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完結●断罪終了後に悪役令嬢・ヒロインだったと気づきました!詰んだ後から始まる逆転劇  作者: 一番星キラリ@受賞作発売中:商業ノベル&漫画化進行中


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15/47

15:ありがとう~マリー~

 時間は限られている。だから優先事項の確認をすることにした。


「本当に、リリアンがそう言ったの?」


「はい。最初は……命乞いで言っているのかと思いました。でも、今朝になっても何も動きはない。つまり皇太子さまに僕のことを話していない。もしリリアンさまがマリーさまを嫌い、皇太子さまの婚約者の座を奪ったような女であれば、すぐに皇太子さまに泣きつき、動くと思います。そうしないということは、リリアンさまが言うことは嘘ではない……」


 まさか、そうだったのか。

 リリアンは私に殴られたわけではなかった。具合が悪くなり、倒れこんで、運悪く地面に落ちていた石に額をぶつけた。同時にその時、私も様子がおかしくなり、しゃがみこんだ……。


 でもそれなら辻褄があう。

 それにリリアンも、私と同じことを言っている。嫌がらせは受けていないと。

 勘違いした誰かが、スコット皇太子に告げ口したのではないかと。つまりリリアンは何もしていない。スコット皇太子は誰かの告げ口と偶然の目撃情報から私がリリアンに嫌がらせをしていると考えた。きっとその情報は何度もスコット皇太子の耳に届いたのかもしれない。次第に私への不信感を募らせ……。


「マリーさま。どうされますか? このままマリーさまをここから連れ出すこともできます」


「それは……。そんなことをしたら、私達は逃亡者となり、追われることになるわ。それにコネリー夫妻や屋敷のみんなにも迷惑をかけることになる」


 するとデレクは……。優しく微笑む。


「マリーさまはご自身のことより。コネリーご夫妻や屋敷の皆のことを気にされるのですね」


「それは……みんな私の大切な人なのだから」


 デレクがすっと腕を伸ばしたが、それを慌てて引っ込めると、表情を引き締めた。


「ではマリーさまは、ここに残り、リリアンさまがマリーさまの無実を皇太子さまに伝え、ここから出してくれるのを待つのですね?」


「……そうね。私は……リリアンさまを信じてみることにします」


 ため息をついたデレクだったが、すぐに「分かりました」と返事をする。そして遠慮がちに私の手をとった。


「必ず、マリーさまがここから出られるようにしますから。気持ちを強く持ってください」


 そして私の手の平に小さな瓶を乗せてくれた。その瓶には星型の砂糖菓子――金平糖が入っている。


 コネリー夫妻に引き取られ、屋敷の生活が始まってすぐの時。

 孤児院出身の私からすると、コネリー家の屋敷はまるでお城、宮殿みたいに見えていた。自分の部屋は勿論、舞踏会を開くために使われるホールも、美しく整えられた庭園も、そのすべてに圧倒されていた。


 特に私を緊張させたのは、ダイニングルームだった。

 コネリー夫妻と私の三人。

 三人で食事をするには広すぎる部屋に、大きすぎるテーブル、その上には真っ白なテーブルクロス。そこに並べられたカトラリーはピカピカで、お皿には綺麗な模様が描かれている。磨かれたグラスは透明で輝いていた。美しい花が飾られ、そこに次々と湯気をあげ、いい香りがする料理が運ばれてくる。


 驚いた。

 部屋にも、食器にも、食事にも。


 あまりにも豪華で、圧倒され、そして緊張し、ろくに食べ物が喉を通らなかった。「遠慮する必要はない。マナーはゆっくり覚えればいいから。残しても構わないよ。まずは食べてご覧」そう、コネリー男爵は言ってくれた。


 でも……。

 飲み込もうとしても飲み込めない。


 そんな私を見て、コネリー夫妻が心配しているのが分かり、増々食べ物を飲み込むことができなかった。


 ちゃんと食事を食べたいという気持ちがあるのに。コネリー夫妻も無理強いはしていないのに。どうして私はこんなに美味しそうな料理を食べることができないのか。あの頃の私はとても悩んでいた。


 そんな私にデレクがくれたのが、この金平糖だった。

 コルクの蓋にガラスの小瓶。

 その中にはピンク、白、イエロー、黄緑の金平糖が詰まっていた。

 カラフルな金平糖に、デレクは魔法をかけてくれたのだ。


「緊張を和らげたいなら、この黄緑色。元気になりたい時はイエロー。寂しくなったらピンク。お腹がすいたら白。一粒食べれば、効果があります。僕もいつもこれで、いろいろ乗り切っていますから」


 子供だったから。

 デレクの言葉を聞いた私は目を輝かせた。

 この砂糖菓子は特別。魔法の金平糖だ。

 デレクを信じ、私はドキドキしながら金平糖を口にした。


 元々、食べ物が喉を通らないのは、過度の緊張のせい。デレクの言葉と金平糖を信じた私は。黄緑の金平糖を一粒、食事の前に食べることで、緊張しないようになった。まさに自己暗示みたいものだろう。


 こうしてその日から、きちんと食事をとれるようになった。それ以外の場面でも、何度も金平糖に助けられた。成長してデレクが魔法使いでもなければ、金平糖にそんな効果がないことにも気づいている。それでも金平糖は、私にとって特別だった。


 そのことをデレクが覚えていて、こうやって渡してくれたことに、涙が出そうになる。抱きついて御礼の言葉を言いたい。そう思ったが――。


 でもその気持ちをぐっとこらえ、デレクに微笑む。


「ありがとう」

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