避けるようになってしまったんだと思う。


それは、博士からはまったく感じられないものだった。博士は本当に、私が罵ることを楽しんでたんだと分かる。


でも、博士以外の多くの人はそうじゃないんだよね。けれど、分かっていても博士がそう望んだから、主人にそう望まれたから、ロボットである私は本来ならそうあり続けようとする筈だった。


なのに、人間の肉体を持つリリア・ツヴァイとリンクしていることで、まるで私自身が辛辣な物言いをされているかのような状態になっていたんだと思う。普通は好ましくないことだって、博士が特殊なんだって実感できてしまったんだ。


そういうのもあって、私は自分に施されたカスタマイズを放棄することになったんだろうな。



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