ムササビとモモコは仲良くしようよ
「ムササビパンチを食らわせてやる」
ムササビは拳を握りながら叫んだ。
モモコも「なぬぬ」と叫びキックのポーズを取る。
わたしはこれはマズイと思いムササビとモモコの元へと駆け出した。高男さんもわたしの横に並び走っている。
「ムササビちゃん危ないからやめなさい!」
「ムササビ今のお前は人間の姿だぞ」
わたしと高男さんの声が揃った。
「あ、真歌ちゃんに高男さん……」
ムササビはちょっとびっくりした顔で振り向く。その時。
「隙あり!! モモンガキックだ~!! 食らえ~!!」
ムササビの前に回り込んだモモコが足を上げムササビの顔を前蹴りした。
「うっ、うわぁ~!! い、痛い!!」
ムササビは大声を上げ後ろにひっくり返りそうになった。それを高男さんが間一髪支えた。
「ムササビ大丈夫かい?」
「だ、大丈夫じゃないよ~痛い~」
ムササビは顔を押さえ泣きそうになっている。
「ふふん、わたしのキックは最強でしょ?」
モモコは腰に両手を当てて得意げに笑った。
「お客さんここは喧嘩道場ではありませんよ。座ってゆっくりしてください」
高男さんが顔を上げ言った。
「あら、わたしとしたことが……」
モモコはにっこりと笑い椅子に腰を下ろす。
「な、何がわたしとしたことがよ。ムササビパンチを食らいなさい!」
立ち上がりモモコに殴りかかろうとしたムササビを高男さんが「ムササビやめろよ、ここはゆっくり癒される場所だろう」と言ってムササビの腕を掴んだ。
「……こ、今回は特別許してあげるよ」
ムササビは悔しそうに唇を噛んだ。
「お客さん注文をどうぞ」
高男さんは穏やかな微笑みを浮かべメニュー表を差し出した。
モモコは高男さんから受け取ったメニュー表に視線を落とした。
そして、「う~ん、迷うな。え~と、『トマトとキノコのスープとたくさんのフルーツで癒され仲良くなりましょうねセット』をお願いしま~す」と料理を注文する。
「かしこまりました。『トマトとキノコのスープとたくさんのフルーツで癒され仲良くなりましょう』セットですね」
高男さんは優しい笑みを浮かべ注文内容を復唱した。
「では、少々お待ちくださいね」
高男さんはふふっと笑い厨房に戻った。
わたしも「少々お待ちください」と言って高男さんの後を追いかけ厨房に戻る。
「さて、癒して差し上げましょう」
高男さんはにんまりと笑い腕まくりをした。その自信ありげな表情にわたしは思わず見惚れてしまった。
「真歌さん、トマト、椎茸、しめじ、イチゴ、マンゴー、キウイを冷蔵庫から出してください。出したらトマトを洗ってください」
高男さんがわたしに指示をした。
「は~い、了解しました」とわたしは元気よく返事をし冷蔵庫から食材を取り出した。
「ムササビはカゴにあるバナナの皮を剥いてカットして。あ、それからミケちゃん寝てないで起きてください」
と高男さんはムササビとミケにも指示を出した。
さあ、楽しいお料理タイムかな。
わたしは高男さんから「ヘタの周りについた土もしっかり洗い流してくださいね」と言われたので真っ赤なトマトを丁寧に水で洗った。
ムササビはバナナをキッチンの台に置き皮を剥いている。と思いきや……。
「こら! ムササビ誰が食べろと言ったんだよ」
「ん? このバナナ美味しいよ。味見してるんだよ~」
ムササビはバナナを美味しそうに食べご満悦顔だ。
「誰が味見をしろって言ったんだよ。っておいおい、どうしてミケちゃんもバナナを食べているのかな?」
「にゃは、このバナナ甘くて最高だね。お客さんもきっと喜ぶにゃん」
先ほどまでウトウトしていたミケもご満悦顔だ。なんて子達なんだ。
「まったくなんて奴らなんだよ……食べてないでムササビ、バナナを輪切りにカットしてくれよ」
高男さんは眉間に皺を寄せながら言った。
「は~い、了解しました」とムササビは元気よく返事をしたのだけど、「あ、でもモモコが食べる料理だと思うとやる気なくすな……」とブツブツ呟く。
「トマトとキノコのスープとフルーツが盛り沢山なフルーツデザートを食べてモモコちゃんは癒されたいんだよ。そしてムササビお前とも仲良くしたいと思っているはずだよ。ムササビも本当はモモコちゃんと仲良くしたいと思っているよね?」
「……それは、そ、そうかもしれないけど……」
ムササビはぼそぼそとした声で返事をした。これは、きっとムササビも心のどこかでモモコと仲良くしたいと思っているのだろう。
そんなムササビのことがなんだか可愛いなとわたしは思った。
「ムササビちゃん楽しみながら高男さんのお手伝いをしようよ」
わたしは、洗ったトマトをザルに置きムササビに視線を向けて言った。
「楽しみながらね……まあ、真歌ちゃんがそう言うならね……」
ムササビはわたしの顔を見て答えそして、バナナに向き直り包丁を手に取りバナナをカットした。
「ありがとう真歌さん」
椎茸の石づきを取っていた高男さんがわたしのほうを見て言った。
「あ、いえモモコちゃんが喜んでくれるといいですね」
わたしはにっこりと微笑みを浮かべた。
「そうですね。さあ、みんなで楽しく料理をしよう」
高男さんは熱した鍋に油を引き椎茸、しめじに豚肉を炒めた。それから水とトマトを入れ煮た。その様子を見ているだけで食べたくなってくる。
やっぱりわたしは食いしん坊だ。ああ、もうお客さんのモモコちゃんのために作っているのにね。
それはそうとやっぱり高男さんはお客さんの食べたいものを感じ取る能力があるのかな。




