隔世の刻
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いまだに現実を受け止められないでいた。あまりにもその直前までの気分の落とされ方がエグかったので、どう喜んでいいのかも分からない。
ただ自分のことのようにキャーキャー言っているナツさんの様子を伺う限り、とりあえず裸一貫であの糞ステで始めるという最悪な事態は避けられたようだった。
この「隔世」というスキルはどういう効果が得られるんだろう。
攻撃系なのか、生産系なのかも見当がつかない。「覚醒」なら、ある程度予想はつくし、なによりカッコいいのに。
まぁ考えていても仕方がないし、ナツさんに聞いてみることにした。
「ナツさん、この隔世ってスキルはどんな効果があるの?」
「私も黒スキルを見たのは初めてだから分からないの。役に立てなくてごめんなさい。ただスキルの詳細を見れば何か分かるかもしれないわ」
「じゃぁスキルの詳細を見せてもらえるかな?」
「了解。マスター」
隔世
効果:隔世する
アホかぁぁぁ!!!!!
んなもん分かっとるわ!!!!!
なんか本当にこのスキルが最上位の黒スキルなのか不安になってきた。
もしこれが初回全員サービス的なノリで皆が所持しているスキルだったら赤っ恥だ。
「ナツさん、ちなみに黒スキルってどれくらい珍しいの?」
「さっき私も見たのが初めてって言ったでしょ?私はマスターのナビだけど、他のプレイヤーのナビともデータリンクして情報をある程度共有しているから、私が見たことないってことは、他のナビも見たことないってことね。」
「それってつまり……」
「そう、マスターは世界で唯一のスキルを所持しているってこと♪」
世界で唯一。その響きがあれば何処へだっていけそうな気がする。
それくらい魅惑的な言葉だった。
しばらくこの気分に浸っていたかったけど、突然の来訪者によってそうもいかなくなった。
「マスター、あそこにモンスターが」
見ると、先ほど俺が無惨にもやられたモンスターが涎を垂らしながらこちらに近づいてくる。
しかも今回は3匹だった。
油断していた、気付かないうちに仲間を呼ばれていたのかもしれない。
サーベルタイガー
Lv3 属性 無
スキル:噛み付き、ウォークライ
眼前ににモンスターの簡易情報が表示される。
Lv3ということは今の自分よりも格上なんだろう。
しかし、今の俺はさっきの自信など微塵も無かった俺とは違う!
どちらにせよ、隔世の効果を知るいい機会だ。盛大に葬ってやろうじゃないか!
「いくぞ!隔世!!」
ゥゥゥゥゥゥゥゥゥ
「隔世!!!」
ゥゥゥゥゥゥゥゥゥ
「か、隔世?」
ワォォォォォォォォォォン
スキル「ウォークライ」が発動されました。敵の攻撃力が30%上昇します。
発動しねぇぇぇぇぇぇぇ!!!
手元に武器になりそうなものはない。また逃げるしかないのか?
いや、もう逃げるのは嫌だ!
負けるとしても立ち向かって勇敢に散ってやる!
機を見計らっていた3匹が同時に襲いかかってくる!
くそ!またやられるだけなのか?
『待たせたな相棒』
頭に衝撃が奔る。意識が飛びそうになるのを辛うじて堪える。
徐々に薄れゆく視界に映ったのは、3匹のサーベルタイガーの亡骸だった。




