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タバコ畑に風が吹く  作者: るりまつ
11/17

パパ

 困ったことに、ママは近ごろ、もっとすっごく綺麗になった。

 そのせいかな。なんだかパパも、もっともっと、ものすごく機嫌が悪い。

 

 もちろんママは前からキレイなんだけど、崖の上のレストランに行く日は、とっても丁寧にお化粧して、まつ毛もくるっとくっつけて、鏡の前で何度も何度も、お洋服を着たり脱いだり。

「これはどう?こっちはどう?」って訊いてくるから、ボクなんかもう、早く行こうよ、ってあくびが出ちゃいそう。

 

 そうして、パパがお仕事から帰って来る頃までには、お化粧を洗って、まつ毛も取って、いつものお洋服にエプロン付けてるんだけど、なんだか変だなって、きっとパパには分かっちゃうんだ。

 だって、夜ゴハンの最中も、電話をチラチラ見てため息ついたり。パパが「お茶」って言ってるのに、全然聞こえてなかったり。


 だからやっぱり、ケンカが始まる。

 パパが机を叩くのが始まりの合図。

 ボクはそうなるとどうしようもなくって、パパが怖くて怖くてどうしょうもなくって、急いで二階のお部屋に走って戻って、ベッドの上で丸くなる。

 それでもパパの怒鳴り声は聞こえてくる。

 それに言い返すママの顔は、きっとすごいことになってる。


 聞きたくない!見たくない!


 そうして両手で耳を抑えて、目をぎゅっとつむると


 カラカラカラカラ


 音が聞こえて来る


 カラカラカラカラ


 すると他には何も聞こえなくなる


 カラカラカラカラ……  


 ボクは箱の中の小さなキャラメル


 誰もボクの箱には入って来れない   


      


          カラカラカラカラ……





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