↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
WORLD BREAKER  作者: 香月 悠生
1
8/31

賑やかな晩餐

ジリリリリリリリリリリリリ!!


けたたましい音がが鳴り響く。

何事かと飛び起きると、耳元でここ最近最も聞き慣れた声が囁かれる。


「おはようマスター。気分はいかがかしら?」


最高ですナツさん。

俺は一瞥のかわりに眉間にシワをよせると、まぁまぁだね、とだけ答えた。


「そういえば、マスターの大好きなエリスから、そろそろ晩御飯の準備が出来るから、もし目が覚めたら1階に降りてくるようにと、伝言を頼まれているわ」


「ありがとう。でも俺の大好きなは余計じゃないのか?」


「あらそう?鼻の下伸ばしてるマスターのでれでれ顔はなかなか見物だったわよ」


「な!でれでれなんかしてねぇ!」


「ふ〜ん……じゃぁそういうことにしといてあげる。あ、それと大事なこと言い忘れてたわ。マスターが倒したサーベルタイガー3匹の経験値で、レベルが上がってるわ。おめでとう♪」


ん?今さらっと俺が倒したって言わなかったか?


「倒したのは俺じゃないよ。情けないけど、誰かが助けに来てくれたんだ。俺はその横でなんにも出来ずに泡吹いてぶっ倒れてただけだし……」


「いいえ、確かにあのモンスターを倒したのはマスターと表記されてるわ」


「単独で?」


「ええ、私も戦った様子を記録出来ればよかったんだけど、なぜか通信がさっきまで遮断されていたの」


これだけ実感のない初勝利も珍しい。喜んでいいのかも分からない複雑な気持ちだ。


「マスター、それじゃお待ちかねのPP振り分けでもしましょうか?」


おお!一気にテンションが上がる!

なぜか新規プレイヤー作成が自動で済まされていた俺にとって、初めての振り分けだ!

下で待っているエリスには申し訳ないが、その魅力には抗えそうもない。


「ああ、頼む!」


「了解マスター」


眼前にモニターが現われる。

しかしそこに映し出されたのは、鼻の下を伸ばし過ぎたこれ以上ないほどでれでれ顏の俺だった。



「やめぇぇぇぇぇい!!!!!」


「あら間違えた。ごめんねマスター」


すると、タイミング良く(?)ドアからエリスが顔を覗かせる。


「あの、夕飯の準備が出来たのですが……召し上がられますか?」


「も、も、も、もちろん!今行きます!」


「ではお待ちしてますね」


天使のような微笑みを残して、エリスは階段を降りていった。


「ちゃんと直前で消しておいたから問題ないわマスター。振り分けはそれなりに時間を使うでしょうから、先に夕飯を食べない?」


HSOの他プレイヤーの皆さん、うちのナビはやたら自我が強い気がするのですが、皆さんのナビもこんな感じなのでしょうか?



1階に降りる途中の階段から、美味しそうな匂いが鼻腔をくすぐる。

テーブルには、ところせましと料理が並べられていて、豪華とまでは言い難いが、贅をつくしてくれたのがよく分かる。なにより今朝からなにも食べていないせいか、料理一品一品がレアアイテムよりも価値があるように思えた。


「おう、起きたか!洞窟で見かけた時は死んでるかと思ったぜ!」


「ちょっとお父さん!」


エリスが父親を睨みつける。


「がははは、すまんすまん!たいしたもんは用意出来なかったが、たらふく食ってくれ!」


「ありがとうございます。自分、トータっていいます。助けて頂いて本当にありがとうございました。」


「がはは、気にすんな!俺はブロンコってんだ!見ての通りエリスの父親だ!」


筋骨隆々というのがこんなに似合う人を初めて見た。背はそこまで高くないが、それを補って余りあるパワーを持っていることが容易に想像出来る。

そこらへんのモンスターが束になっても敵わないだろう。


「まぁ細けぇ話は飯食いながらでもしようや!せっかくの料理が冷めちまうからよ!」


温かいシチューや、チーズを乗せて焼いたパン、それに分厚くカットされたローストビーフ、現実では見たことのないフルーツが入ったサラダなど、そのどれもが本当に美味しくて、積もる話は尽きることがなかった。


このHSOの世界では、NPC、要はプレイヤー以外のキャラクターも人工知能を搭載していて、現実の人間と同じように生活を営んでいる。

WHE社も、「人間よりも人間らしく」をテーマに、かなり力を注ぎ込んだと聞いたことがある。

だからこそ、会話が一方通行にならないし、まるで本当の人間と話しているかのような感覚がある。

俺自身、こんなにも会話したのは久しぶりだったかもしれない。


ブロンコさんが酔い潰れて寝てしまい、エリスと夕飯の後片付けをしている最中だった。


「あの、トータさん……おりいってご相談があります」


エリスが初めて見せた真剣な表情だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。