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SNSに思いをぶつけたら奇想天外な人生を歩むことになりました  作者:


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2/16

始まりはSNSから 1

 逮捕されて即日裁判が行われ収監されたのが土曜日、その二日前の木曜日に時間は遡る。


 オルダヤという国に住む一七歳の高校生のミッドハット・ホールは、交際しているシュゼット・グラハムを家に招いていた。ハットの一八歳の誕生日を前にして両親に彼女を紹介するためです。


 なぜ木曜日を選んだのかと言うと、ハットが暮らすオルダヤという国では週休三日が定着していて、企業や役所そして学校などは金曜日から日曜日までがお休み。木曜日の夜ならば翌日はみんなお休みだから都合が良いのです。ちなみにオルダヤでは祝祭日というものがなく、三連休以上はありません。


 ハットの母の手料理をいただきながら和やかに時間が過ぎていきます。シュゼットもハットの両親が気さくで話しやすいのか、にこやかな笑顔を作って会話を楽しんでいました。


「ところでシュゼットの自宅はどのあたりなんだい?」


 ハットの父がシュゼットに自宅の場所を尋ねました。


「はい、私の自宅は一〇三、五三、二九、二一三です」


「五三ということは、ご両親はどこか民間会社にお勤めされているのか、お店を経営されているのかな?」


「はい、両親は電子機器の販売や修理のお店をしています。企業として認められるように両親は働いています」


 オルダヤでは住所はずいぶん昔にコード番号の表示に改められています。国中の住所をコード番号に置き換えることで自治管理が簡素化できその費用も安くなるというのが理由です。


 ハットやシュゼットの自宅は都道府県に相当する部分は一七、市と区に相当する部分が一〇三、以下は昔で言う街区を現していて、ハットの自宅は二六です。五三の地区には第八ランクに区分される一般企業で働く管理職以外の人と個人経営のお店を営んでいる方が住んでおり、二六の地区には第四ランクの下級国家公務員が住んでいて、ハットの両親は教壇に立っています。




 父や母もシュゼットを気に入ってくれたようで、二時間ほど食事をしながら四人で会話を楽しむことができた。夜遅いこともありハットはシュゼットを家の前まで送り届けたのですが、


「ハット、私の父も母も死に物狂いで働いているから、きっと企業として認められて第七ランクに上がれるから……。ハット、ごめんね、下級家庭で……」


 それだけ言い残すとシュゼットは無言で、まるで逃げるように家に駆け込んだ。




 シュゼットがなぜ謝ってきたのかがわからないハットは、家に帰ると父と母にシュゼットの様子を話した。すると父がハットに言い聞かせるように、


「シュゼットのお宅は第八ランクなんだ。この国ではランクが三以上離れている場合は結婚も同棲も認められないいんだ」


 言われている意味が理解できないハットは、


「婚姻届けを送信すればそれで結婚はできるんだよね、同棲だったら勝手に住んじゃえばいいんだし」


「いいや、この国では自由に結婚も同棲もできないんだ。ランクによって住める地域の制限があるから、たとえ同棲でもすぐに摘発されてしまうんだ」


「そうよ、ハット。三ランク以上離れたカップルが婚姻届けを送信すると、その瞬間に身分隠匿や身分偽証で捕まるのよ。学校では教えていないけど常識として知っておかなきゃいけないわよ」


 ハットは父と母からシュゼットとの結婚はおろか、同棲もできないという現実を突き付けられた。


 そして父が、


「なあ、ハット。学校では教師も口には出せないが、この国を支配する国家洗浄党(こっかせんじょうとう)が悪いんだよ」


「洗浄党? でも洗浄党の方針に狂喜乱舞する人たちのほうが多いんじゃないの?」


「みんな本質を見抜けず、何だか良い事を言っているような錯覚を覚えて支持しているのか、支持しているふりをしないと周りから変な目で見られるから仕方がなく、という人たちばかりさ」


 国家洗浄党(nation cleansing party)

 本当は国家浄化党と名乗りたかったが、国民を浄化したいという本質を隠したいがために洗浄党と名乗っている。元は一地方の小さな政党で、その地域だけで人気を博し一気にのし上がってきた。


 なぜ国民すべてをランク付けという格差国家を構築しても支持者が減らないのか。税金は所得税のみ、年金は廃止しこれまでに納めた保険料は全額返還、定年などでリタイア後は国がチケット制による最低限の生活保障、少年法の廃止と犯罪の厳罰化、外国人にも自国民と同じ権利や義務を認める反面自国民以上に厳しい罰があるなど、表向きは自由で住みやすい国を構築したからだ。


 その後も父に洗浄党と祖国オルダヤのことを細かく聞いたハット。


「父さん、どうして学校では洗浄党のことやこれまでの歴史を教えないの?」


「教えたくとも教えられないんだよ。少しでも洗浄党にとって不都合な事を生徒に教えれば、それだけで政治犯として収容されるんだ。たくさんの先生方が教壇を追われて収監しているんだよ」




 部屋に戻りベッドに横になったが、寝付けないハット。スマホを片手にSNSに思いの丈をぶつけた。


〝今のような格差社会は絶対に容認できない〟


〝人を勝手にランク付けし、住む場所や結婚を制限するのはおかしい〟


〝洗浄党が支配する今の世の中は本当に(いびつ)で絶対におかしい〟


 このようなことを次々に書き込み、レスポンスに対しても次々にやや過激な返信を行い、やがて洗浄党幹部への非難まで書き込んでいった。


〝洗浄党のメンバーはみんな二面性があり信用できない〟


〝屁理屈で筋の通らないことを合法化している〟


〝洗浄党の議員たちは不正を働いて多額の税金や保険料などを誤魔化すくせに、一般人が少しでも申告を忘れたらそれだけで処刑ってどういうこと? 議員たちも同じように処刑されるべきだ〟


〝そもそも公務そっちのけでテレビに出まくりタレントたちによいしょされながら、おかしな法案を正当化するコメントだけを垂れ流して洗脳していくやり方が正しいわけがない〟


〝テレビも国の許認可が無ければ放送できないけど、だからと言って国にとって都合の良い放送ばかり流していたらマスコミの意味がない〟




 そして二日後の朝にハットは警察へ連行され、洗浄党と党幹部への批判的言動は国家反逆罪に該当するとして逮捕、即日裁判で結審し禁固刑が確定しすぐにガルドラ刑務所へ送られた。


 ハットの父と母は子息の刑が確定した瞬間に国家公務員の職を解かれ、犯罪者の家族として第一〇ランクに降格のうえ強制移住させられた。

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