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Part 6-2 Succession 継承

お待たせしました!

連載再開です。

毎週1度新話掲載いたします

   ごめんなさいね(ФωФ)ノ奈月にゃんこ

I-95 Baltimore-Washington Highway, Bladensburg, MD 20710, 10:55 Dec. 22nd


12月22日10:55 メリーランド州ブランデスバーグ ボルチモア=ワシトン・ハイウェイ州間高速95号







 ワシトン警察の追跡していたヘリを落としてからハイウェイを問題なく盗んだスポーツセダンを走らせるマリア・ガーランドは助手席のヘラルド・バスーンに問うのを止め口をつぐんだ。



 もうどこまでが本当かとマリーは困惑仕切っていた。



 絶対に銀河団や次元の外からなど嘘だと思った。パトリシアが以前に話してくれたことも何かの夢見たことを勘違いしてると考えた。



 ヘラルドが誘導しようとする目的はなんだとマリーは考え続けた。



 この人がわたしを欺いて何の利益がある!?



 そう考えながらハンドル握っていると助手席のヘラルド・バスーンが背もたれから身を乗り出してサイドウインドの方へ顔を向けたのでマリーは何をしてるのだと横目で見て困惑した。



「マリア、ボルチモアのパトカーが路側帯から追い上げてくる」



 彼からそう言われマリーは眼をおよがせてルームミラー見ると後続のヒュンダイのセダンの硝子(ガラス)越しに路側帯から追い上げてくる明滅する警告灯の赤い光りが見えた。



 寸秒、マリーはアクセル踏み込みターボうならせてWRXを猛然と加速させ始めた。



 直後、右のサイドミラーにフォード・インターセプターのフロントグリルが見えた。



 咄嗟とっさにマリーは右にハンドル切って前走る大型トラックの横に乗ってる日本車を流れ込ませさらに加速すると、路側帯走ってきた警察車両がマリーらの車の後ろへ流れ込んで、さらに路側帯から走ってきていたインターセプターがそのまま路側帯を突き進んで大型トラックの二車線横に走り出た。



「他州にまで手を回していたぐらいだ。国家安全保(NSA)障局は昨日よりも前に計画してたのだろ」



 ヘラルドに言われマリーは返事せず鼻筋にしわ刻んだ。



「巻けるか?」



 そう彼に問われインターセプターを? とマリーは眼を丸くした。



「ツインターボV6で400馬力もある車を水平対向4気筒シングルターボ268馬力で巻く? GSGー1622LRでFN SCARーHと撃ち合うようなものよ!」



 言いながらマリーは瞬く間に大型トラック追い抜き、自車線の先に走るフォルクスワーゲン抜く為に元の車線に毎時110マイルで爆速した。その彼女たちの車を後方から一台のインターセプター、トラック反対側の左路側帯を猛然と1台のインターセプター2台のダッジ・チャージャーが追い上げてきた。



 マリーは車線を変える際に真後ろを追い上げるインターセプターの後方にさらにもう一台がいるのをルームミラーで一瞬確認し舌打ちして言い捨てた。



「チッ! 5台もいるじゃない!」



 するとヘラルドがぼそりと告げた。



「大人気──」



 マリーは顳顬こめかみに青筋浮かべこの見てくれ若い奴を殴ってやろうかとハンドルを力込め握り締めた。



 乗ってる警官らと撃ち合うのなら絶対に負けないが、元より殺す気がまったくないので下手なことを出来ないとマリア・ガーランドは意識の一部を振り向けパラメーターを見回し後続と路側帯の先頭のパトカーのエンジンシリンダーに入る燃料混合気の比率をわずかに変えた。



 薄くなった混合気にシリンダー内の温度が急激に高まりピストンヘッドよりも体積の小さなバルブヘッドが熱を逃がしきれず変形しバルブシートとの密着をなくし急激に馬力失いインターセプター2台は大きく減速し始め後続する警察車両も速度を落とした。



 マリーは左とルームミラーへ素早く顔振りを向けパトカーがいなくなるとアクセルを緩め1番左の遅い車線へとハンドル切り前後の走行車の間に入った。



「パラメーター操り2台をエンジンブローさせたな。その力がなかったらどうした、マリア?」



 問われマリーはこんな時に何の冗談かと思った。下がらせた警察車両の内3台がすぐにまた追いついてくるかもしれないのにと考えたが不本意に応じた。



「仮定の話なら幾らでも選択肢はあるでしょ。私ならここで大きな事故になるようなことは避けて警察車両を巻くためにハイウェイを一度下りるだけよ。その方が自由が利くから」



 言いながらマリーは途方もないパラメーター群を探り警察の追跡ヘリを探った。ルナの記憶に機種2つがありマリーは呆れかえった。フェアチャイルド・ヒラーFH1100がほとんどユーロコプター・エキュレイユに交代しているはずだった。だが近隣空域にまだエキュレイユはおらずマリーは運転に集中した。



