納豆
「麦茶って何だ?この苦いヤツか?」
全くこのウサ耳男、麦茶を知らないっておかしい。
科学者の卵のわたしが、わたしが百歩譲って 月の住人と認めよう…あくまでも百歩譲って…
「あんたを信じて 地球人じゃ無いとしよう。今、話してるその言葉はどうやって覚えたの?」
「これで、覚えた。」と指を指したのはテレビ。
なるほど、っと何故か納得がいった。
テレビは、画像と言葉がまとめて情報として入る。
月から来たとして今日の日の入りは 18時頃。
3時間!さ、3時間もテレビを見ていたの。よく飽きないで見ていたんだ。参ったなぁ…電気代が上がる。
毛づくろいするウサ耳男に名前を聞いてみる事にした。
「ウサ耳男!あんた名前は?」
「RyX710-A」
「くそ面倒くさい名前。710、710…納豆って(笑)納豆って呼ぶわけには行かないから 今日からあんたは、トーマね」
「トーマ。トーマか!」
嬉しそうに自分の名前を連呼した。
動物を飼った事が無いだけに、名前を付けるってこういう気分になるんだなぁって思った。
「トーマ、ごはんは?」
「ごはんって何だ?この口に入れてるヤツか?」
TVでは、グルメ番組がやっている。
「それそれ。うまいとか美味しいって言ってるでしょ?」
「それなら これの事を言うんだね」
机の上には、無造作に置かれた錠剤があった。
「これが食事?」
「これを1個食べるだけで、3日は何も要らない」
トーマは、嬉しそうにTVをじっと見続けている。
月のが化学が進んでる!?
小説や漫画では、月のが何十年何百年も化学が進んでるって言ってるけど こう目の前にすると信じてしまうものね。
「もらってもいいかな?」
口に一粒入れた。