レーダー照射のとこだけ
レーダー照射のとこだけ
Q:中国のレーダー照射をどう見ます?
A:まぁ、A2/AD戦略の一環だな。
A2/ADはウクライナ関連でも何度かやってるけど軽くお浚いしておこう。A2、即ちアンチアクセス・接近阻止とAD、即ちエリアディナイアル・領域拒否の二段構えで、制空や制海に関する文脈で使われることが多い。AA/AD、アンチエリア/エリアディナイアルと称される場合もあるが、まぁ、厳密に言うと異なる概念だけど似たようなもんだ。
A2/ADは冷戦時に研究が進んだ戦略で、核による相互確証破壊を避けながら軍事的マージン、即ち戦術的・戦略的緩衝地帯の確保を狙うものと言える。
まぁ、要するに直接交戦する事なく軍事的縄張り争いで勝つことを目標としている。尤も、今まさにウクライナではA2/AD戦術・戦略に基づきミサイルや戦闘機が飛び交い実際の被害が拡大している訳だがな。
中国では、このA2/ADを戦略的に超限戦の手段として組み込んでいる。
超限戦が提唱された1990年代末、既に中国の敵は台湾そのものでなくアメリカとなっていた。1995年に発生した台湾海峡ミサイル危機、当時の中国とアメリカは通常戦力において比較にならない戦力差があり、超限戦はミサイル危機を機にアメリカとの対峙を念頭に非対称戦の解法として取り入れられたと言うべきだろう。
2000年代に入ると中国は航空機等の異常接近を繰り返すようになった。もろA2/AD戦略に基づく嫌がらせだな。偵察機や哨戒機などに戦闘機が数メートル単位まで接近するんだ。
勿論、国際法上認められる行為じゃないが、中国は主権の範囲と嘯き続けた。当然、そんな危険行為をしていたら事故も起きる。2000年代初めには海南島でアメリカの電子偵察機と中国の戦闘機が接触し電子偵察機は大破不時着、戦闘機は墜落し行方不明となった。電子偵察機に搭乗していた二十数名は無事だったが中国側に拘束され、戦闘機のパイロットは死亡扱いとなっている。
常識的には異常接近した中国側に非があるのは議論の余地も無いが、中国側は一切非を認めず賠償にも応じなかった。結局この事件の責任は棚上げとなっていたハズだ。
そんな事件の後でも中国はA2/AD戦略を変えたりはしなかった。というかむしろ事件を奇貨として「中国は引かないし何をするか分からない」という印象付けに利用している節がある。
しかしね、アメリカ側も引くことは出来ない。当然だな、中国のA2/AD戦略は本来飛行・航行の自由が認められている領域から軍事的脅迫で以て中国の意に添わぬ者を排除しようとしている。単にアメリカを台湾海峡に寄せ付けないってレベルではなく、沖縄を含む第一列島線、更にはグアム・サイパンなどを含む第二列島線に至るまで「防衛バブル」とも呼ばれる領域をADの範囲として軍事的実効支配しようとするものだからだ。
アメリカは、この中国による二段階の泡状の「防衛バブル」に対抗するため2010年代からASB、即ちエアシーバトル構想、これは後に超限戦全体への対抗軸となるMDO、即ち多領域作戦へと発展する。を立ち上げた。ASBは台湾有事などにおいて非交戦形態のA2/AD戦略が交戦形態のA2/AD戦略に切り替わった際、防衛バブルを打破し、A2/ADの中核を成す戦略目標を無力化するパッケージとして運用される。
まぁ、これも当然ながら中国は猛反発するけど、アメリカと交戦する力が無い事は中国も理解している。2012年に中国のトップに上り詰めたきんぺーさんは「太平洋をアメリカと中国で分け合おう」と驚愕の申し入れをしているが、俺様キングを含め「今んとこ」アメリカは断固拒否を貫いている。
レーダー照射は、この2000年代初頭から続く中国との緊張における一局面に過ぎない。
非交戦形態ではあるが、中国の台湾侵攻は2000年から超限戦の形で始まっている。
考え違いするなよ?これは台湾の問題ではない。第二列島線まで包含した防衛バブルに日本は最初から巻き込まれているんだ。
レーダー照射もこれが初めてのことじゃない。2007年、2013年には護衛艦にレーダー照射されている。これ、日本のマスコミとか憶えてないのか?高市総理の発言がトリガーとなったことは事実だが、半ば常態化している事態なんだ。もっと言えば日本の漁船が中国海警に追い回されたり拘束されたりもA2/AD戦略の一環だし、中国の海上民兵らしき漁船が日本の海保巡視船に体当たりとかも同様。当然、日米だけじゃなくフィリピンなんかも漁船が狙われ、漁業が成り立たなくなってる。
中国による軍事的実効支配の既成事実化には日本だけでは抗しきれない。アメリカはFONOPs、即ち航行の自由作戦で防衛バブル内を公海と扱う事を明示していたのだが、、、これも、大多数の日本人が思っているより俺様キング再選は地域を不安定化させるとする理由の一つ。第二次俺キン政権発足後、FONOPsはほぼ実施されていない。
まぁ、予想の範囲内と言えるが何の慰めともならんな。
中国に「日本にはこのくらいまではやっても大丈夫」などとは絶対に思わせてはならない。存立危機事態どころじゃない。国防のど真ん中のど真ん中だと認識すべきだ。
中国が本件に関し欠片も非を認めることはあり得ないが、日本は毅然とした態度で反論し「日本は腰砕けにならない」と内外に示さなければならない。
一度言ってしまった以上、存立危機事態発言を撤回など間違ってもあってはならない。撤回しろとか言う連中は中国の回し者か阿呆だから無視しとけ。
繰り返し繰り返し言う事になるが、中国の「防衛バブル」には日本の一部が完全に含まれている。これを認めてはならない。




