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本日一人目のお客さん


そして、高男さんの持っている本に目をやるとそれは『不思議な現象』というタイトルだった。高男さんもまた、この状況が気になっているようだ。


澄ました顔をしているのにね。そう思うとおかしくてわたしはやっぱりクスッと笑ってしまう。


「真歌さん俺の顔に何かついてますか?」


高男さんは不思議そうに首を横に傾げた。


「ううん、何でもないですよ~」


わたしはそう答えくふふと笑った。


「あ、やっぱり俺の顔を見て笑っている」


高男さんはむむっとした表情でわたしを見る。その顔がまた笑いを誘う。


「まったく真歌さんって人は」


口を尖らせて笑う高男さんにまたまた笑いそうになったその時、ガラガラと引き戸が開く音と共にお客さんが入って来た。


待つこと二時間。ようやく本日一人目のお客さんが来店した。


「いらっしゃいませ~ムササビカフェ食堂へようこそ」とわたし達は声を合わせてお客さんを迎え入れた。わたし以外の三人は両手を横に広げている。


「こんにちは」


お客さんは顔に対して目がくりっと大きくてめちゃくちゃ可愛い女の子だった。少女マンガの世界から飛び出してきたそんな感じだ。


見た目中学生くらいだけど学校は休みなのかな?


「お好きな席にどうぞ」


高男さんが声をかけるとお客さんはにっこりと頷き大きな窓がある眺めの良い窓辺の二人掛けの席に腰を下ろした。


わたしがムササビカフェ食堂に来店した時に座った席だ。


やっぱりあの席は人気があるようだ。



「あの子どこかで見たことがあるんだよね」


ムササビがピッチャーからグラスに水を注ぎながらチラチラと窓辺の席に座る女の子に視線を向け言った。


「以前来店したことがあるのかな?」

「う~ん、初めてだと思うんだけどどこかで見たような気がするんだよね」


ムササビは水をグラスに注ぎ終えお盆に載せた。


「じゃあ、わたし確認ついでにお水を持っていくね」


ムササビはポニーテールを揺らしお客さんの席へと向かった。


「ムササビの奴騒動を起こすんじゃないだろうな」


高男さんがお客さんの席に向かうムササビの後ろ姿をじっと見ながら言った。


「え? ムササビちゃん騒動なんて起こさないですよね」

「そうだにゃん。ムササビちゃんはいい子だもん」


わたしとミケはそう言ったのだけど、高男さんは眉間に皺を寄せている。そんな高男さんの表情を見ているとちょっと心配になる。


それに『あの子どこかで見たことがあるんだよね』と言ったムササビの言葉が気になってきた。


わたし達三人はお客さんのテーブルにたどり着いたムササビをじっと眺めた。


 不安に思いながらムササビとお客さんの様子をわたし達は見守る。


すると、その時。


「あなたはもしかして!?」とムササビの大きな声が聞こえてきた。


『ムササビちゃんどうしたんだろう?』とわたし達三人は不安げな顔でお互いを見る。


「え? もしかしてってなあに?」


お客さんの女の子も大きな声を出す。


わたし達三人は益々心配になり眉間に皺を寄せお互いの顔を見る。


ムササビとお客さんの女の子はお互いの顔をじっと見ている。そんな二人のは間には不穏な空気が流れている。


「なんか嫌な予感がするね」


高男さんが小声で言いわたしとミケの顔を交互に見る。


「ちょっと心配になりますね」

「かなり心配かもにゃん」


わたしとミケはそう答え視線を再びムササビとお客さんの女の子に向ける。


すると、ムササビが……。


「あなたは憎たらしいオチビでしょ?」と言った。


「は? 憎たらしいオチビですって!」


お客さんの女の子も言い返す。


「そうよ! 絶対にあなたはあのオチビだよ。思い出しただけでムカムカしてきたよ」


ムササビのその声に怒りと苛立ちが含まれている。


「わっ! 思い出した! あなたこそ年下なのに憎たらしい子だよね。しかもオチビって失礼だよ」


お客さんの女の子もかなり興奮しているようだ。これは騒動が起こりそうだよ。

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