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ロボ娘のち少女、ときどきゾンビ  作者: 京衛武百十
新世界の章
104/115

町長

「おかえりなさい。リリアテレサ。リリア・ツヴァイ」


トニーに案内されて私達が来たのは、<イニティウムタウン>町長、フィリス・フォーマリティの自宅兼官邸だった。


「ご無沙汰しています」


私達が去った頃にも町長だった彼女にそう挨拶した私に、フィリスは少し驚いたような表情になり、言った。


「かなり雰囲気が変わったわね」


彼女の言うとおりだった。メルシュ博士の下を去った頃の私は、辛辣な物言いが身上の、メイトギアとしてはかなり異端と言えるそれだったのが、すっかり角が取れてある意味では<普通>になっていたからだ。


「博士と離れていたことで、独自の成長をしたということかしら?」


その指摘に、私も、


「そうですね。おっしゃる通りだと思います」


と丁寧に返す。


すると今度はリリア・ツヴァイが、


「博士は元気にしていますか?」


と、こちらも、感情表現に乏しく淡々とした様子だったそれがすっかり人間の子供らしくなり、明るくなっている。


その変化についても、フィリスは感心したようだった。


「私も自分が変わったことは自覚していますが、あなたも相当ですね」


彼女がそう言ったのには、訳がある。実は、<イニティウムタウン>町長フィリス・フォーマリティも、リリア・ツヴァイと同じく、CLS患者の体を利用し、その頭蓋内に人口脳を備えた<メイトギア人間>だったからだ。彼女の傍らに控えるメイトギア、フィリスEK300が彼女の<本体>、つまりリリア・ツヴァイにとっての私のような存在だった。


リリア・ツヴァイが人間のようになっていったのと同じく、フィリスも人間のように振る舞うことができるようになっていたんだ。


「にひひ~っ♡」


フィリスに驚いてもらえたことが嬉しくて、リリア・ツヴァイは悪戯っぽく笑った。


そんな彼女に、フィリスが応える。


「博士は今でもお元気ですよ。会ってみますか?」


そう問い掛けられて、私達は「もちろん」と応えた。


なのでフィリスは、自動車(ワゴン)を手配してくれた。イニティウムからメルシュ博士の研究施設までは数キロ離れているからだ。それを歩いて移動していたのでは少々時間が勿体ない。今回のことは私達にとっては里帰りのようなものであり、旅とは関係ないし。


「お久しぶりです」


ワゴンの運転をしていたのは、私と同じく博士が所有していたメイトギアの一体で、イニティウム建設にも関わった機体だ。


そして私達は、博士の研究施設へと向かった。


ロボットにとって十数年程度の時間の経過は大したものじゃないけど、それでも何となく不可解な負荷がメインフレームにかかるのを感じていた。たぶん、人間の言う<緊張>のようなものなんだろうな。



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