科学サイド 人智の先への監視
「エデンの話は聞いたことがあるだろうか……世界の始まりを告げるセフィロトと呼ばれる樹に御使いであるアダムとイブの存在を……この話には様々な言い伝えがある。つまり、世界はいくつもの分岐の果てに一つの世界を選択しなければならなかった」
「博士が考えた仮設では世界は複数あったという事ですか? そんなバカなことがあって……すいません。言葉が過ぎました」
「いや、いいさ。信じられないのは当然だ。私が調べた可能性について簡単に教えてやるよ」
研究所の薄暗い資料室で白衣の男二人がパソコンのファイルを開いた。
― 人の心理の中で神の存在は各国で共有されている。
― 人種・教派により、崇拝する神は異なるが存在は否定できないこと。
― 空想の産物が人へ与えた影響についてファンタジー世界の探求。
「なんですかこのファンタジー世界の探求とは、完全に科学の範疇じゃないですよ」
「それはそうだろうな。ファンタジーは非現実的な世界観と捉えたものだからな。では、そこに住む者からしたら我々の世界はどんな世界に見えているのだろうかと疑問ができるのではないか」
「ごめんなさい。難しすぎます」
「そうか……」
「なによ、男二人明かりもつけないで」
「眩しっ。なんだ、雫か……」
「雫か……。じゃないですよ。博士が見つけた彼女が今日教会に入りましたよ」
「今日教会って。ダジャレにいや、ごめん睨まないでくれ」
「そんなつまらないこと私は言いません。竜胆博士じゃないので」
「つめたいな」
「もしかして竜胆博士と雫さん二人は付き合って?」
「そう実は。な」
「は・か・せ! 藤堂君もうのみにしない。と、言うか何でそんな発想するかな。まだ、博士とは何もありません」
「すみませんでした。ところで博士が見つけたその彼女がどうかしたのですか?」
「そうだね。率直にいうなら仮想世界を現実に置き換える過程に彼女が関係していると見ている」
「では、教会に行く必要性とは何ですか?」
「君、質問多いな。教会は言わば異世界に最も近い空間。我々の世界にも通用する呪術で世界に亀裂を入れてもらうのよ」
「そんなファンタジーみたいになることなんて」
「なにを言って。俺たち人間は少なくとも呪術は使えてるぞ。それが大きいか小さいかの差だけだ」
「まったく頭に入って来ません」
「簡単に言えば占や宗教などで人は信じたり信じなかったりするものだろ。それが呪術の起源に近い」
「心理学的要素を踏まえている。そうか……確かに言われてみれば」
「でだ。実験を依頼してみたんだ」
「博士。これが頼まれていた女性のプロフィールデータになります。モニターに出します」
「名前は玖遠黎華。両親は不明。お子さんが一人。名前は玖遠刻夜といいます。ただ、それだけでほとんど情報が集まらなかったのが現実です。その事と関係があるかわかりませんが、周囲の住民の記憶が彼女の存在を曖昧にしているのではと思い調査した結果ですが……」
「それは気になるな」
「雫さんは何で周囲の住民達が曖昧にしてると考えたんですか?」
「藤堂! 君は空気がよめない訳じゃないだろう……話を聞いてから質問してみろ」
「では、結果何ですが。周囲は彼女の存在を認知すらしていませんでした」
「じゃぁなんで博士達は彼女……玖遠黎華を認識しているんですか? もしですよ。彼女、黎華さんが科学で証明できない存在だとすればそれも幽霊だとしたら、そしたら博士達は他の幽霊を見れますか」
「ちょっと待て。そう。彼女は幽霊ではなく実在しているんだ。つまり、科学で証明できない事象が起きている恐れがある。彼女に関わる何かが認識を曖昧にしている可能性。予想以上な事が起きるかも知れない」
「なんか博士楽しんでません?」
「そりゃそうだ! 俺の考えが正しければだな……彼女は本物の異能力者だそれも魔の理に住む所謂、魔法使い的存在……」
「犯罪に近いが、今後は彼女の動向を探らせてもらうよ」




