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断罪終了後に悪役令嬢・ヒロインだったと気づきました!詰んだ後から始まる逆転劇  作者: 一番星キラリ@9/2やられる前に発売:商業ノベル&漫画化進行中


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41/47

41:大好きな人~マリー~

エントランスに着くと、既に馬車に乗っていたスコット皇太子とリリアンが降りてきて、ジェフとの対話について話すことになった。


最後は生きる気力を取り戻し、謝罪の言葉をジェフからもらえたと伝えると、スコット皇太子もリリアンも安堵していた。


その後はすぐ、私は馬車に乗り込んだ。

デレクは自身が乗ってきた馬に乗り、出発となった。


馬車の中には……これはスコット皇太子が手配してくれたのだろうか。枕代わりになるクッションとタオルケットが用意されていた。座席が大きめの馬車だったということもあり、横になると……。


平坦な道を進んでくれていたおかげか、石畳のガタガタと揺れる舗装された道に入るまで、ぐっすり寝ることが出来た。昨晩ろくに寝ることが出来なかったことも影響していたと思う。


目を覚まし、やがて窓から屋敷が見えてくると……。

もう涙が出そうになってしまう。

まるで何十年かぶりにここへ帰ってくることができた――そんな気持ちになりながら、屋敷の門をくぐった。


スコット皇太子の計らいで、先触れを出してもらえたので、帰宅した私をコネリー夫人が迎えてくれた。涙の再会だった。


コネリー男爵は私の件で宮殿に出向いていたが、無事帰宅したという連絡を受け、慌てて帰って来てくれた。当然だが、帰宅したコネリー男爵とは泣きながらの対面となった。


その後は入浴し、まだ疲れていた体を休め、コネリー夫妻とアフタヌーンティーを楽しんだ。


ようやくグレーのワンピースから解放され、きちんと仕立てられたドレスに袖を通すことができた。


ラベンダー色のグラデーションで構成されているこのドレスは、裾を飾るカットワークレースがとても美しい。上品で落ち着いており、お気に入りのドレスだった。髪はローポニーテールにして後ろでリボンで留めている。


ようやくこれで男爵令嬢らしい姿になれたと安堵する。


きちんと着替えた私を見て、コネリー夫妻は再び涙ぐむ。そんな二人とスコーンやサンドイッチを食べながら、スコット皇太子とは再度婚約するつもりはないこと、本当は好きな人がいると打ち明けた。


すると……。


「スコット皇太子が新しい婚約者としてサマーズ伯爵令嬢を迎えるらしい……ということは、宮殿に行った時、噂で聞いたよ。それを聞いた時は驚き、マリーが悲しむのではないかと思ったが……。そうか、他に想う人がいたのだね。それならば無理をする必要もない。その相手と幸せになればいい」


コネリー男爵がそう言えば、コネリー夫人も……。


「マリー。こう見えても私とこの人は恋愛結婚なんですよ。幼なじみで。本当はお互い、別の相手と婚約させられるところだったのだけど。彼が私に想いを伝えてくれて。そしてお互いの両親に相談して、婚約ができたの。大好きな相手と結婚できて、私はとても幸せよ。マリーにも出会えたのだしね。好きな人と結ばれる。それが一番よ」


もう二人の言葉に泣きそうになってしまう。


話したついでだ。もう誰を好きなのか打ち明けてもいいだろう。


そこで勇気を出した私は。

自分の想い人の名前を伝えた。

彼の名を聞いたコネリー夫妻は……。


「そうだったのか。それは……そうか。いいのではないか。彼は優秀だ。きっとマリーを幸せにしてくれるだろう」


「お父様。それは……もし私が彼に想いを伝え、上手くいけば、彼との結婚を認めてくれるということですか?」


「勿論だよ」


そう答えたコネリー男爵はニコリと微笑む。一方のコネリー夫人は。


「私も同意見よ。彼とマリーはお似合いだと思うわ」と優しく微笑んだ。


反対されるとは思わなかったが、ここまですんなり許してくれるなんて。

後はもう、自分の気持ちを彼に伝えるだけだった。


いつ伝えるのか?

