四十六 いつもの
室内に三人の男女がいた。
ベッドに横たわる赤い髪の女性。
その端に座る、波打った金髪の少女。
表情からは、心配と焦りが見てとれる。
窓際に立って下を眺める少年も、平静に見えて少女と同様らしい。
雰囲気に緊張感がある。
「······うっ······ここは?」
ベッドに横たわっている女性が目を覚ます。
「ディーナ! 目を覚ましたんだね!」
金髪の少女は思わず、首に腕を回し抱きつく。
「エリッサ······? ウェルグも······。······エリッサ、悪いんだが放してくれないか?」
「ごめんね」
エリッサは急いで離れる。
「ところで、ミーフェアはどうしたんだ? ディーナ」
「······ミーフェアは······」
(そうだった。あれは······夢じゃなかったんだな)
ディーナはウェルグの質問に答えられないでいた。
すると。
「どうしたの? ディーナ?」
エリッサの心配する声が、彼女の耳に届く。
ディーナは、意を決して口を開く。
「実はな······ミーフェアは······スパイだったんだ。王国準裁司ケルヴィンのな」
エリッサとウェルグは、話が突飛過ぎて、うまく呑み込めない。
「それって······どーゆこと? 何があったの?」
「ミーフェアが、彼女が言ったんだ。『私は、こちら側の人間です』と······」
ディーナはそれだけ説明しただけで、これ以上話そうとしない。
二人は、まだ良く分かっていないが、ディーナの言葉を信じるしかないと思った。
エリッサはウェルグに目配せをする。
わたしに任せて、と。
「······それでディーナはどうしたいの?」
「どうするとは?」
「ミーフェアのこと」
「どうするもなにも、彼女は自分から行ってしまったんだ。なにも出来ないだろう······」
「それは、本心?」
「······ああ、本心だ」
「嘘だよね? わたしは、ディーナが簡単に諦めないって知ってるよ。過ごした日数は長くないけど、ディーナはいつも全力だった。だから、いつものディーナに戻ってよ」
「あたしは······。もう良いんだ」
「何が良いの? 諦めちゃうの? そんな簡単な仲だったの!?」
その言葉にディーナは、右拳をベッドに振り下ろす。
「ミーフェアは親友だ! 諦められるような簡単な仲ではない!」
「だったら答えは決まってるよね!? なんで追うって言わないの!?」
「それは! ······それは······。ミーフェアは、あたしとの関係は嘘だと言ったんだ。······追ったところで戦いになる」
「じゃあ、無理にでも連れ戻そうよ。わたしとウェルグも手伝うから」
エリッサは近づき、両手でディーナの右手をそっと包む。
「ね?」
「エリッサ······。なんで、そこまで」
「前に、ディーナのこと認めてるって言ったよね? そーゆところや全力なところが好きだからかな。だから、いつものディーナに戻ってほしいんだよね」
エリッサは優しく微笑む。
「そうか······。ありがとう、エリッサ。あたしは、ミーフェアを諦めない」
「それじゃあ」
エリッサの表情が、安心したように輝く。
「ああ、ミーフェアのところに行く」
「良かったー。それにしても心配したんだよ。ディーナを発見した時、頭から血を流して倒れているから。しかも、三日も寝たまま起きないし」
「あたしは、三日も寝ていたのか」
「エリッサ。あのことを話さないと」
ウェルグが促す。
「そうだった! あのね、ディーナ。王国準裁司が動き出したんだ」




