42:あの騒動から10日後~リリアン~
今日は。
マリーとのお茶会の日だ。
場所は……なんと宮殿の中の庭園。
スコット皇太子がセッティングしてくれた。
◇
ノートル塔での騒動から10日間が経った。
その10日間は……想定もしていない忙しい日々だった。
街は、皇太子の婚約破棄&新たなる婚約、護衛騎士の不祥事、冤罪で断罪された悲劇の男爵令嬢と、話題に事欠くことがない状態で。ニュースペーパーが爆発的に売れている(現在進行形)と聞いている。
その一方で。
当事者であるあたしは……。
本当にもう、大変!
打ち身、捻挫、打撲。
その状態でも待ったなしで、スコット皇太子との婚約の手続きが進み、皇帝陛下夫妻にも会うことになった。皇帝だよ、エンペラーだよ。まさかそんな超偉い人に会えるとは思わず、ガチで緊張した。
双方の家族や親族を交えての夕食会なんて、もう晩餐会みたいで。
1年後の結婚式に向けて、水面下では家臣の皆さまが動き出している。なにせ皇太子の結婚式。ビッグイベントだから。とはいってもね。マリーとの結婚式に向けて動いていた部分もあったから。
新婦の名前をね、ちょちょっと変えるだけで……。
そっちの準備はお任せしつつ、あたしが目を白黒させることになったのは、皇太子妃教育!
高校受験以来の必死さで勉強している。
一応伯爵令嬢だから基本的なマナーとか所作は身についているけど、外交に伴うあれやこれや。外交に伴う語学や知識とか。本当にもう……。
あたし、もしかしたらスコット皇太子とは結婚しないかも、と思っていたけど。これだけ勉強させられると……。これだけ勉強して、やっぱり結婚しないってどうなの!?っていう気持ちになりつつある。
何よりも……。
このとんでもなく大変なあたしを全力でサポートしてくれているのが……スコット皇太子なのだ。必然的に一緒にいる時間も長くなり、励まされ、慰められ。時に愛の言葉を囁かれ……。
しかもスコット皇太子は間違いなくカッコイイ。それにあの時、お姫様抱っこではなく、おんぶになったことを猛省し、めっちゃ体を鍛えているの。わずか10日間で腹筋に割れ目の兆しが出ているってホントすごい。
真面目で不器用なんだけど、努力家でもあるんだよね、スコット皇太子は。
こうなるとさ。
普通にときめいちゃうよね。
うん。
◇
そんな至れり尽くせりのスコット皇太子は。
マリーと私のためにお茶会の場をセッティングしてくれた。
既にテーブルには見た目も可愛らしい様々なお菓子が並んでいる。
チョコレートケーキ、様々な味のマカロン、レーズンたっぷりのクッキー、レモンのタルト、桃のゼリー、ババロア、各種フルーツ。
すべて皇族の料理を手掛ける調理人が作ったもの。
つまりここでしか食べることができない超一流品。
あたしは皇太子妃教育が始まってから。
宮殿に滞在している。だからこのお菓子がどれだけ絶品か知っていた。
だからもう、お腹もぐうっと鳴るし、さっきから涎が出そうだ。
「マリー・コネリー男爵令嬢がいらっしゃいました」
執事の声に席を立ち振り返ると……。
わあ、綺麗……!
デレクにエスコートされたマリーの美しさと言ったら……。
可憐で優雅。
落ち着きのあるロイヤルパープルのドレスには、アイリス色の小花がスカートを飾り、同色のウエストで結わくリボンがいいアクセントになっている。身頃の繊細な刺繍と飾りボタンもとてもオシャレ。
カチューシャをつけおろした状態のホワイトブロンドの髪も、本当に艶があって美しい。
う~~ん。やっぱり皇太子妃と言ったら、この持って生まれた上品な雰囲気といい、マリーなんじゃないのと思わず思ってしまう。
さらに。
そのマリーをエスコートするデレクが半端なくイケメンなんだなぁ。白シャツに爽快さを感じさせるミントグリーンの上衣にズボン。タイは黒。サラリと来ている服なのに。なぜだかとっても素敵に感じる。それは間違いない。デレクが着ているからだ。
デレクとマリーは婚約したと聞いている。
まさかマリーが好きだったのが、自身の従者のデレクだったなんて。
今日はその辺も詳しく聞かないと。
そう思っていると、デレクから離れ、マリーがこちらへ来た。
一人残されたデレクに声をかけたのは、スコット皇太子。
私とマリーがお茶会をしている間。
デレクとスコット皇太子は、宮殿内のティールームでおしゃべりを楽しむことになっていた。
ちなみにスコット皇太子は、白シャツにセルリアンブルーの上衣にズボンと、こちらもとっても爽やか。というか、デレクと並ぶスコット皇太子。これ、マジ、絵になる。人気男性アイドルデュオでいそう。イケメンとハンサム。最高~!
「リリアン様。ご無沙汰しております。お元気ですか?」
マリーの声に我に返る。慌ててあたしも挨拶した。
「マリーさま。こちらこそご無沙汰しております。こちらは相変わらずです」
そんな挨拶をしながら、二人とも席についた。























































