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魔銃使いとお嬢様  作者: 文月 鎌
第3発
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72/114

目指すは森の奥

連続投稿やっていきます

 俺はギルドから出ると急いで宿に戻る。


「ん?そんなに急いでどうしたんだい?それに二人はどうしたんだ?」


 マリーさんが出てきて声をかけてくる。

 どうやら食事の用意をしていたようだ。


「あ……マリーさん。今日は夕食は貰えそうにないです。ちょっと緊急の依頼が来ちゃったので。すぐに出発しなきゃならないんで」


 申し訳なさそうにそう言うと、彼女は「少し待ってな」と言って厨房に引っ込んだ。

 

 言われた通りに待っているとほんの数分で手に包みを一つ持った状態で出てきた。


「パンと焼いた肉、それにいくつかの干した果物だ。水は自分たちで用意をしな。向こうで三人で食いな」


 彼女はニッと笑いながら包みを手渡してくれた。

 俺は軽くお辞儀をしながら部屋に駆け戻ると部屋に置いてある戦闘用の諸々を魔法袋に入れていった。

 その中には昨日から置いてある魔砲も含まれる。


 他にも弾丸や以前から作り貯めていた小麦粉玉の改良した物、火薬のみを包んだ爆薬などいろいろだ。


 とにかく必要そうなものを詰め込んでいくとすぐに時間が迫ってくる。

 魔法袋は大量に入れても重さをたいして感じなくても良いのが利点だ。まあ生き物や袋の口に入らない物は入れられないという欠点もあるのだが。

 幸い、魔砲は何とか魔法袋に入れることはできるからこの前の実験と同じように入れていく。



「じゃあマリーさん、行ってきます」


 準備をし終えた俺はそう言って宿を出た。

 彼女はただ手を振って見送ってくれた。



 ギルドに着くと既にルルは馬を用意して待っていた。


「遅いよー、この人達がいろいろうるさいから早く行こうよ」


 見ると、このギルドにいたハンターや受付嬢まで外に出てきている。


「おい坊主、悪いことは言わねえ。一旦落ち着いて朝まで待つんだ。そうすれば俺たちが探しに行ってやるから」


「今から森に入るのがどれだけ危険か分かってるのか!?死にに行くようなもんだぞ!」


「そうです!わざわざ死にに行っちゃダメです!」


 みんな口々に俺たちを引き留めようとしてくる。

 それだけで皆がどれだけいい人かがわかる気がする。

 もちろん、ある程度の損得はあるだろう。もしも俺たちが森で死んだら確認するのは彼らなのだから。それでもこうして声をかけてくれることに俺はありがたみを感じる。


「皆さんにそう言って貰えて俺たちは嬉しいです。ですが、走って行ったのは俺たちの仲間です。仲間が一人で何かをしようとしているのならそれを助けるのも仲間です。だから俺たちは彼女の《《仲間として》》森に向かいます。──ここで宣言します。俺たちはこの場に必ず生きて帰ってきます。担保というのも何ですがここに俺の宝物……いえ、今ここに居る理由を置いていきます。もし帰ってきたらちゃんと返してくださいね?帰って来なければ……そうですね、俺たちのことは探さなくても良いのでこのネックレスを王都に持って行って騎士団のできるだけ偉い人に、これの価値と意味が分かる人に預けてください」


 そう言って俺は足元にそっと黒龍の鱗の付いたネックレスを置く。それを見たルルも同じことをする。


 そして俺たちはすぐに二人で一頭の馬に乗ると馬にムチを入れる。


 二人を乗せた馬が走り去り、そこには二つの漆黒のネックレスと呆然とするハンターや受付嬢が残されるのだった。


「これはなんなんだ?」


 そこに残されたネックレスをハンターの一人が拾い上げる。


 しかし、いくら眺めてもそれが何なのか分かるものはこの場にはいなかった。




「ヤマト!場所は分かってるの!?」


 俺の後ろに乗ったルルが聞いてくる。

 俺はかつてのフーレン伯爵家にてルルの従者という立場だったから馬の扱いもバナークさんなどから学んでいた。ここまでスピードを出すのは初めてだが、馬を潰さない程度に加減しなくちゃいけない。


「今はこの森にある馬の足跡とか轍を何とか追ってる!でもどこまでそれが残ってるかは分からないな!」


 風を切る音やかなりの速さで走る馬の足音に負けないように大声で答える。


 進み始めて約一時間。目的地までは約十時間。途中からは馬を降りてどこかで休みつつ夜明けを待たなければならないだろう。今はまだ多少は陽がある。今のうちに進めるだけ進んでおきたいのだ。


 幸い今は冬も終わり、少しずつ陽も伸びてくる頃だ。といっても日本と違って分かりやすく変わるわけじゃないが、一時間から二時間程ある夏と冬の差は今ではかなり大きい。




「シャリアは今どこにいるのかな。一人なのかな」


 ルルが呟く。

 出発して約三時間くらいだろう。そろそろ野営する場所を探そうと馬の速度を遅くしていた時だった。


「さあな。でも、シャリアが目指した場所に居る龍は多分……俺らと《《同じ》》だよ」


「うん。初めて龍の噂聞いた時あからさまにシャリアはおかしかったもの。逆にあれで察せない方がおかしいよ」

「……ルルはシャリアなら大丈夫か?」


「大丈夫だと思うよ。彼女は私たちと同じだから。でも、もしこれで上手くいったなら私たちとは違う道を行くべきだと思う」

「そっか。まずは追いかけるところからだけどな。──ここら辺かな。ルル、結界をお願い」


 俺が指さした先には大きめの茂みがあって人が二人は入れそうな空間が何とか確保出来そうだった。


「ここだね。わかったよ。──光よ、我らを光で隠し、目を歪めよ。〈光暗幕《ライト・マント》〉」


 魔法というのはイメージであって詠唱では無い。


 そう言った人物がかつていた。

 彼は当時は固定されていた魔法の詠唱をイメージによって補完し、詠唱そのものは自由が効くようになったのだ。

 それゆえ、使いたい魔法のイメージと詠唱の意味が一致しなければ発動しないものになってしまったが、結果としてありとあらゆる言語で発動可能となったのだ。


 今回の魔法は魔物避けの結界だが、範囲を覆う〈幕《カーテン》〉ではなく個人を覆う〈幕《マント》〉と意味付けたのは発動させた場所、つまり狭いからである。

 他にも〈幕《ベール》〉などもあるが今は割愛するとしよう。

 結論として魔法はイメージなのである。


 と、ここまで考えた辺りでルルが俺と自分それぞれに魔法をかけ終えた。

 馬を近くに繋いで同じように魔法をかけると茂みに入り込んで二人で並ぶ。


「ここでなら朝まで隠れられるだろ。ルル、夜明け前には出発したい。夜が明けるまでは今からならだいたい七から八時間くらいだ。悪いが先に四時間くらい先に見張りを頼んでいいか?さすがに疲れた」


「いいよ。ずっと馬を操縦してくれてたもんね。お疲れ様。ちゃんと起こすからゆっくり休んでね」


「ありがとな、ルル。おやすみ……」


 そう言って俺は目をつぶる。

 すぐに眠りに落ちたのだが、意識を失う直前にルルが手を握ったような感覚がしたのだった。



次は12:00です

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