無能騎士 【14】
「我が大剣は対象を断罪する大斧。時満ちし月夜に憂いし豹変の猛狼ウールヴへジンベルセルク今この刻、力を解放せよ」
岩を思わせる甲冑を更に剣の解放により狼の毛皮を纏った武装が追加され、背に下げていた大剣は刀身を爪の様な三本の鋭さと切断に優れた大きな刃を形成した。
「ジキルのその姿といい武器といいどっちが魔物かわからないねほんと」
「まぁなそれは俺も否定できない。俺の砂、魔技で練り上げて作る岩にウールヴへジンの毛皮で肉体的にも強化された俺の武装の姿は狂戦士ベルセルクを模しているんだけどな」
「実際ほながイメージした忠誠の儀の戦闘服に上乗せで変化させるなら私の魔法少女でもいけるんじゃないの」
「いやいやむりむり。ノエルのあれは甲冑じゃないから磁力帯びないから魔技でどうこうの領域外だから」
「へぇーなるほどね……。」
「懐かしい」
屋上の三人の前に黒いフード。ローブの男が話しに割り込む。
三人はあわてて距離をとった。
「貴様誰だ!」
全くと言っていいほど三人は男に気づかなかった。
「警戒しないで欲しい。俺はお前達の仲間だ。いや、正しくは仲間だったかな」
(話しかけられるまで気配を感じなかった)
(ほんとこいつ誰なの)
「そもそも俺の居るところに上がって来たのは君達の方だ」
「初めから……。うんなはず。」
「嘘!?」
「お前達の認識から抜けていただけ。俺にしたらたいした事じゃない。それより獣鎧を倒すなら手を貸そう」
「見ず知らずの奴にいきなり俺達の邪魔されてたまるか」
「お前らはあの無能騎士。いや、騎士としてはまだ至らんクズを仲間にするんだろ? それに力を貸すだけ」
「なぜその事を」
「お前達が話していたじゃないか」
複雑な笑みを浮かべながら歩み寄って来る。
「何が目的なの」
「目的か。目的はまだ言えん。そうだなとりあえず言うなら道化師に俺を入れろ。セシリー、理事長にも会う場をつくれ」
「貴様はどこまで俺達の事を知ってるんだ」
「知ってるもなにも見てきた全て記憶している全てだ」
「貴様は敵か」
「今は敵ではない。が、俺に従わないならもしくは……。」
三人の警戒はプレッシャーから来るものだ。まるで異質、実力差を肌で感じとっている。
「ジキル。剣を下げて」
「おう、わ、わかった」
「忠誠の儀はほんとおもしろい。お前達は理解して忠誠の儀を使っているのか?」
「……。」
「忠誠の儀はこの国発端の呪いと言っていい。学園にいるものは使える。なぜだと思うそれは入学と同時にギフトされるからだ。ほんと素晴らし能力だ。その根源の歴史は知らないだろ。知りたくないか?」
「……。知ってどうするよ。これは正義だ王に仕える騎士を模した能力。精霊……。」
「精霊は忠誠の儀とは関係ないよ」
「一条穂波、忠誠の儀の時、オーダーを口にしただろ。それがこの忠誠の儀の本質だ。オーダーを受け入れた騎士はどうなる?」
「オーダーに従わないとならなくなる……。わ」
「そう、騎士は指示を遂行しないといけなくなる。つまりは騎士も王次第だということ。もうそろそろ動き出さないと駄目だろジキル。誓約が起きる。やたらにオーダーありの忠誠の儀はしないほうがいい。オーダーするならほんとの王だけでいい」
(すまん一条あいつのせいで動けない。忠誠の儀解除してくれ)
「汝、ジキル・ヴォルフガング・ハイド我の剣よこの刻を持ち鞘に眠れ」
武装は解け、軍服に姿を戻す事になったジキル。男を前に何もできない自分に屈辱を実感する。
男は何もやっていない。話しをしているだけだ。それでも力の差が実戦経験のある三人を跪かした。
男は三人の前に手を向け言う。
「我は、天薙紅刃。記憶を司る者。俺に従え」