 何度もヘリを落としたくなかった。



 エンジン不調で降下させるにもオートローテーションで下ろすには高度が低すぎあまり着陸地点も選べず乗員や地上にいる人に危険がおよぶ可能性が大きい。



 コラテラル・ダメ(付随被害)ージは最小限に押さえないと関係のない人命がいつ失われるかとマリーは不安だった。



 ボルチモアの都心は近かったが、ニューヨークはまだ遠く逃げる時間に比して警察も執拗になってくる。



 もっと上手くやらないと、とマリーは考えて途中を省略すればいいのだと気づいた。



 異空通路ことわりのみちを連続させてニューヨークまで向かう方が車で行くより安全だ。正直言って異空間通路(ポータル)の延伸距離の限界値も万が一宇宙空間に繋がったらと心配しこれまで試したことがなかった。



「ボス、本社ビルまで異空門(ポータル)で戻りましょう」



 そうマリーが切り出すとヘラルドが断った。



「いや、止めておこう。マリア途中で君に会わせたい人がいる」



 この期におよんで面倒な方を選択するとマリーは眼を座らせたずねた。



「誰よ?」



「その時を楽しみにしたまえ」



 もったいぶってとマリーは鼻すじにしわを刻んだ。



 もともとヘラルド・バスーンが嫌いだとか、馬が合わないとかではないのだが、あまり会話した覚えもなく恐らくはこの五年で今日が一番会話しているとマリーは思った。



 人はコミュニケーションを取らないと健全な間柄を構築できない。



 もっと積極的にヘラルドと関わるべきだったとマリーは思った。



 この人が戦いの場に私を引きり戻したのだ。その意図は汲んだつもりだが、それはあくまでもつもり。自分の思い込みでしかない。ニューヨークの核爆破を阻止するだけなら私でなくとも前任のフローラでやり遂げることができただろう。



 この人は時々、私の未来を知ってるような口振りで困惑させる。



 その意図を知るにはもっとこの人──ヘラルド・バスーンを知る必要があった。



「マリー、この先一マイル先にボルチモア警察が走行阻止線を築いている。発砲するわけでなくスパイクストリップを使うつもりで────」



 まただとマリーは驚いた。議会議事堂から逃げだして路駐車を盗って走りだした直後、警察車両が近づくことを言い当て、ハイウェイでもこれで2度目だった。



「ヘラルド! どうしてわかるの!? 高次空間のパラメーターが読めるの!?」



 問われ会長は困惑した顔を運転席へ向けた。



「いや、今はそんなことよりインターもない状況で1分掛からずに警察らが待ち構えている場所に────」





 いきなりマリーはWRXを加速させ右の壁面へとハンドルを切った。





 コンクリートの壁が迫った寸秒、ヘラルドが顔をこわばらせた刹那せつな、前方にライトブルーのスクリーンが展開し厚いコンクリートを粉砕機し周囲へ弾き飛ばし暴速の赤いセダンはまばらな雑草生えた斜面を多量の土埃つちぼこり舞い上げながら駆け下った。



 ハイウェイの側道に蛇行して走り込んだスポーツセダンの四輪を派手に滑らせマリーは巧みにハンドルさばいて車を落ち着かせ目立たぬ速度で走らせた。



 助手席のヘラルドが無事かマリーが一瞬カオムケルト彼が驚いた顔でじっと見ていた。



「君はいつも守護精霊の力をそんな粗雑に扱っているのか!?」



「粗雑!? 失礼ね! シルフィードのたみは丁寧に接しているわよ」



 わめきマリーは前へ顔振り向け右手をハンドルから放し中指と親指をすり合わせ指を鳴らした。



 瞬間、赤のWRXがフロントバンパーからリアまで一気にメタリックブルーに染まり抜いた。



 ヘラルドが何か言い出すのかとマリーは顔をわずかに右へ向けると彼が呆れ顔で見つめていた。



「思ってるなら言いなさいよヘラルド!」



「何をだ!?」



「パラメーター操作をそんなことにとか!」



「ああ、そうだ。パラメーターをそんなに雑に────」



 マリーはもう一度指を鳴らすと、今度は日本車がフロントから一瞬でダークブルーのダッジ・バイパーに豹変した。



 野太い重低音の排気音響かせ始めた室内でマリーはまだ会長とやり合った。



「雑ではないわ! いつもいつも来る日も来る日も練習してる。今ではグローブマスターほどの大きさのものまで生きものでなければ正確に具現化できる」



「じゃあ、赤いセダンを盗まなくても良かったじゃないか」



 そうだ。ヘラルドが嫌いなわけではないが、この人のもの言いに腹が立つのだとマリーは彼に応えず眉根寄せて思った。



 まるでルナのように嫌なとこを的確に突いてくる。



 マリーはラピスラズリ色の瞳を座らせるとアクセルをベタ踏みした。



「せっかく車を偽装して、また警察に目をつけられるつもりか?」



 マリアは一度下唇噛むとつぶやいた。





「早く──早く本社に戻りたいのよ。あなたの特許を奪おうと政府が本社やカリフォルニア・ラボに土足で踏み込んでくるのを止めたいのよ────」





 それを聞いてヘラルドは数回瞬まばたきし視線を落としてしばらく──わずかな間考え込んでマリーに応えた。



「大丈夫だよマリー。政府はそれどころではなくなる」



 それどころではなくなる?



