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魔銃使いとお嬢様  作者: 文月 鎌
第3発
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駆け出す少女 知らぬ二人

「つ、疲れたぁー……」


 俺は宿のベッドに倒れ込んで大の字になる。ルルやシャリアも似たような様子だ。


 今日は近くの草原でようやく完成した魔砲のテストをしていたのだが、まあ……いろいろあったのだ。


「まさかあんなに燃え広がるなんてね……。魔砲が成功したと思えば良いんだろうけど、あれはもう勘弁してもらいたいわね……」


 水魔法で日を消して回っていたルルもお疲れのようだ。

 シャリアはもう寝ている。


 何があったかと言えば、魔砲を発動させ、放ったのだが場所が悪かった。魔砲は火属性魔法を放つ物のため、当然周りに火の粉が舞う。それが乾燥した草原の草に燃え移ったらどうなるか。あとはお察しの通りだろう。かなりの広範囲まで広がってしまい、ルルの水魔法でも追いつかないくらいだったのだ。ルルの体力を温存させるために彼女を背負って走り回っていたがゆえの今の疲れになるのだ。

 ああ ……眠い。おやすみなさい……







 翌日

「じゃあシャリア、夕方に宿で集合ね」

「はい。じゃあ行ってきますね」


 今日はシャリアとは別行動だ。どうやらギルドなどに用があるらしいのだが詳しくは聞いていない。まあ彼女も一人でやりたいこともあるのだろう。もしかしたらシャリアはあと少しで昇格できるのかもしれないし。


 だから俺とルルは一緒に街を散策する。

と言っても今日は俺たちも用があるから街に出てるのだが。


「そういえばヤマトっていつ頼んでたの?」

「ん?ああ、この街に来て次の日くらいに散策しただろ?その時にね」


 あの時はルルは気にしてなかったみたいだけどシャリアは結構心配していたあの時だ。

 あの時にこの街の細工師に依頼していたものがあって今日はそれを受け取る予定だ。


「そうだったんだね。でも……よくあれを加工できる人がいたね?」


「あれ」は確かに相当の硬さのはずだ。魔物の素材ではあるのだが普通の剣では歯が立たないだろう。加工も同様だ。


「俺も偶然だったよ。適当に加工屋探してたら目に付いたとこがあってさ、そこがあれを加工できる技術もってる人だったんだ」


 都合が良いと言われるかもしれないが本当に偶然だ。


 運がいいのか悪いのか……俺にはわかんないな。


「でもあれって一種のいわく付きよね。物がものだし」

「そうなんだよ。呪いとかなけりゃいいんだけど……ってあるわけねーや。あれ自体が俺たちにとっちゃ呪いみたいなもんだからな」


 と、話していると目的地の細工屋に到着した。


「すいませーん、一ヶ月くらい前に依頼した者ですけど」


 そう声をかけると奥から人が出てきた。この店の主人だ。


「おお来たか坊主、依頼どうり完成してるぜ。そっちの嬢ちゃんは初めましてだな。ここの主人のバーグだ。よろしくな」


 ルルがお辞儀をして挨拶を返すと、彼は俺たちに奥に来るよう促す。

 俺たちは彼に促されるがまま店の奥に向かう。恐らく彼の仕事場なのだろう。いくつもの道具が卓上にちらばっている。


 すると、一つの木箱を彼は差し出してきた。


「この中に入ってるぜ。素材は何かは聞かねえ。だが、相当のもんだ。こんなものを扱わせてくれたことに俺は感謝しかねえ。ありがとよ」


 代金は依頼の時点で既に払っているので関係ない。

 実を言うと、今回のこの細工依頼は大金貨がかかっている。素材持ち込みとはいえ相当の期間がかかり、技術も必要だからこの値段だそうだ。だから仕方なく初めてあの日以来屋敷から持ってきたお金に手を付けた。王都に行くまでは使わないと決めていたが……今度稼いだお金で補填するとしよう。


