73話 NANDE?
「ねえ? 何でお姉ちゃんの召喚魔になったの?」
「な、なんとなく……かな?」
「何それ? 変なの♪」
本当の理由も変だから反論のしようもないな。
「何でそんなこと聞いたんだ?」
「だって、クロムって凄いんでしょ? お父さんの借金も、魔物をたくさん倒して返したみたいだし……」
「そうだな」
凄いかどうかはともかく、魔物を倒して借金を返済したのは事実だ。
まあ、凄いのも事実だけどな。
「あんなお姉ちゃんなのに、何でクロムみたいに凄いのと契約出来たのかなぁ、なんて思っちゃって」
何でって、“あんな”だから契約したんだが……
「ねえ、クロム♪」
突然アウロラが顔を近づけてきた。
俺の目の前には美少女のアウロラの顔が……
近すぎだってば。
「アウロラも、クロムみたいに凄い召喚魔と契約できるかな?」
これだけの美少女なら、充分出来るだろうな。
少なくとも俺なら契約する。
ルーナとはぜんぜん違う理由だが……
「何だ? アウロラも冒険者にでもないたいのか?」
「うーんとね……冒険者より魔道士になりたいんだ♪」
魔道士ね……
魔道士なら約一名凄いのを知ってるぞ。
超絶残念美人だがな。
同時刻、大鍋亭。
「へーっくしょん!!」
「何だよヴィオ、汚ぇな……風邪か?」
「うるせーよ、ザンバ! 魔道士が風邪なんか引くか!!」
答:× 魔道士も風邪は引きます。
「誰かが噂してるんじゃないんですか?」
「それだ、グラシア! きっとクロムの奴だな」
答:○ クロムです。
「クロムか…… ルーナは戻って 来るかな?」
ドーリの言葉に、皆は一瞬静まり返った。
「冒険者、辞めるかもしれないですからね」
「続ける理由もないしな……」
グラシアとドーリは寂しそうにそう言って、麦酒を口に運ぶ。
「戻って来るさ、きっと! なあ、ヴィオ」
ザンバもそう言うと、麦酒を煽った。
この間までクロムとルーナはいなかったはずだ。
なのにの何故か皆、二人がいないだけで寂しそうだ。
「ルーナは続けるさ……冒険者を」
黒炎酒を運んできたレネットが、ヴィオの代わりに答えた。
「なあ、ヴィオ。そうだろ?」
「ああ、そうだな。続けるさ、必ず……」
レネットから黒炎酒を受け取り、ヴィオはそう言って窓の外を眺めた。
窓の外は日が落ち始め、夕焼けが辺りを赤く染めていた。
「ふう……お腹いっぱいなのです!」
さすがのルーナも牛一頭は無理なようだな。
「二人で何を話してたのです?」
ルーナの顔が赤いのは、夕焼けのせいでではないようだ。
酒も飲んだようだな。
「お姉ちゃん、お酒飲んだの?」
「わたしは15歳なのです。大人なのです! アウロラはまだ14歳だから子供なのです」
俺から見れば、ルーナの方が子供に見えるぞ。
「別に駄目何て言ってないよ!」
「むうぅ……それより何を話してたのか言うのです!」
どっちが姉だか分かったもんじゃないが、とにかく姉妹喧嘩は止めてくれ。
「クロムは強いし、可愛いし、なんでお姉ちゃんなんかの召喚魔になったんだろう、って話してたの!
「なんかとは何なのですっ! なんかとは!」
俺が強くて、可愛いのは否定しないぞ。
本当だからな!
ルーナが“なんか”なのも否定しないが……
「まあまあ、子供のいう事だし――」
「クロムは黙るのです!」「子供じゃないもん!」
……
…………
夫婦喧嘩は犬も食わないと言うが、姉妹喧嘩は猫も食わないが正解のようだ。
「だいたいお姉ちゃんが、冒険者とか間違ってる!」
「間違ってるとは何なのですか!!」
「そもそもクロムがお姉ちゃんと契約するのが不思議なのっ!」
「そんなのクロムの勝手なのです!」
なにか俺にお鉢が回ってきそうだな。
逃げるべきか?
「「ちょっと、クロム!!」」
「あれ?」「……いないのです」
三十六計逃げるに如かずってね。
喧嘩するほど仲がいいとも言うからな。
放っておくのが一番だな。
広場の真ん中では、丸焼きに多くの村人集まっている。
肉はまだまだ無くならないようだ。
「あっ! ルーナの召喚魔だ」
「お前、強いんだって?」
「黒毛野牛もお前が狩ったんだってな!」
「本当に子猫の大きさなんだな」
「話せるらしいが本当かい?」
村人たちは俺を見ると声を掛けてくる。
そんな中、一人の女の子が話しかけてきた。
「ねえ……抱っこしてもいい?」
「ん? ああ、いいぞ」
「あっ! いいなぁ、私も♪」
「私も! いいよね?」
構わんが、女子限定だぞ。
モフモフ、モフモフ――
モフモフ、モフモフ――
モフモフ、モフモフ――
黒毛野牛の丸焼きは、まだまだ続いている。
ルーナとアウロラの姉妹喧嘩も続いている。
そしてモフモフも……
村の宴はまだ終わりそうもない。
タイトルは、MINMI&RUDEBWOY FACE「NANDE」より拝借




