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漆黒の花嫁  作者: つかさ
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君の面影

どうして君なんだろう。

どうして過去はつきまとうのだろう。

どうして想いは残るのだろう。

どうして僕は悪鬼なんだろう。

どうして……


僕なんだろう。
















「ただね、一つ命令があるのだよ」

「なんですか?」

「これはデスノアとしての命令じゃない。君への個人命令だ」

ずっとにやにやしていたミスター・ルーカスの顔が、今までで1番にやついているんじゃないだろうか。

「それを命令する前にここで一つ忠告しておこう。今この本部で私が誰にも阻害されず指揮を下せる権力を持っている。それに、私の考えに少なくとも少人数の隊長、そしてデトラン達は賛成の意義を示した。断る術は無い事を承知していてくれ」

「……」

嫌な汗が背を伝った。何をしようとしている……?

「さて、少し待っていてくれるかな?」

そう言うと、静かにノックをした後に返事を待たず扉を開けた。そのままゆっくり閉められてしまう。

「何を考えているんだ、あいつは……」

「ヴァル、少しは落ち着いてよ」

「落ち着ける様な話ならいいがな」

中から微かにミスター・ルーカスの声が聞こえる。相手の声は小さいのか全く聞こえない。その後もちらほら会話した声が聞こえた後、扉が開いた。思わず身構える。

「待たせたね。さぁ、こっちへおいでルルーシュ」

少しためらったそぶりを見せて、ミスター・ルーカスの背からその子は出てきた。









嘘だ。







嘘。










「紹介しよう。君の許嫁となるルルーシュ・フォンデュだ。ルルーシュ、挨拶は?」

「……はじめまして……」

「…………ティラナ……」

「ん?なんといったのかね?」

そこには、ティラナがいた。

いや、ティラナじゃない。ただ、そっくりそのままティラナの容姿。

凝視している僕を戸惑いながら見上げるルルーシュと言われた少女。

「……あ……」

言葉が出ない。何と言っていいのかも分からない。ただ一つ違うのは、真っ黒で艶やかな黒い髪だけ。

ルルーシュの青い瞳を見つめていると、ティラナとの記憶が蘇った。二人で過ごした、あの記憶……。

「……待て、許嫁だと?」

ヴァルの言葉で意識が戻る。そうだ、確かにミスター・ルーカスは許嫁と言った。

「あぁ、そうだ。実はこの子も魔獣の血を引いている。ラディスの魔獣の血をね」

「それと、これと……どうなって、許嫁に……?」

動揺を隠せずに声が震えてしまった。

「これから先の敵に備えて子どもを作って欲しいのだよ。ロトの血とこの子の血が混ざれば、きっと強力な……」

ミスター・ルーカスが最後まで言いきならないうちに、吹っ飛んで壁にぶつかった。ヴァルが殴ったのだ。

「……調子に乗るなよ……。どこまで人を道具扱いするつもりだ!!!!」

「たく……これだから血の気の多い者は嫌いなんだよ」

「黙れ!!!! こんな事許されるはずがない!!」

のっそりとミスター・ルーカスが右頬をさすりながら起き上がった。口の端が切れて血が滲んでいる。

「だから、許されるんだよ。言っただろう?ここで1番権力を持つのは私だ、と」

「この、くそがぁぁぁ!!!!」

ヴァルが叫んでまた殴りかかろうとする。

「ヴァル!!!!」

僕の怒鳴り声にヴァルが止まった。滅多に、いや、怒鳴り声など聞いた事がないから驚いたのだろう。

「もう、いいよ。それ以上やったら追放されるかもしれない。やめてくれ」

「だがこいつはお前を道具として扱ったんだぞ!!」

「最初からそうだったじゃないか。分かってるよそんな事。だから落ち着いて」

「ちくしょう!! ……なんでだ……!」

僕はもう一度ルルーシュを見てルーカスに向き直った。

「子どもを作ったとしても、成長する前に大きな騒動が起きたらどうするんだ?」

僕はルーカスに言葉を崩して話しかけた。もはや敬語を使う様な相手でもない。

「何事も行動第一だよ、ロト。やってみるに越した事はない」

「わかった」

「おい、ロア!!」

「わかったからはやく消えてくれ。あんたを見てると吐き気がする」

吐き捨てる様に言った僕にヴァルは驚いていたが、ルーカスは涼しい顔をしてお辞儀をした。

「わかってくれたならもう何も言わない。それでは、いい報告を待っているよ」

踵を返して立ち去ったルーカスにヴァルが唾を吐いた。よほど怒っているのだろう。

「君、ルルーシュと言いましたね。これからは僕の部屋に来なさい」

「……はい」

か細い声は不安で揺れている。

「ロア、了承するなんぞどういう神経をしている!?」

「しなくてもしても同じだよ。強いものには逆らえないものだ」

「……くそっ!!!!」

バンッとヴァルが壁を蹴った音にルルーシュがびくりと肩を揺らした。

「あの男、いつか殺してやる」

そう言ったヴァルの声色は本気だった。

「そうなったら僕も手伝おう」

僕も本気で返した。そしてルルーシュを再び見る。

「荷物は多いですか?」

「いえ……そんなに……」

「ならここで待っときます。今から荷物を詰めてきてください」

ルルーシュを少しでも安心させようと僕はできるかぎり微笑んだ。ルルーシュはこくりと頷くと、部屋に戻っていった。

「……あの子を殺せば話が終わるぞ」

あまりの言葉にヴァルを凝視した。それに決まり悪そうにヴァルが視線を落とす。

「……本気で言ってるのか?」

「お前がそこまで人生を縛られる事はない。俺は本気で言ったぞ。お前がいいと言うならやってやる。ばれない手段なんて沢山ある」

「駄目だ」

「ならここから逃がしてやる。遠くへ行って自由に生きればいい」

「駄目だ」

「これでいいのか!!」

ヴァルは悔しそうに額を手で覆った。

「1番辛いのは、あの子だと思うよ」

僕の言葉にヴァルは額から手をおろして、くたびれたように僕を見た。

「きっとあの子は僕と同じ暮らしをして、そのままルーカスに拾われたんじゃないかな。だとしたらここに閉じ込められていた事になる。あの子を見かけた事はここではないしね。娯楽を何も知らないはずだよ。その上さらに今度は婚約だ。きっと辛い」

「……お前も辛いと言えば言いものを」

「ヴァル、僕って案外図太い神経してるかもしれない。なんでこんなに普通なんだろう」

「……あの子の姿を見てそれは本気か……?

覚えていたのか。全く触れてこなかったからティラナの容姿は忘れているものだと思っていた。

「本気だよ」

自分でも思ったより落ち着いた声が出た。

「平気だから、もう何も言わないで、ヴァル」

「……っ。お前がいいなら……何も言わないでおこう……」

耐えきれなくなったのか、ヴァルはどこかへ行ってしまった。






大丈夫だ。大丈夫。

何も思わない。たまたま容姿が同じだけなんだから。そんな人探せば世界のどこかに沢山いるさ。

だから、僕は平気。








大丈夫だなんて、嘘に決まっている。ティラナとそっくりなルルーシュを見て動揺しない訳がない。

愛した人と同じ姿に、動揺しない訳がないだろう。


僕は大丈夫大丈夫と、ひたすら自分に言い聞かせながらルルーシュを待った。

やっと登場させれました。

これからは恋愛要素沢山含んでいこうと考えています。

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