四十七 北部へ
ディーナの表情が真剣なものに変わる。
「何があった?」
「昨日ね。街中の人達が話しているのを聴いたんだよ。王国準裁司が兵を率いて、北部に繋がる山中で異形討伐を行うって」
エリッサの言葉の続きをウェルグが補完する。
「それで僕とエリッサは、王国準裁司が兵を率いて進軍しているのは、北部の王都に攻め込むためだと思ってる」
「確かに、その可能性が高いな。じゃあ、早速出発しよう。早く知らせなくてはな」
「ディーナ。兵の進軍のことなんだけど、昨日には、この都市ヴェークシュタットを通り過ぎてるの」
「そうか······」
(北部に行くには、もう一つ道があるが遠回りになるか。やはり、行きの時の道を行くしかないだろう······)
考えが纏まったディーナは声を張り上げる。
「今、ここで話し合ってても仕方ない。急ぐのが先決だ。出発するぞ!」
三人は宿屋を出ると、食料と水を揃え、貸し馬屋にて馬を借りる。
そして、都市ヴェークシュタットを出発した。
三時間後、ヴェークシュタットとベルクを繋ぐ街道沿いにて。
馬を走らせながら、ディーナが口を開く。
「それにしても。こうしてお前達と、国を救うために動くなんてな。最初に出会った頃には想像できなかった」
「わたしもだよ」
「僕も、こんなことになるとは思わなかった」
エリッサとウェルグは微笑を浮かべている。
「······ペースを上げるぞ」
ディーナは、馬の駆ける速度を上げる。
「二人共······礼を言う」
「何?ディーナ?」
エリッサは、聞き返す。
「なんでもない······」
ディーナは、微かに優しく口角を上げた。




