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お姉さん先生は男子高生に餌づけしたい。  作者: とーわ/朱月十話
第二話 女神先生は勧誘したい
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第二話・7

「いいのよ、先生がしてあげたいんだから。海原くんは何もしなくていいの、ぜーんぶ先生が食べさせてあげる」


 俺を部活に入れたいと言っている先生だから、少しくらい計算もあるのかもしれない。なんて考えを持っていた俺は、汚れていたと思い知る。


「次は何が食べたい? ……卵焼き? ちょっと甘いかもしれないけど、大丈夫かしら……はい、あーん」


 卵焼きは、岸川先生も弁当に入れていると言っていた。少しだけ胸が痛む――彼女の卵焼きを差し置いて別の卵焼きを食べるのは、ある意味浮気じゃないのか。


「……どうしたの? 玉子焼きは苦手?」

「っ……い、いえ……かなり好きというか……」

「ふふっ……じゃあ、遠慮なくどうぞ。はい、あーん……」


 卵焼きを差し出すときに、杜山先生の胸元が開く――こんなにスキだらけで、大学を出るまで危ないことは無かったのだろうか。俺はとても心配だ。


「んっ……んむっ……」

「……海原くん、可愛い。よく噛んで……はい、飲み込んで」


 言われるままにすると、童心に返りすぎてしまう。あまりに美味しいので次も食べさせてもらいたくなる――口の中に、ふんわりとしたダシの香りと甘みが広がる。焦げ一つなく均一に焼き上がった卵焼きは、焼き立てということもあって舌触りがとろけるようだった。


 岸川先生と料理の腕に関しては遜色ない、品目によっては二人の先生のどちらかが上ということもあるだろう。


「柔らかいものばかりだといけないから、次はお浸しも食べてくれると嬉しいな」

「……はい……お願いします……」


 先生がすぐそばにいてくれて、俺が食べたいものを食べさせてくれる。そして、優しい味付けが味覚までも甘やかして、思考がどこまでも溶けていく。


 温かいお湯に浸かっているような安心感。味噌汁は自分で食べたが、合わせ味噌の塩気は強すぎず、ダシがしっかりと効いている。岸川先生の料理を食べたときもそうだが、ジャンクフードに慣らされた味覚が、自然な状態に戻っていく感覚さえある。


 気がつくと、目の前の器はほとんど空になっていた。すでに十分満たされているのだが、純粋に先生の料理が美味しくて、もっと食べたいと思ってしまう。


「海原くんは育ちざかりだから、おかわりもあるわよ」

「で、でも、先生の分が……」

「先生は、海原くんが美味しそうに食べてくれるだけでお腹いっぱいだから……っていうのも本当なんだけど、少し少なめにしようと思って」


 ダイエットでもしているのだろうかと思ったが、先生はキッチンに行くと、少し恥ずかしそうにしながら、徳利とっくりとお猪口ちょこを持って戻ってきた。


「ときどきなんだけど、お酒が飲みたくなることがあって……海原くん、ちょっとだけ飲んでもいい? 大丈夫、海原くんに勧めたりしないから」

「は、はい。俺に遠慮しないで飲んでください」

「本当? 良かった……海原くんが来てくれてるのにお酒なんて、先生はだめな大人ですねって言われちゃうかと思った」


 俺が飲むのは勿論ダメだが、大人が夕食の時に晩酌をするのは別に問題ないとは思う。確かに家で俺の父親と母親が飲んでいるところに同席しているのと、先生が飲むところに一緒にいるのはまた違うが――と、それこそ考えすぎても先生が遠慮してしまう。


「そうだ、先生。できればお酌をさせてください」

「だ、だめよ、そんな……先生が、生徒にお酌をしてもらうなんて……」


 先生は遠慮するが、俺も先生に何かを返したいと思わずにいられないくらいには、彼女のしてくれたことに感謝していた。


 遠慮がちながら、自分から先生がお猪口を持ってくれる。俺は徳利からお酒を注ぐ――先生は俺の隣でかしこまって座り、お猪口に口をつけてくいっと飲んだ。


「……ふぅ……美味しい。海原くん、ありがとう」

「これも社会に出たときの、予行演習的なものだと思うことにします」

「ふふっ……海原くんが大人になったら、一緒に飲むのもいいかも……なんて、そのときは海原くんも、色々な人とお酒を飲むようになってるかしら……」


 すぐに酔ったりすることはないと思うが、先生はもう気分が良くなっているみたいだ。


 俺だけが先生に色々としてもらって、それだけで終わりというのは申し訳ない。幸い、先生のマンションの近くにはバスが通っているので、先生にお酌をしたら帰りはバスで帰ることにしよう。


 ◆◇◆


 そんなことを考えていたのだが、夕食の時間が終わっても、俺は居間で待機している。してしまっている、と言うべきか。


 先生はどうやらお酒を飲むと寂しくなるとか、そういうタイプだったようだ。


 いつもより飲みすぎてしまったのか、食事の前に一杯飲んだのが良くなかったのか。杜山先生はお酒が回ってしまい、顔がほんのり赤くなってくると、汗をかいたのでお風呂に入りたいと言い出した。


 それなら俺はそろそろ帰ります、と言おうとしたのだが――先生が物凄く寂しそうにする上に、お酒を飲んだ人がお風呂に入って大丈夫なのかという心配もあったので、とりあえず風呂上がりまでは待っていることにした。



※お読みいただきありがとうございます!

 ブックマーク、評価、ご感想などありがとうございます、大変励みになっております。

 本日はあと一度更新する予定です。

(※申しわけありません、一度内容を修正しております!)

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[一言] そもそも飲酒運転ダメだろ?
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