闇の先で
「ロア、お前大丈夫かよ」
「大丈夫だ」
「いつ寝てんだよ。夜中はどーせ任務だろ。昼間もずっと起きてんじゃねぇかよ」
「気にしなくていい」
「気にするにきまってんだろ! お前そのままじゃ倒れてもおかしく……」
「ほっといてくれ!」
ひつこいグラルダーにそう言い放つと、僕はさっさと前を歩いた。足音が追ってこないということは怒っているのだろう。
確かにここ最近睡眠という睡眠はしていない。夜は任務に行くと朝に戻り、デスノアということが知られないようデトランの様に昼は動く。ゆっくりできる時間もなければ、もちろん寝れる時間もない。けれどそれはどうにかできた。思ったより体が耐えてくれるおかげで倒れずにはすんでいる。僕はそんなことより違うことに気がいっていた。
ルルーシュ。あの子をほとんど一人にさせている。ルルーシュは朝に僕が帰るのを待ち、部屋から出て行く僕を見送り、戻ってきてまた出て行く僕を見送った。あまり他のデトラン達と接触したがらないため、外には出ない。だから本当に一人なのだ。ルルーシュが僕の部屋に来てから6ヶ月がたったが、だんだんとルルーシュの事がわかってきていた。
普段おっとりしてわがままなんて言わないが、実はとても寂しがりやだと言うこと。一人にしすぎると朝みた時、ルルーシュの頬には涙の跡がついている事があった。
食は偏食で、見ている限りは野菜が嫌いなようだった。意外と肉食だと思う。
ルルーシュはたまにとても可愛らしく笑う。それが頭を撫でた時だという事も知っている。
意外と寂しがりやで、照れ屋なルルーシュ。だんだんと僕はルルーシュをほっておけなくなっていっている。まるで妹のようだった。
ふとある扉が目に入って回しかけたドアノブから手をおろした。
「……お前にも、な」
グラルダーには最近何も話してない。もともとあまり多くは話さなかったが、それでも通じ合う何かがあった。僕の中では初めて心を許せた二人の人間の内の一人。グラルダーもまた、自惚れでなく僕にたいしてそういった感じだろう。そんなグラルダーに突き放してばかりでまるで他人事の様に接している。
ため息をついて扉を開けると、すぐにスリッパの音が走ってきた。
「おかえりなさいっ!」
「あぁ、ただいまルルーシュ」
どしっとお腹に衝撃が走る。抱きついてきたルルーシュの頭をなで、僕は優しく言った。
「今日は夜までゆっくりできます。多分悪魔の出現が低いと思う」
「ほんと!?」
そういって顔を上げたルルーシュは本当に嬉しそうで、思わず頬がゆるんでしまった。
「なにかしてほしい事はありますか?いきたいとこは?」
「ううん、一緒にいてくれたらそれでいいの」
そう言ったルルーシュにどこか安心感を覚える。僕はひょいとルルーシュを抱きかかえ、ベッドにそのまま寝転んだ。
「ロ、ロア!?」
「少しだけこうしてていいですか?」
胸に抱えたルルーシュの肩がかなりこわばっていたが、徐々にとけてきた。
「眠い?」
「大丈夫。寝ないのは慣れてる」
「ロア」
「ん?」
くい、と、ルルーシュがシャツを掴む感覚がした。
「寝ないで」
僕は驚いた。わがままを言わないルルーシュが、まさかそんな事を言うなんて信じられなかった。
それほど追い詰めているのか。
「僕はずっと起きてる。安心してください、ね?」
こくりと頷くルルーシュの背中を優しく撫でてやる。
「……ねぇロア?」
「ん?」
「私ね、ずっと前から、ロアのこと……す……っ!?」
力をこめて抱き締めるとルルーシュは驚いて黙った。
「君の髪はいい香りがするから好きですよ」
「……うん、私も……ロアの髪、好き」
焦った。何を言い出すのかと思ったら、まさか。
いや、勘違いだろう。そうであればいい。
閉ざされた口から出るはずだった先の言葉は、きっと違うものだ。
ルルーシュ……。
いまの僕には君が必要なんだ。闇を駆けるこの汚い僕の、唯一の光。
けれど君がもし今以上の感情を抱くなら、君からも離れなければならない。
僕は、汚れているから。
そういったものに応えれないんだよ。




