とある令嬢の話
えっ?タイトルの回文は何処に行ったって?
……彼(彼女?)は氏んだよ。いい奴だった。
普段とは少し違います。
グランツ家の令嬢。それが私が生まれ持ってきた地位でした。
私は、幼い頃から厳しい教育を施され「家の恥とならぬよう」と常に言われ続けました。
私自身、それに納得していました。
一生、家のために生きるものだと思っていました———
ーーーーーーーーーーーーーーー
これはまだ、幼稚園に通っていたときのことでした。
幼稚園の端で、いつも蹲っている少女がいました。
その子は、いじめられていたわけでは、ありません。
別に、嫌われていたわけでも、ありません。
その子は、忘れられやすかった。
いえ、それは正確ではありません。
その子のことを、誰も、覚えられなかったのです。
仲良くなった子にも、少し目を離しただけで顔を忘れられてしまいました。
先生も、名前を呼ぼうとして、いつも困っていました。
しかし、私だけは違いました。
私は、この頃から人並み外れた記憶力と、観察力があったのです。
それから、私は、その子の事をみーちゃんと呼び、いつも一緒に遊んでいました。
そしてある日。
私は、みーちゃんが男の子であることを知りました。
当時の私にとって、それは世界がひっくり返るほどの衝撃でした。
みーちゃんは、みーちゃんではなく、みーくんだったのです。
ですが、それで私たちの関係が変わることはありませんでした。
私は相変わらず彼と遊び続けましたし、彼も相変わらず私と遊んでくれました。
そして、気づけば卒園の日になっていました。
幼稚園を卒業する時、私はたくさん泣いたのを覚えています。
私は、令嬢としてレベルの高い小学校へ行かなければなりませんでした。
あのときはまだ、優しかったお父様に初めて買ってもらった、新品のスマホで、
彼と連絡先を交換しました。
彼の名前は、未だ家族しか入っていない私の連絡先の、一番上を彩っています。
……まぁ、連絡したことも、されたことも、一度もないですが。
そして、それから数年後。
私はとあるゲームと出会いました。
『極道レジェンドVII』
これは、不良の主人公、九鬼 龍司様が、仲間を集めながら街の裏社会を生き抜き、
とある事件の真相に辿り着くために戦う。というゲームです。
私はこのゲームをプレイして、体中に電撃が走りました。
龍司様は正しかったのです。
決して力任せに戦わず、常に相手の裏をかき続けました。
目的のためには容赦せず、勝てない敵には挑みませんでした。
それでも、龍司は仲間のことは決して裏切りません。
まさに、人間の鏡だと私は思いました。
このゲームは、私のこの後の人生を文字通り、大きく変えたのです。
それからしばらく経った頃。
私は、家、いえ、お母様の事情で、風田高校に通うことになりました。
この学校は、決して私のような地位のものが来るような場所では、ありませんでした。
しかし、私はそれほど苦には感じませんでした。
むしろ、嬉しかったのかも、しれません。
この頃の私は呑気にも、不良高に行けるなんて、なんて楽しみなんでしょう。
なんて、そんなことを思っていました。
———少し重い話注意———
私が住んでいる沖縄では、今日(6/23)は、慰霊の日です。
第二次作戦では、地上戦が行われた沖縄以外でもたくさんの方が亡くなりましたが、沖縄は唯一、軍人よりも民間人の死者が多かったとされます。
この作品を読んだ皆様も、過去に亡くなられた方と、今、平和に小説を読めることに感謝し、
黙祷をしていたたげると嬉しいです。10秒でも、5秒でも構いません。お願いします。
(-人-〃)




