麦茶
「返してプリン!あんた誰よ!勝手に入ってきて、不法侵入だからね!警察に今すぐ電話かけるわ!」
ウサ耳男は、頭をかしげ不思議そうな顔をした。
「不法侵入って何?警察って何?電話って何?」
「は?何バカな事言ってんのよ!ハァハァ」
息を切らしながら捲したてるように私は言葉を発した。
「ホントに知らないんだって!」
耳の毛を毛づくろいしながら私に男は答えた。
「それにね、ハロウィンでも無いのにウサ耳って何よ!自分可愛いとでも思ってんの!」
「ちょっとそのカチューシャ外しなさいよ!」
私は、ウサ耳男の耳を力一杯引っ張った。
ぬいぐるみの様なフカフカした耳を引っ張っても、一向にカチューシャは外れない。
「ちょっとホントに外しなさいって!」
何度引っ張っても外れない。
ウサ耳男は、私の腕を掴み払った。
「止めて!これは、僕の耳なんだ。外れない!」
私が掴んだ耳は、少し腫れていた。
「ごめん…私、やりすぎた。」
私は、深呼吸をし
「ウサ耳男さん、君はどっから来たの?」
改めて聞いてみることにした。
ウサ耳男は、満月の空を指差して
「あの月から来たんだ」
冗談を言われ 腹立たしくなった私は、
「冗談も休み休み言いなさいよ!」
「月にウサギが住んで無いくらい、小学生でも知ってるわよ!」
男から奪い返したプリンを冷蔵庫にしまい直し、落ち着く為に麦茶を出した。
戸棚から出したマグカップに麦茶を注ぎながら
「あんたも麦茶飲む?」と声をかけながら
一気にそれを飲み干した。
「麦茶って何?」
いちいち聞いてくる男に、私はまたイライラした。
新しいマグカップに注いだ麦茶を男の前に ドンと音を立てて置いた。
「不味…」麦茶を口に付けると男は、吹いた。
「あんた、麦茶も飲んだ事無いの?」
このウサ耳男、怪しくてしょうがない。