 この人は私の知らぬところで何を仕掛けたのだとマリーは思って問い質した。



「ヘラルド、政府に対して何をしたの? 政府をどうやって揺さぶったの?」



 マリーに問われヘラルド・バスーンは短くククッと笑った。マリーは驚いて右へ一瞬へ一瞬顔を振り向けると彼が合わせるように顔を上げた。



「合衆国は軍事力でどうすることもできないジレンマに溺れることになる」



 寄りによってこの人はテロを始めたんじゃないのかとマリーは臓腑が締め上げられた。



「いや、そんなことはしないさマリー。君は私利私欲と宗教と思想を押しつける世界の頭首から国境を奪い団結させるんだ────それどころじゃないと──ね」





 マリアはふとパトリシア・クレウーザの言った宇宙の外から攻めてくるといった何ものかを思いだした。





 ダークマターかと一瞬思い、そんなものが宇宙の外から入り込めるはずがないとマリーはブレインリンクで同期したルナの知識を引っ掻き回した。



 運転しながら意識をパラメーターに集中させ、その遥か外縁の領域を確認する。



 値が広い領域で同値数に揃いその行列領域がわずかに変移していることに気づいた。



 大きさで言えば186マイル──か。



 27億マイルと遥か遠方の何か。



 何だろうと思ってもパラメーター群からは見たこともないそのものを想像すらできず大きさと距離だけをつかみ取りマリーはそれが侵略者なのかと困惑した。



「ヘラルド、太陽系外縁に近い場所にとんでもなく大きな何かが、海王星のそばからよ、それが加速し地球公転軌道に交差した三次元曲線ベクトルで近づいてきてるわ。もしかして合衆国が軍事力で対抗できないってそいつのことなの?」



 すると彼は驚くでもなく平然と説明した。



「いやそれは連合の最高武力である銀河団攻略艦を排除するデスロイヤルト級駆除体だろう。地球で言えば戦艦に近い。名前までは知らんが、宇宙外攻略者とは別物で言わば外部発注の下請け的集合体から差し向けられている。無論、それらは商業的関係ではなく同盟ですらない」



 連合? 何の? 銀河団攻略艦? 聞き覚えがあった。



 アストラルという名を思いだしたマリーはパトリシアがリンクさせて見せてくれた光景を思いだした。





 三百六十度球形艦橋(ブリッジ)





 見渡すは星々の戒律。





「そいつ地球に何かしようとたくらんでいるってこと?」



 そうマリーが問うとヘラルド・バスーンは気難しそうに抑揚押し殺した声でマリーに教えた。



「何かしよう? 銀河団攻略艦とともにこの星系をほふりさるだろう。デスロイヤルト級なら太陽系殲滅に20時間掛からない」



「回避策は? 対抗策はないの!?」



「君がアストラル・マーク(スリー)に乗り込み彼女を指揮して駆逐体を殲滅するしかないだろう」



 アストラル・マーク(スリー)



 そうだわ。



 あの自我を持つことを許されたというまるで世界が表面に張りついているような恐ろしく反射率の高い鏡面の巨大球体の名だった。



 私と瓜二つの顔をし古代ギリシャの御子のような白いキトン似のチェニックみたいな服装のAI体。





 いきなり急ブレーキを掛けダッジ・バイパーが白煙広げ短距離で停車した。







 そのバイパー前方数ヤードにマリア・ガーランドが想像していた女そのものが立っておりそいつが微笑むと運転席サイドに回り込んできて腰を折りサイドウインドが操作もしないのに勝手に下りた。







「初めましてマリア・ガーランド。お久しぶりですヘラルド。三十八年ぶり」



 丸くした眼を向け女社長が生唾呑み込むとその道路に場違いな髪の色と髪型服装の異なる顔が瓜二つの女が告げた。



「私はアストラル。挨拶はしたわマスター。このままお話し続けます? それともダッジを路肩に寄せて外でお話しなさる?」



 なんだこの威圧感はとマリーは警戒した。



 実際、この女がアストラル・マーク(スリー)なら威圧感どころではない。破壊力で楽々と私の上をいく。



「車を路肩に寄せるから──」



 そうマリーが告げるとアストラルが微笑んでドアから離れた。マリーは路肩外に未舗装の空き地があるのでそこにスポーツカーを頭から突っ込ませサイドを掛けヘラルドを見つめた。



「彼女が会わせたいと言った人だよ」



 人!? ええ、人でしょうよ。M-8マレーナ・スコルディーアと同族のアンドロイドと思ってマリーはエンジンを掛けたままドア開き車から下りてまずたずねた。





「アストラル、マスターってどういうこと?」





 空き地に歩いてきたその女がマリーに教えた。







「あなたは継承者であり、銀河連合防衛艦隊所属最新銀河団攻略艦アストラル級第3番艦であるわたくし指揮官(コマンダー)だからよ、マリア」







 聞いていてマリア・ガーランドは目眩めまい覚えた。












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