迷っていたら、言い訳をして、告白を先延ばしにしてしまう気がする。


だから。


決意した。今晩、告白しようと。


そこからは時間の流れを早く感じたり、遅く感じたり。

やっぱり明日にしようかしらと思う瞬間もあったが。


夕食を終え、自室に戻り、読書をして過ごしていると。

彼が部屋にやってきてくれた。

入浴の準備のためだ。


「マリーさま。奥様がマリーさまにと、素敵なリネンのネグリジェを用意してくださいましたよ。アイボリーの生地に、黒のリボンがとても可愛らしいですよ」


屋敷に戻り、白シャツに黒のタイ、ベスト、ジャケット、ズボンを身に着けたデレクは、騎士から一転。従者兼執事として、落ち着いた足取りで部屋に入ってきた。


彼を見た瞬間からバクバクしている心臓を抱え、緊張しながらも、本を閉じ、椅子から立ち上がる。


コネリー夫人からというネグリジェをバスルームに置くと、デレクは一旦、私の方へとやって来て、ジャケットの胸ポケットから何かを取り出す。


「マリーさま。渡しておきます」


私の手をとると、手の平に金平糖の入った小瓶をのせてくれた。


「ありがとう、デレク……!」

「どういたしまして」


ダークシルバーの髪を揺らし、デルクがバスルームへ向かうのを引き留めた。そんな風にこれまで彼を引き留めることなんてなかったので。デレクは驚いた顔で、翡翠のような美しい瞳を私に向けた。


「デレク、聞いて欲しいことがあるの……」

「何でしょうか、マリーさま」


デレクは私の話を聞こうと、向き直ってくれた。

途端に心臓が存在を主張し、全身の血流が良くなったように感じる。必然的に体が熱いと感じていた。何度か深呼吸して、ドクドクと激しく鼓動する心臓を抱えたまま、話を始める。


「……デレク。私は子供の頃、あなたと初めて会った時から。共に過ごし、成長したわよね。その過程で私はあなたのことをとても信頼するようになり、尊敬するようになったわ」


ああ、とんでもなく緊張する。

だらだら言わず、「好きです!」と短く言うことにすればよかった。でも、もう話し出してしまったのだ。最後まで言うしかない。


「信頼して、尊敬する気持ちが……次第に変わっていったの。デレク、私ね、あなたのことが……好きなの」


デレクの澄んだ瞳が大きく見開かれる。


「好きというのは、そう。デレクを一人の男性として見ているということ。ずっと……好きで。でも想いを伝える勇気がなかったの。そうしているうちに私はスコット皇太子に見初められてしまい……。そこで一度は諦めたわ。あなたのことを。でも今回の騒動のおかげで、私は自由の身となった。もう自分の気持ちを偽るのは嫌なの。だから、この気持ちを伝えたわ……」


言い切った。全部。伝えたかったこと。

これ以上はもう……胸がいっぱいで何も言えない。

できることは……デレクの顔を見つめるだけだ。


「マリーさま……。あなたは……男爵家の令嬢ですよ。そんな僕なんて……」


ああ、身分違いを理由に断られてしまうのかしら。

そう思った瞬間。

自然と涙がこぼれ落ちていた。


「そう、そうよね。ごめんなさい。突然、こんなことを伝えてしまい。私、どうかしていたわ。忘れてもらえる?」


「それは無理です」


そう言ったデレクの手が私の頬へと伸び、細い指で涙を受け止める。


「……僕は……僕の方こそ、ずっと我慢していたのですよ。マリーさまのことを。身分の違い。立場の違い。僕の手に永遠に届くことがない人だと思っていました。でも今回、マリーさまがノートル塔に幽閉されたと聞き……。僕はいてもたってもいられなくなりました。マリーさまを地獄に落としたリリアンさまに復讐し、ノートル塔からマリーさまを連れ出し、そのまま……駆け落ちするつもりでいたのです」


そ、そうだったの……!

そんな大胆不敵なことを計画していたの!?


「でもそんなことをしないで良かったです。……まるで夢のようですよ。マリーさまから想いを伝えていただけるなんて……。それだけで幸せです。それで僕は我慢します」


「え、どうして……?」


「マリーさまは、旦那さまと奥さまが心から大切にしている存在。お二人はマリーさまの幸せを本当に願っています。皇太子さまとの一件があったとはいえ、マリーさまはお若く美しい。まだ爵位ある男性や隣国の王族との婚約だって望めるはず。僕などではなく」


「ダメ、それじゃダメなの!」


思わずデレクのジャケットの袖を掴んでしまう。


「コネリー男爵もコネリー夫人も、デレクとの結婚を認めてくれているわ。私がデレクに想いを伝え、両想いだったら、幸せになりなさいって。今日のアフタヌーンティーで私がデレクへの気持ちを打ち明けたら、そう言ってくれたの」


「そうなのですか……!」


驚き、息を飲んだデレクだったが。

すぐにその場で片膝を床につき、跪いた。そして私の手を恭しくとると――。


「マリーさま。失礼な言葉を重ねてしまい、申し訳ありません。繰り返しになりますが、僕には許されない方と思っていたので……。でも旦那さまと奥さまが許してくださると言うのなら……」


そこで言葉を切ったデレクは、凛とした眼差しになり、背筋をピンと伸ばした。それを見た私もつい背筋が伸びる。


「マリーさま、あなたのことを愛しています。僕と結婚してくださいますか?」


再び涙が瞳から溢れてしまう。でも懸命に答える。


「はい!」

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