プロローグ
それは気候の良い秋の土曜日の朝、彼女の家に遊びに行こうと家を出た瞬間のことだった。
「治安警察だ! 国家反逆容疑で逮捕状が出ている、九時二一分、通常逮捕する」
「え? 国家反逆? 僕、何か悪いことをしましたか?」
「詳しい話は警察署で聞く、連行しろ。二班の者は家を取り囲んで誰も出入りしないように見張っておけ」
手錠を掛けられ、ショットガンを持った警察官に両脇を抱えられパトカーに乗せられた。
父や母は家を飛び出しパトカーに駆け寄ろうとしましたが、家を取り囲んでいる警官隊に阻止され泣き崩れている。
――何かの間違いだし、すぐに帰れるだろう。
自分で悪いことをしたという自覚がまったくないために、のんきにパトカーに乗っていた。
警察署に着くと警察官に両脇を抱えられながら取調室に入れられ、椅子に座るとすぐに証拠を見せられた。
「確かに、これは僕がしました。でもこれで国家反逆罪になるのですか?」
「当然だろ、反逆行為以外の何ものでもない。君がしたことだと認めるのならばサインしろ」
自分がしたことに間違いはないから調書にサインすると、警察官に取調室から引きずり出されて、再びパトカーに乗せられ検察庁へ送られた。検察官に同じ質問をされたので調書にサインすると、またパトカーに乗せられてすぐに裁判所へ送られた。
裁判所に到着するとそのまま小法廷の被告人席に立たされ、裁判官にまた同じ質問をされた。
「すべて、認めます」
そう答えると、裁判官が裁判専用のPCに打ち込み、画面に映し出された結果を読み上げる。
「被告人は国民に対する影響を考えたうえで罪状と刑期を判断する法律が適用され、国家に反逆的態度を取ったとして禁固四五年に処する」
「え? 禁固四五年?」
それ以上は何も話す間もなく警察官に目隠しと手錠と足かせをされ、ショットガンを持った警察官に両脇を抱えられ引きずり出されるように退廷させられた。逮捕されたのが朝九時二一分で、今はお昼を過ぎたところ。三時間ほどでこれから先、四五年間の自由が奪われた。
今度は護送車に乗せられた。多くの人が同じように乗せられているようで周りからは「不当逮捕だ」とか、「少しの悪口でなぜ禁固刑なんだ」と抗議の声も聞こえるが、そのたびに殴られているようで抗議の声はうめき声に変わっていく。
護送車にはおそらく三時間ほどは乗せられ、次は船に乗せられた。乗船するとすぐに床に座らされ、遅めの昼食としてパンと飲み物が手渡された。目隠しされたままなので状況がよくわからないが、護送車の中のように抗議の声を上げる人もおらず、ただ船のエンジン音だけが響いていた。
――これから僕はどうなっていくのだろう。
そんな不安と恐怖を感じながら数時間乗船した。港に着くと手錠、目隠し、足かせをされた状態で両脇を抱えられて下船し、建物の中に入ったようだ。整列させられるといったん手錠、目隠し、足かせは外され、その場でP17―18725と書かれた赤い囚人服に着替えさせられ、着替え終わると再び手錠と足かせがはめれらた。時計を見ると七時半を過ぎていたので四時間近く乗船していたのかもしれない。
「ようこそ、ガルドラ刑務所へ」
同じ船に乗って連れて来られた一〇〇人近い受刑者たちが整列する前で、女性刑務所長のあいさつが始まった。
朝逮捕されて一〇時間が経過した今、よくわからないうちに四五年間も囚人となることが決まったようだ。




