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ロボ娘のち少女、ときどきゾンビ  作者: 京衛武百十
新世界の章
103/115

イニティウム

イニティウムは、正式には<イニティウムタウン>という。<始まりの町>という意味合いで付けられたものだ。


それを取り囲む<塀>は、CLS患者から中の人間を守る為のものとして、最初の建設段階から設計として組み込まれてたものだった。五メートルもの高さと頑強さは、大型のCLS患畜の襲撃を想定したものだ。


実際、人間が食肉用の家畜として持ち込んだバッファローがCLS患畜化し、群れでメイトギアを襲撃したという事例も確認されている。


本来は群れるということのないCLS患畜だけど、元々多数が同じ場所で暮らしていた事例などでは、全てが同じような行動をすることで結果として群れのように振る舞うんだ。するとその圧力は、バスやトラックをバリケードとして用いても突破されるほどのものだった。


となると当然、それに対する備えも強固なものが必要になってくるというわけだ。


ちなみに、メイトギアはCLS患者や患畜の襲撃を受けてもさほど問題もないので、塀の外での作業については全てメイトギアとレイバーギアとトニー達で賄われているということだった。


その辺りの体制は、私とリリア・ツヴァイがまだ博士の傍にいた頃から基本は変わってない。トニー達が加わっただけだ。


ここまで通信したメイトギアは全て私達が去った後に合流したメイトギアらしく誰も私達を知らなかった。


だけど同時に、さすがにイニティウムで働いてるだけあって、誰もリリア・ツヴァイのことを不思議がったりもしなかった。


当然か。なにしろイニティウムには、彼女と同じ、<人間の体を使ったロボット>である、<メイトギア人間>が数多く存在するはずだから。


私達が近付くと、ゲートが自動的に開いて迎え入れてくれた。


「これは」


中を見た途端、私は声をあげてしまった。なにしろ、私が知っているそれよりもずっと大きく、町らしくなっていたのだから。


私が知るそれは、大型商業施設跡地を取り囲むように、他の場所にあった住宅などを移築しただけの、<町>とは名ばかりのただの集落に毛が生えた程度のものだったから。


「すごいね。ちゃんと町になってる」


リリア・ツヴァイも見たままの印象を口にした。そうとしか言いようがなかった。


少なく見積もっても広さはかつての三倍はある。建物も増えて道には<人々>が行き交い、豊富な商品を並べた商店も建ち並んでいた。すでにそれは、町以外の何物でもない。


町並みそのものは二十世紀以前のそれに似ていて、自動車などは走っていない代わりに、トニー達が荷物を体の上に載せたり、リアカーを牽いたりしていたのだった。



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