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断罪終了後に悪役令嬢・ヒロインだったと気づきました!詰んだ後から始まる逆転劇  作者: 一番星キラリ@9/2やられる前に発売:商業ノベル&漫画化進行中


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22/47

22:御礼~リリアン~

今、あたしの脳はどの情報をどう処理すればいいのか。

パニック寸前。

だって。


まず、あたしはスコット皇太子の婚約者になっちゃう……というか、もうなっているかもしれない件。


次に、マリーは別にスコット皇太子を求めてなくて、多分、だけど。女子の勘で、皇太子ではない、別に誰か好きな人がいる……。


でもってタイムアップで出て行けという状態。


この状況ですべきは……。

やっぱり、席から立ち上がり、この部屋から出る――だろう。

残り二つはその後、歩きながらでも考えるしかない。


というわけで、何とか気持ちを落ち着かせ、ちゃんとお辞儀をして、部屋から出ることに成功した。


部屋の外では廊下に座りこんでいた従者があたしを見て慌てて立ち上がる。


「リリアンさま」

「はい、何でしょうか」


ジェフはにっこり笑顔であたしを見た。


「リリアンさまはとても良い方だったのですね。自分はあなたのことを誤解していました。差し入れのパンも問題なかったでしょう。それなのに疑ってしまい、申し訳ありませんでした」


騎士らしく、ジェフは丁寧に頭を下げて詫びた。

なんだ、石頭ではなく、話が分かる人ではないか。


「いえ、分かっていただければ大丈夫ですよ」


そう答えるあたしのことをジェフは廊下の端の方へと誘導する。

なぜかと思ったら、マリーの部屋から机や椅子が運びされていた。


ケチだなぁ。そのままマリーに使わせてあげればいいのに。


「心優しいリリアンさまに、自分から少しばかり、御礼をさせていただきたいのですが」


「え、御礼?」


「はい」


ニコニコとしたジェフは、このノートル塔の名前の由来にもなっているノートル皇帝の塔へ案内することを提案してくれた。そこからの見晴らしは絶景で、あまりにも美しい景色だったため、時のノートル皇帝は、自分以外の者の立ち入りを禁止したという。既に彼は亡くなっているが、その時の慣習が残っている。つまりその塔へ足を踏み入ることが許されているのは、限られた者だけだという。


そんな激レアな場所に、なぜジェフが案内できるのだろう?


「幽閉中のマリーさまの監視も兼ねて、自分は今、ノートル塔の管理責任者と同等の権限を与えられています。ノートル皇帝の塔へ足を踏み入れる許可を出すかどうかも、今は自分の一存で決められるのです」


なるほど。それでその塔に案内するって、めっちゃ公私混同な気もするけど、いいのだろうか? でも案内すると言っているのはジェフであり。


それにせっかくここまで来たのだ。案内してくれるというのなら、行ってみてもいいのでは? なにせ滅多に足を踏み入れられない場所みたいだし。


そこで申し出を快諾し、従者に声をかけると。


「リリアンさま。大変残念なのですが、従者をお連れいただくことはできません。先に馬車に戻ってもらうよう、お伝えください。ノートル皇帝の塔はそう簡単に入れる場所でありませんから。従者の方はお控えいただきたいのです」


さらにジェフは申し訳なさそうな顔であたしに詫びる。


「そういう規則になっており、申し訳ないです。ただ、自分は殿下の近衛騎士でもあるので、リリアンさまのお世話をしますし、責任を持って、馬車までお見送りしますから。ご安心ください」


確かにジェフがついていれば、安全だろう。しかもここはノートル塔。罪人は幽閉されており、メイドや職員、騎士と身元がハッキリした者しかいない。従者には先に馬車へ戻るよう伝え、ジェフの案内で歩き出す。


ジェフは。自分の立場をよくわきまえているようだった。近衛騎士は護衛対象に話しかけることはない。護衛対象と共に歩く時に必要なこと、それは周囲への警戒。不審者や不審物がいないかの確認だ。


だから無言で歩くジェフについて行きながら、あたしは一旦保留にしていた件を考えることにした。自分の件とマリーのこと、どちらを考えるか天秤にかけた時。当然、マリーのことが気になった。だが、そうやってマリーのことばかり気に掛けた結果。自分がとんでもな状況に陥っていると気づいた。


だから今回は。まず自分のことを考えることにする。つまり、スコット皇太子との婚約の件だ。そもそも皇太子から婚約を求められ、断るなんてことできるのか? 理由があれば断れるだろうけど。それは例えばものすごく病弱で嫁いでも子供なんて無理、みたいな。でもあたしは……。間違いなく健康優良児。この線で断るのは……無理な気がする。


でもってあたしはヒロインなわけでしょ。既にゲームの一大イベントである断罪は終わったわけでしょ。そうなると……流れ的にあたしが皇太子と結ばれてハッピーエンドなんだよね。


えー、そうなると、このまま婚約?


だけどどうなのかな。スコット皇太子って。

彼と過ごした時間は……覚醒前は……まあまあ、あるか。覚醒してからはまだ少ないけど。でもこの短い期間においても、分かったことがある。それは超真面目。でもって不器用。恋愛についてちゃんと学び、強すぎる正義感をコントロールできるようになれば……本当に完璧な男になる気がする。でもこればっかりはなぁ。どうなのかしら……。

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