 俺がそんなことを考えているとルルはいつの間にか箱から取り出してそれを眺めていた。


 それは漆黒のネックレスだ。本体は黒の楕円系に表面に細かなルーン文字が彫られている。そしてチェーンも黒く細い革紐で出来ている。


 そう、これはあの日にガルマさんから託された黒龍の鱗だ。


「ねえヤマト……これって……」


 そう言うルルに対して俺はそっと頷く。バーグさんはその様子を見て満足気だ。どう考えているのかは知らないが、まあ……訂正はしなくて良いだろう。雰囲気は大切だと俺は思う。


「なんというか……忘れないためだ。と言っても忘れられるわけじゃないけどな。ただ、ガルマさんが命を賭して俺たちに預けた仇の一部だ。場合によっては役に立つかもしれないと思ってね。防具とかに仕込むのも実力的に今はおかしいから持ってても違和感がないネックレスにしてみた」


 細工屋を後にした俺はルルにそう伝える。 

 これはオシャレでもなんでもない。ただの戒めに近いものだが……実際は意味は特にない。持ってたって奴を殺せるわけじゃないのだから。



 その後はルルと一緒に街の食堂で美味しい定食を食べたり、雑貨屋を物色したりして休暇を楽しんだ。無論、ネックレスは首につけてある。ちなみに、ハンタータグもネックレスに通してあるからだ。




「シャリアは居るかな?」

 俺たちはシャリアを迎えに行くついでにギルドに様子を見に行っていた。

 しかし、ギルド内が騒がしい。何かあったのかな?


「あ!ヤマトさん、ルルさん!大変です!」


 ギルドに入るとこの街で馴染みの受付嬢がこちらに駆けてきた。


「ど、どうしたんだ?そんなに慌てて」

 かなり慌てた様子の彼女を落ち着かせながら声をかける。


「そ、それが……」


「それが?ほんとに何があったんです?」

 ルルも気になるみたいだ。まあ……こんなに騒がしければ気になるか。

 ところで……何故かギルドの中にいるハンター達がこっちを見てきてるのは何でだ?


「シャリアさんが、龍の元に向かってしまいましたぁ!」


『っ!?』


 俺とルルは驚きを隠せなかった。

 いや、そもそも何故シャリアは龍の元に向かったんだ?


「実は先程、調査隊の人達が定期報告に来て、龍の存在が確実と報告があったんです。本来ならギルド長に直接伝えるべきなのですが間違ってここのホールで叫んで報告したんです。そのときちょうどシャリアさんがギルドに来てたのですがその報告を聞いてすぐに出ていってしまったんです。追いかけてくれた人もいたのですが追いつけず……そのまま街の外へ、森の方へ走っていったそうです」


 なるほど。なら龍の元に向かったと思っていいだろう。それにしても……彼女は何故?


「ヤマト、どうするの?」

 

 ここで追いかけたい気持ちもあるのだが、場合によっては俺たちが命を落とすことになりかねないのだ。俺とルルは命を捨てるのは黒龍の時と思っている。つまり、今はここでじっとしててもいいのだが……


「ルル、準備してくれ。三十分後に出発だ。すみません、馬を一頭貸してくださいね」


 俺はそれだけ伝えるとギルドを出て宿に向かうのだった。





 


 森の中、某所


「はっ、はっ、はっ、はっ……」


 白い影が森を翔ける。

 地を駆け、枝を伝って行く姿は正しく翔けていると言っていいものだった。


「……お父さん、お母さん、待っててね。それに……ヤマトさんにルルちゃん、ごめんなさい」


 彼女は息も切らさず呟いている。


「お爺ちゃんに村のみんなも……待っててね。今……仇をとるから……っ!」


 そう言うとさらに速度が上がるのだった。

今日の連続投稿はこれでラストとなります。

明日もまた連続投稿やっていきますので。

ブクマ等頂ければ嬉しいですよろしくお願いします

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