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漆黒の花嫁  作者: つかさ
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悪夢

「ギルティ、君何か感じる?」

「……いや、何も」

「おかしいな……」

今日の任務は北東の砂漠ガシリアでの任務だった。強い悪魔のはずなのに何故か気を感じられない。敏感なギルティでさえ何も感じないと言う。

「まさかとは思うけれど、逃げた?」

「それはないでしょ。まぁ、もしそうだったとしても追いかけるのが俺らだよ」

「そうだね」

それにしても砂漠とは困ったものだった。隠れる場所も無ければ戦いに使えそうな障害物もない。身をさらけだしているためふいに攻撃を受けることになる。危険で討伐に不利な戦いだ。それに砂漠の夜は寒い。常に動いとかないと身がなまる。

「けれどねぇ」

なんの前ぶりもなく話し出したギルティに耳を傾ける。

「かすかに風がある。自然の風じゃあない。何か大きなものが動いた時に起こる風だ。この先のどこかで何かしら行動を起こしてるのは間違いないよぉ」

「音も何もなく風が起こる?かなり大きいんじゃないか?」

「だろうね〜。やつらもそう感じているから引き返さないんだろうよ」

くいとギルティが顎で指したのは他のデスノア達だ。

「どんな悪魔がいるのやら」

ギルティと僕はよく任務をかぶせられる。多分ヴァルが動いてくれてるんだろう。本当にごくたまにしか別々にならない。

最近ようやっとギルティが穏やかになった。少しずつデスノアとしての僕に気を許しているのだろう。

「さんむーぃ。あんなに昼は暑かったのに」

「君は寒さに慣れているだろう」

「そんなことないよぉ。だって俺には寒いと感じさせないように必ず戦闘の時は無温だもん」

「……なら僕らにもそうしてくれると嬉しいんだけどね」

「やだなぁロア、デトランとしての任務ならそうするけどデスノアにまで優しくしようとは思わないよ〜」

「……君らしいね」


その時だった。


「!?」

「なっ……」


どのくらいむこうだろうか。大きすぎて確かなものは分からない。だがはっきり分かる。


「嘘だろ……! あれは……っ」

ギルティが隣で叫ぶ声ももはや耳に届かない。直感でそれがなにかはっきり分かった。




「デラマガス」




とても大きな闇色の龍だ。頭部から針のようなトゲが尾までびっしりついている。その瞳は紫に光り、こちらを見つめていた。


そう、見つめているのだ。




息子である僕を。




それが何故僕を見ていると断言できるのだろうか。それは分からない。全てが直感だった。そして何故、


『聞こえるか、我が息子よ』


言葉が聞こえてくるのだろうか。


「聞こえます。デラマガス」

口からするりとでた言葉。ギルティが隣でたじろいだ。きっとギルティにはデラマガスの声は聞こえないはずだ。

『さすが我の血を引く息子。一度も意思の疎通をしていなくとも通じるか。待て、そちらへゆく』

反射で力を解放しギルティを遠くへ投げやった。受け身の体制で着地したギルティは何も言わない。近寄ってくる珍獣と、それに動じずもはや語りかける僕に驚いて声もでないのだろう。

ものすごい風と音。デラマガスが羽ばたくたびに舞う砂漠の砂。嵐のようになり、辺りが見渡しずらい。だがデラマガスの闇色の体ははっきりと確認できた。

真上を見上げなければならないほど顔は高く、翼を広げれば砂漠を覆えるのではないかと言うほどに大きい体。そして幾度もの戦いを物語る深い傷跡たち。牙の見える口が威圧的に開かれた。

『久しぶりだな。今日はお前に聞かねばならぬ事があった』

「……悪魔としてか、人としてか、どちらで生きるか、ですね?」

『その通りだ息子よ』

「どうしてわざわざ問いに来たのです?あなたは僕が人として生きると言うと分かっていたのでは?」

『お前は聡い。分からないか。これを言うに我とて少しはためらいがあるものよ。お前は知らんだろうが我はお前を見守ってきたのだ』

「なぜ……?」

『お前が人として生きると言うのなら、我はお前を殺さねばならぬ』

「なるほど……」

『息子よ。我はお前を創り出した。来たる日の為に人間に子を腹ませ、我の力を宿した可愛い子どもをこの手で、育てるはずだった。それがどうだ。あの女は我に魔法をかけたのだ。少しの間封ずる魔法を。そして村へ帰り、そこでお前を産みよった。だがそれまではよかったのだ。お前は閉じ込められ、人間への憎しみが芽生え、我が迎えに行く頃にはすんなり賢い下部になっていたはずだったのだから』

そこまで言うとデラマガスが唸った。

『しかし再び邪魔が入った。お前は愛を知り、人を憎まなくなった。その手であの悪魔を殺しても、その次には友情が、師弟愛が芽生えた。なんという誤算だったか』

「……あなたは、私を殺しに来たのですか?」

『どう思うか?息子よ』

「生かしたままにはできないでしょう」

『確かにそうだ。お前をほっておけば我の力を継いでいるが故にこの先危険な存在となる。その力はまだ解放するからな』

「……他に何があると?」

『お前はこの世の悪魔を愛しているだろう』

「……っ」

『隠さずとも良い。どちらにせよ我の声はお前にしか聞こえぬ』

「……間違いとは言わない」

『悪魔を愛している者が悪魔を滅ぼせるか?我は見えぬ未来を好む。全ての悪魔に慈悲をかけてきたお前が、悪魔のお前が。我の歪んだ血を引くお前が、善を手に戦えるのか?見て見たいのだ、その答えを』

「できると思いますが」

『言ってられるのは今のうちだぞ。忠告してやろう。あとせいぜい5ヶ月もてばいい方だ。お前は自我を失うぞ』

「!?」

『悪魔の血が濃くなってきておる。我の血は殺しで染まっておるからな。強力なものよ。制御しようにもさぞ難しいだろう』

「そ、んな……っ」

『そこでだ。お前の命はここではとらぬ。その代わりもがくのだ。もがいてもがいて、我を楽しませろ。我はお前を見ておくぞ』

「……制御しきれず暴走すればどうなるのです」

周りに聞こえないように小さく言う。

『我を呼べ、息子。ここへ来ればまた現れてやろう。今教えるのではなく、時がくれば教えてやる』

「あなたを味方ととるのは過ちでしょうか」

『好きにすれば良い。だが決して人間の味方へはつかぬ。我はお前の父とて悪魔を代表する魔獣なのだ。味方にはなれん。他の魔獣達もそうなればほってはおかん。我一人で残りの魔獣を相手にするのはかなり無理がある』

「ならいつかはあなたと戦う時が来るのでしょうか」

『我はそこまで鬼になれぬ。若かりし頃だけだよ世界を荒らしたのは。しっかり感情もそなわっておる。お前と戦う時が来たとしても、その時は我はお前を傷付けれるのか分からぬ。……我デラマガスが父であったこと、誇りに思うが良い』

僕は頭を垂れた。

「感謝いたします、父よ。聞きたいことがあるのならその時もお呼びしてよろしいでしょうか」

『来るがよい。ただし空が赤い時は引き返せ。その時は我一人とは限らぬ』

「分かりました」

『さらばだ息子よ。また会おう』




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