第54話『進化した相棒です』
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シルナの工房に着いたが、表の看板に開店表示がされていなかった。
「あら? 休みじゃないはずなのだけれど・・・・・・」
工房内からは、『カーン! カーン!』と、作業している音が聞こえている事から、どうやら店を開けるのを忘れているとみた。
前回、カノンと訪れた時に出入りに使った裏口へ回る。
ノックをしても、全く反応がなく、そのまま金属を叩く音が鳴り響いていた。
「もう。 勝手に入っちゃいましょ」
「お、おい!?」
コイツは、泥棒という罪を何度繰り返したら気が済むんだ。
普通に不法侵入だからな。
「エルミアちゃんは、こんなふうになっちゃダメだからな」
鍵のかかっていない扉を開け、強引に中に入るカノンの背を見て、
「・・・・・・他はともかく、ここまで私も図太くないです」
「エルミアぁ~、聞こえたからね?」
「にゃっ!?」
にんまりとしたその笑みに、エルミアちゃんはガクガクと震えるのだった。
「わ、わわ私、ライゼスさんみたいに、されちゃうのでしょうか!?」
それは、どういう意味だろう。
すでに、この子の中での俺は、カノンにどうかされているように写っているのかな。
――――
「シルナぁ。 アンタ、店開けないで何してんのよ」
ずけずけ工房内を進んで行くカノンを、後を追うように遠慮がちに「「おじゃましま~す」」と告げて入る俺達。
「わひゃっ!? び、びっくりしたぁ。 あぁ、カノンさんおかえりでしたか」
背後から大きな声で呼びかけられて、ようやく来客に気付くシルナ。
仕事に一生懸命なのは、とても素晴らしいが、ちょいと不用心だぜ?
君も、ここにいる2人に負けず劣らずのべっぴんさんなんだから。
「おかえりでしたかじゃないわよ。 店も開けずに・・・・・・」
「あちゃ~。 また作業に熱中しちゃって忘れてたぁ」
その目の下には、黒いくっきりとしたクマが浮き上がっていた。
「呆れたわ。 いつもそんなんじゃないでしょうね」
カノンが、頭を大きく振りながら、ため息をつく。
「ひどいなぁ。 カノンさんからの仕事を優先してやってたから、こんなになったのにー」
そう言って、シルナが立ち上がって、工房内にある剣立てから、俺のバスターソードを持ってくる。
「うおー! 俺の相棒ぉぉ」
「ライゼスさん、バッチリですよ! 切れ味はもちろん、追加にいろいろ内蔵しちゃってる無敵の剣ですよ~。 って、わあ! 知らない人もいた!?」
俺とカノンを交互に見た後に、後ろにいたエルミアちゃんをみて驚く。
「これはこれは、はしたないところを・・・・・・」
「とりあえず、顔でも洗ってきなさいな。 あと、ありがとね、頑張ってくれたみたいで」
「えへ~。 では! お言葉に甘えて、さくっと顔とか洗ってきます。 その辺に腰掛けててください」
そう言い残して、2階にある自宅へバタバタと、慌ただしく消えていった。
割り込みで、俺の剣を優先してくれたみたいだ。
そのせいで他の仕事に、遅れを出してしまったのかも知れない。
申し訳ないなと思いつつも、ピッカピカのシャキンシャキンに逞しく輝く、我がバスターソードに心躍る。
「これは、かなり手を込んで仕上げてくれたみたいね」
「めっちゃくちゃ強そうですね、ライゼスさん! ゴツさの中にも、スマートさを感じます」
「おっ。 エルミアちゃん。 良いこと言うね。 いやぁ~、こりゃ仕事もはかどりそうだ」
次の依頼は、適当に近所の雑魚モンスターで、試し斬りだな。
今からワクワクするぞ。
「これは、高いわよ~ライゼス~」
「え? カノンが払ってくれる約束だろ? なに言ってんだよ、笑えねー事言うなよ。 あはは」
俺が、こんな一級品に進化した代金を支払えるわけないだろ。
「え~、だって、遺跡で、『お前の貸しだってチャラにできる~』って言ってたじゃない」
精霊玉を発見した時に、確かにそんな事を口走っていたかもしれない。
「いや、でも、あれはさ。 そのノリじゃんか。 な?」
そもそも俺と一体化しちゃったんだから、もうノーカウントだろ。
「うそよ、うそ。 まぁ、私の我儘に付き合ってくれて、ありがと。 ちゃんと払っておくから、そのままウキウキしてなさい」
「カノォォォン! ぶへっ!?」
柄にもなく、素直にお礼を言うもんだから、思わず抱きつこうとして、殴られる。
ビンタも、蹴りも入れられる。
そこまで嫌だった? ちょっとショックだよ俺。




